目次
凡例
解説 イタリア・ルネサンス芸術論(池上俊一)
美学
1 ジョルダーノ・ブルーノ
紐帯一般について(抄)
模倣論
2 ジュリオ・カミッロ
模倣について
イデア論
3 フェデリコ・ズッカリ
画家・彫刻家・建築家のイデア(抄)
理想都市論
4 アントニオ・フィラレーテ
建築論(第二書)
建築論
5 セバスティアーノ・セルリオ
建築七書(第四書)(抄)
庭園論
6 アゴスティーノ・デル・リッチョ
王の庭について
色彩論
7 フルヴィオ・ペッレグリーノ・モラート
色彩の意味について
絵画論
8 レオン・バッティスタ・アルベルティ
絵画論
9 ジョヴァン・パオロ・ロマッツォ
絵画神殿のイデア(抄)
彫刻論
10 ポンポニオ・ガウリコ
青銅の鋳造術について(第一章)
パラゴーネ
11 フランチェスコ・ドーニ
素描論(第六章)
工芸論(陶芸)
12 チプリアーノ・ピッコルパッソ
陶芸三書(第一書)
工芸論(金銀細工)
13 ベンヴェヌート・チェッリーニ
金銀細工論(抄)
印刷術・書体論
14 アルド・マヌーツィオ
関連史料
芸術家自伝・伝記
15 ロレンツォ・ギベルティ
コンメンターリ(第二書)
パトロン論
16 画家とパトロン
関連史料
扉図一覧
訳者一覧
前書きなど
ルネサンス期イタリアといえば、まず思い浮かぶのは華やかな芸術作品の開花であろう。フィレンツェやヴェネツィアを訪ねて、往時の雰囲気を醸し出す建築群を見物したり、美術館を訪ね歩く悦びは、何ものにも代え難い。この明るい風情は一体、どこからやって来たのだろうか。
イタリアでは早くも十四世紀の経過とともに、キリスト教の禁欲的・現世否定的な規範が和らいだ。そこに生まれた古典古代を範とした新たな世界観・人間観の芸術作品は、物質や人間自体の価値を重視するようになり、また芸術家はたんなる職人ではなく、より高い使命を帯びたクリエーターとして社会的に認知されるようになっていった。こうしたとき、芸術家自身も自分たちの使命や作品について語り始めるようになるし、各ジャンル専門の理論家さえ登場することになるのである。
我が国では、イタリアの美術史や文学研究には長い歴史があり、個々の作品についての深い分析もある。しかし、それら芸術についての同時代の議論の探究という点ではやや蓄積が薄いようにも思われる。もちろん、スター的な人物とその主要著作、たとえばヴァザーリの『美術家列伝』とか、レオナルドの絵画論とかミケランジェロの芸術論については、かねてから翻訳がなされて研究も進んでいるのだが、その周辺で、甲論乙駁したおびただしい論者については、まだ十分に紹介されてはいない。……
[「解説 イタリア・ルネサンス芸術論」冒頭より]