目次
まえがき
第1話 ペットボトル
1年間に100億本も生産しているけどリサイクルが追いつかない現実……。
第2話 携帯電話
1年間に4000万〜5000万台も販売されるケータイの運命は……。
第3話 発泡スチロール製食品トレー
全国で年間175億枚消費されているトレーの行き先は……。
第4話 電池
家庭で使う電池の数は約100個。その行く末は……。
第5話 衣料
日本の繊維リサイクルが危ない!
第6話 生ごみ
バイオマスや堆肥などのリサイクルはされているけど……。
第7話 家の資材
一般的家屋でも40トンのごみの山。建設資材のリサイクルは、解体工法に左右される。
第8話 冷蔵庫
冷蔵庫の買い替え寿命は平均11年。年間421万台も廃棄されている。
第9話 びん
繰り返し使える環境優等生のビールびん、一升びんが消えていく。
第10話 廃食油
使用済みてんぷら油で車が走る。捨てちゃうなんてもったいない。
第11話 水
1人が1日に使う水の量は世界第2位。いったいどうやって処理されているのだろう。
第12話 布団
布団は打ち直しすれば一生使えるリサイクルの優等生です。
第13話 放置自転車
駅周辺から撤去されたたくさんの放置自転車。その行方は……?
第14話 パソコン
壊れていなくても、パソコンは平均して5年で捨てられている。
第15話 割り箸
日本は97%輸入に頼る割り箸を、年間250膳も使っている。
第16話 雑紙
年間約1130万トンの紙がリサイクルされずに捨てられている。
おわりに 4年間、16点の「回収ルートを辿る旅」を終えて
前書きなど
まえがき
2001年夏号から、2005年春号まで、カタログハウスの雑誌『通販生活』で、「枝廣淳子の回収ルートを辿る旅」という連載を16回にわたって、書く機会を得ました。
3ヵ月に1本ずつテーマを決め、現状とこれまでの動向、課題、進行中の取り組みなどを調べ、「いまの状況」と「今後の見通し」、そして「未来への希望」がいちばん伝わるポイントを取材先に選び、現場の様子を見せていただくとともに、毎日毎日その現場で働いている方々から直接お話をうかがい、どうしたら最も伝えたいことが最も伝わるだろうかと試行錯誤しながら原稿を書く──とても貴重な経験であり、その後の自分にも大きな影響を与えた機会となりました。
連載後も、「回収ルートの記事をまとめて読みたい」「あの号の記事はどこにありますか?」という問い合わせや要望をいただいており、自分としても現場の方々に託された熱い思いとみんなが知るべき現状をより多くの人々にお伝えしたいと、書籍にまとめることにしました。
今回の出版のために、取り上げた16点について調べ直し、原稿を最新版にしました。統計などの数字はできるかぎり、最新のものに差し替えました。取材現場の原稿は、今回の出版にあたっての原稿確認時に修正いただいたものを除き、登場人物の肩書きや状況の説明など、当時のままとなっています。
調べ直す中で、大きく状況が変わっているものもあれば、取材時からまったく変わっていないものもあることがわかり、その変化そのものも、また大きな学びとなりました。
ひとつ明らかなのは、連載当時に比べ、わずか2〜3年しかたっていないのですが、日本の社会全体に、「このままではいけない」「循環型社会にしなくては」「現状は何かおかしい」「温暖化の進行を止めなくては」という機運が広がり、強まってきていることです。世界的にも同じ状況となってきていると言えましょう。
このような状況の中で、ささやかながらも熱い思いのこもった本書を世に送り出せることをとてもうれしく思います。本書は、状況の悪化を嘆き悲しむ悲観的な本でも、だれかが悪いと告発・非難する本でもありません。事実も思いも含めて、できるかぎり現場の様子を伝え、そこから日本や私たち、そして世界の抱えている本質的な問題をそれぞれが感じ、考えてもらえればと思って編纂した本です。
環境問題について「知る」時代は過ぎました。ほとんどの人が環境問題の存在とその原因や取るべき対策を漠然とながらも知っています。いま必要なのは、そのような問題に対して「行動する」ことです。その意味で、本書では、それぞれの章の最後に「アクションにつながる具体的なポイント」をまとめました。ご存じのこと、すでにおこなっていることがほとんどかもしれません。でもひとつでもふたつでも、参考になれば幸いです。
そして、本質的に時間との戦いである環境問題に関心を寄せている(からこそ本書を手にとってくださった)読者は、自分が「行動する」にとどまらず、「伝える」ことで、環境問題への取り組みや解決策を大きなうねりにしていく役割を担う人々だと思っています。時間が無限にあれば、少しずつ意識啓発をしたりしくみを変えていくことで、環境問題は解決できます。現在、私たち人類が直面しているのは、「時間切れになる前に、社会や経済のしくみ、人々の暮らし方やその根底にある価値観や意識・無意識の前提を大きく変えていく」という課題なのです。
本書が、それぞれが「伝えていく」ために少しでも役立てば、これほどうれしいことはありません。残り時間が少なくなりつつある現実を見据えながらも、「焦らず、あわてず、あきらめず」に、この環境問題が人類を次の進化のステージに引き上げてくれるチャンスだと、「こうなったらいいな」という遠い理想像に目をこらしつつ、目の前の1歩、2歩を進んでいきましょう!
2006年11月 枝廣淳子