紹介
卒論以来、43年間にわたる叡尊教団研究の集大成!
本書は前著『中世叡尊教団の全国的展開』(2017年、法藏館)の続編で、奈良西大寺叡尊をいわば祖師とする叡尊教団を鎌倉新仏教教団のもう一つの典型と位置づけたうえで、その全国的な展開を明らかにすることを目指している。とりわけ、前著で扱えなかった中国・四国、畿内・北陸・関東地方への展開を明らかにしようとした(なお、第2部、第3部に関しては、第2部第7章、第3部第4章をのぞき全て新稿である)。
【本書の構成】
第1部では、鎌倉新仏教教団として叡尊教団を位置づける。
第1章では、袈裟の色の思想史の観点から、「鎌倉新仏教とは何か」に迫った。
第2章では、顕密体制論継承者の第一人者である平雅行氏との論争を通じて、私見と顕密体制論との相違を明確にしようとした。
第3章では、関東祈祷所とも表記される鎌倉将軍家祈?所を分析し、律寺の関東祈?所化を明らかにした。
第4章は、叡尊教団関係者の物故者名簿といえる「光明真言過去帳」の紹介と分析、および翻刻である。
第2部、第3部では、叡尊教団の各地域における展開を明らかにするとともに、叡尊教団の全国的ネットワークの存在、律寺化を支えた地方有力商人や武士、諸国国分寺復興の担い手としての律僧、鎌倉極楽寺流の展開などについて論じる。
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私は叡尊教団の研究を卒論研究以来行ってきたが、今年で43年目となった。43年も研究していると、私家版の叡尊教団データベースもどきも整ってきて、かつては分からなかったことが分かることも多い。本書は、そうした研究の成果の一つである。(「あとがき」より)
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目次
凡例
はじめに
第一部 鎌倉新仏教教団としての叡尊教団
第一章 黒衣と白衣――袈裟の色の思想史
はじめに
第一節 黒衣と白衣
第二節 戒律と救済活動のはざまで
おわりに
第二章 鎌倉新仏教論と律僧――平雅行氏による批判に応える
はじめに
第一節 鎌倉新仏教論への批判に対する反論
第二節 得度・授戒制に関する批判への反論
おわりに代えて
第三章 関東祈?所再考――禅・律寺に注目して
はじめに
第一節 確立期の状況(1)――忍性による申請
第二節 確立期の状況(2)――心慧による申請
おわりに
第四章 西大寺光明真言過去帳の紹介と分析
はじめに
第一節 「西大寺光明真言過去帳」とは何か
第二節 西大寺光明真言過去帳の翻刻
おわりに
第二部 叡尊教団の畿内・北陸・関東地方への展開
第一章 摂津国における展開
はじめに
第一節 天王寺薬師院と多田院
第二節 慈光寺・東光寺ほか
おわりに
第二章 和泉国における展開
はじめに
第一節 禅寂寺に注目して
第二節 長承寺・来迎寺・浄弘寺
おわりに
第三章 近江国における展開
はじめに
第一節 宝蓮院・慈恩寺
第二節 石津寺・福泉寺・長安寺
第三節 阿弥陀寺
おわりに
第四章 丹後国における展開
はじめに
第一節 国分寺
第二節 金剛心寺・泉源寺・成願寺ほか
おわりに
第五章 越前・越後・加賀国における展開
はじめに
第一節 越前三箇律寺
第二節 越後国における展開
第三節 加賀国における展開
おわりに
第六章 常陸・下総・信濃国における展開
はじめに
第一節 常陸平服寺
第二節 下総雲富山大慈恩寺
第三節 信濃国における展開
おわりに
第七章 鎌倉極楽寺流の成立と展開――初代から九代までの極楽寺歴代住持に注目して
はじめに
第一節 第三代長老善願房順忍
第二節 第四代長老本正房俊海以後の長老達
おわりに
第三部 叡尊教団の中国・四国地方への展開
第一章 播磨国における展開
はじめに
第一節 文観ゆかりの寺院常楽寺
第二節 成福寺ほかの直末寺
おわりに
第二章 備後・備中両国における展開
はじめに
第一節 備後国における展開
第二節 備中国における展開
おわりに
第三章 周防・長門両国における展開
はじめに
第一節 周防国
第二節 長門国
おわりに
第四章 伯耆・因幡・出雲・岩見四国における展開
はじめに
第一節 伯耆国における展開――国分寺に注目して
第二節 因幡国における展開――国分寺に注目して
第三節 出雲国における展開
第四節 石見国における展開
おわりに
第五章 伊予・讃岐両国における展開
はじめに
第一節 伊予国における展開
第二節 讃岐国における展開
おわりに
おわりに
あとがき
索引