紹介
世界中で広がる省エネルギー化の動きに後押しされて、機器の電力を制御するパワーデバイス(パワー半導体)の市場が着実に拡大しつつあり、その市場規模は2020年には3兆円を超えると見込まれています。それに合わせて、世界中のビジネスシーンで大規模なM&Aや新興企業の参入が相次いでいます。これまで日本企業や欧州企業が先行していたSiC/GaNなどの新デバイス分野でも、中国や米国の企業の積極的な参入が目立ち始めています。
パワーデバイスは産業機械やエネルギー変換装置、モーターを利用する家電製品など様々な用途に浸透しつつありますが、市場規模の大きさから見て、これからは自動車・電装市場に注目が集まっています。とくに電気自動車(EV)などの駆動用インバーターで採用が急増するとともに、EVやプラグインハイブリッド車(PHEV)用の急速充電スタンドや車載充電器などの需要も大きく伸びていくでしょう。
本書は、「日経エレクトロニクス」や「日経テクノロジーオンライン」、さらに自動車技術の専門誌「日経Automotive」が掲載したパワーデバイスに関する最新記事を多数収録。世界の企業の動きや製品開発動向、さらには自動車業界のロードマップなどを詳しく理解することができます。
目次
【第1章】世界競争時代のパワーデバイス
パワーデバイス、世界競争 第1部:動向
カスタム品から汎用品へ パワー半導体が安く身近に
パワーデバイス、世界競争 第2部:IGBT
ダイオード集積で低コスト化 モジュールは汎用性を競う
パワーデバイス、世界競争 第3部:SiC
閉塞感の打破に向けて車載目指し大口径化を推進
パワーデバイス、世界競争 第4部:GaN
最大手ファウンドリーが参戦 水平分業で低価格化が加速
【第2章】挑戦する企業と製品開発
パワー半導体の国際会議「ISPSD 2016」から
Si IGBTの性能はまだ伸びる 新構造で損失を3割低減
「PCIM Europe 2016」から
SiCは日本だけにあらず 欧米中メーカーが製品を続々
InfineonがWolfspeedを8.5億米ドルで買収
パワー半導体のガリバー誕生 欧州・米国のSiC大手が1つに
AIの技術者を2018年までに2~3倍へ
パナソニックがR&D戦略を転換 AI/ロボティクスとエネルギー注力
日本電産の車載部品事業
年産1000万個体制を構築 モジュール化で付加価値向上
日本電産のモーター研究所
50円スパコンでモーターを賢く AIやIoT、ロボットも研究
SiCは三社電機、GaNはInfineonと協力
パナがパワー半導体に本腰 SiCやGaNの後工程で協業
ロームがSiC MOSFETを応用、「CEATEC」で紹介
1.6kmの加速器を6mに 真空管をSiC代替で実現
定格時の電力変換効率は9%
三菱がフルSiCパワコンを発売へ 太陽電池の展示会で初披露
ハイブリッド車の燃費10%改善と低コスト化目指す
トヨタがSiC搭載に本気 専用ライン設置、実車で試験
デンソーの開発ロードマップ
電池パック、先進安全技術に力を注ぐ インバーターのSiC化にも期待
SiCにGaNを加え、産業機器から家電までカバー
InfineonがIRを買収 パワー半導体で独走へ
オムロンや安川電機、三菱電機がそれぞれ発表
パワコンや鉄道にSiC/GaN 2015年までに次々製品化
日立やInfineon、三菱などがしのぎを削る
IGBTモジュールに世代交代の波 高出力品では主導権争い
【第3章】 テクノロジーの進歩
論文:高品質のSiC結晶成長技術 Part1
RAF法で大口径ウエハーを製造
恩田 正一 デンソー 基礎研究所 機能材料研究部長
論文:高品質のSiC結晶成長技術 Part2
RAF法をガス結晶成長法で高速化 低価格なSiCウエハーの実現へ
恩田 正一 デンソー 基礎研究所 機能材料研究部長
論文:マトリクスコンバータの出力を正弦波に SiCで電力変換器の“究極”目指す
原 英則 安川電機 技術開発本部 開発研究所 パワーエレクトロニクス技術部 部長
パワーデバイスの高温対応事例
熱を制して車載を獲る 200℃対応が本格化
パワーデバイスの新実装技術
セラミックスでヒートシンク 第3の放熱手法を活用
西村 元延 西村陶業 開発部
貼り合わせで限界を超える 第1部:動向
しがらみを捨て適材適所 3次元実装の課題も解消
貼り合わせで限界を超える 第2部:開発技術
超高性能と低価格を両立 太陽電池やパワー系に勢い
材料メーカーのナプラが開発
SiCの潜在能力を引き出す Cuベースの高温接合材料
【第4章】自動車市場のロードマップ
気がつけば世界はEV
Apple EVだけじゃない 世界で激化する開発競争
2030年のクルマ徹底予測
電動化比率は25%に高まる
EVで広がる新市場
EVへの無線給電はもう現実 2018年の標準化で普及へ
SiCパワー半導体の特徴と利用
電力損失を減らして小型化 MOSFETの採用は車載充電器から
伊野 和英 ローム ディスクリート・モジュール生産本部 パワーデバイス製造部 部長
電動車両(xEV)用モーターの特徴と利用
インバーターとの一体型で小型化 冗長性を確保して信頼性を向上
Reiner John Infineon Technologies社 R&D Project Director
車載モーター用IPMの特徴と利用
金属基板を絶縁層で覆ったIPM モーター制御の小型軽量化を実現
永井 啓 オ ン・セミコンダクター システムソリューションズグループ グローバルマーケティング部
オートモーティブ・セグメントマーケティング・マネージャ
SiCの車載部品への応用
SiCやデジタル制御を採用 高効率・小型の車載充電器
幾島 好広 オ ムロンオートモーティブエレクトロニクス 開発統括室 電源システム開発部 部長
山上 正寛 同部 商品開発1課 主事
EVS 28レポート
2025年のEV 航続距離は500km
SiCデバイスの新用途
ワイヤレス駆動のインホイールモーター 配線なくし耐久性と信頼性向上
三菱電機の自動車向け新技術
SiCインバーター内蔵のEV向けモーター 運転者の次の操作を推定して表示
【付 録】青色LEDの夜明け―ノーベル賞への道
Interview
理論から実現を確信 失敗すら楽しかった
天野 浩 氏 名古屋大学大学院 工学研究科 電子情報システム専攻 教授
発光効率の向上やパワー素子応用などの研究が盛んに
青色LEDでノーベル賞 材料のGaNに熱視線
Interview
青色LEDは“ベンチャー”から生まれた
中村 修二 氏 米University of California Santa Barbara校(UCSB) 教授