目次
はじめに
序 地球環境の中の流域問題と流域ガバナンスのアポリア
序-1 流域への注目と2つの研究戦略
(1)教育映画 “Powers of Ten”
(2)空間スケール
(3)水平志向の研究戦略
(4)垂直志向の研究戦略
(5)先行するプロジェクトについて
序-2 学際研究・文理融合研究から超学際的研究へ
はじめに
(1)文理融合による2つの先行プロジェクト(1997-2006年度)
(2)超学際的アプローチによる流域ガバナンス研究の展開(2014-2019年度)
第1章 流域ガバナンス研究の考え方
第1章解説
1-1 文理融合型研究プロジェクトの「残された課題」
(1)相似的関係にある2つのアポリア
(2)研究プロジェクト「地球環境情報収集の方法の確立」
(3)研究プロジェクト「琵琶湖―淀川水系における流域管理モデルの構築」
(4)残された課題
1-2 流域における生物多様性と栄養循環
(1)なぜ、生物多様性は必要か?
(2)生物多様性とは何か?
(3)流域の生物群集の固有性と階層性
(4)生物多様性の恩恵
(5)生物多様性と栄養循環
1-3 流域における地域の「しあわせ」と生物多様性
(1)「魚のゆりかご水田」プロジェクト
(2)経済的利益の向こうに見え隠れすること
(3)農家にとっての「意味」
(4)集落の「しあわせ」
1-4 「4つの歯車」仮説 垂直志向の研究戦略の展開
(1)「鳥の目」と「欠如モデル」
(2)経済的手法と人口減少社会
(3)「ブリコラージュ」と超学際
(4)「4つの歯車」仮説
(5)協働の本質
1-5 2つの流域を比較することの意味
(1)シラン・サンタローサ流域
(2)流域を比較することの意味
(3)「虫の目」による修正
(4)本書の構成
◉コラム1-1 湖沼をめぐる循環とガバナンス 2つの視点はなぜ重要か?
◉コラム1-2 環境トレーサビリティと流域の環境
第2章 野洲川流域における超学際的研究の展開
第2章解説
2-1 琵琶湖と野洲川流域――インフラ型流域社会の特徴
(1)琵琶湖の固有性と多様性
(2)野洲川流域の風土と文化
(3)変貌する琵琶湖と流域管理
(4)インフラ型流域社会
(5)流域の新たな課題
(6)流域管理から流域ガバナンスへ
2-2 上流の森を保全する多様な主体の「緩やかなつながり」
(1)大原の概要
(2)森林保全を担う主体の多様化
(3)上流の森林地域でのフィールドワーク
2-3 圃場整備と少子高齢化――「地域の環境ものさし」によるアクションリサーチ
(1)小佐治地区の地理的特徴
(2)圃場整備と生態系基盤の変容
(3)小佐治地区の環境保全活動
(4)アクションリサーチと「地域の環境ものさし」
(5)「地域の環境ものさし」が地域にもたらしたもの
2-4 魚と人と水田――「魚のゆりかご水田」
(1)須原地区の地理的特徴
(2)琵琶湖に生息する魚
(3)琵琶湖総合開発による人や魚の変化
(4)「魚のゆりかご水田」プロジェクト
(5)「魚のゆりかご水田」5つの恵み
(6)経験知と科学知
(7)「魚のゆりかご水田」プロジェクトの課題
(8)経験知と科学知で人と人、人と自然をつなぐ
2-5 在来魚がにぎわう内湖の再生に向けて
(1)内湖と人の関わり
(2)志那の内湖
(3)内湖を残す
(4)内湖の保全・利用をめぐる関係性と生きものへの配慮
(5)次世代に残す魅力あるまちづくりに向けて
2-6 南湖の水草問題をめぐる重層的なアプローチ
(1)水草問題の経緯と現状、滋賀県の対策
(2)水草が植物成長に及ぼす効果
(3)水草利用と環境保全
(4)水草問題の多面性
(5)水草問題から新しい環境自治へ
◉コラム2-1 水田における栄養循環調査――田越し灌漑と冬季湛水は水質保全に貢献するか?
◉コラム2-2 「鮒の母田回帰」を確かめる――ストロンチウム安定同位体比による分析
第3章 流域の対話を促進するために
第3章解説
3-1 流域の栄養循環と生物多様性との関係
(1)「鳥の目」から見た栄養循環の特性と流域ガバナンス
(2)野洲川流域の栄養物質の動態と人間活動
(3)安定同位体を用いたリン酸の発生源解析
(4)懸濁態リンの流出と発生源
(5)野洲川流域の栄養循環と生物多様性の関係
(6)川の中の栄養物質の動き――川の水質浄化作用
(7)生物多様性と栄養循環のかかわり
3-2 信頼関係がつむぐ主観的幸福感――野洲川流域アンケート調査に対するマルチレベル分析
(1)主観的幸福感に関するこれまでの研究成果
(2)野洲川流域アンケート調査――「幸福な個人」と「幸福な地域」
(3)信頼の二面性――「きずな」と「しがらみ」
(4)「しがらみ」を緩和する一般的信頼
(5)流域全体の「しあわせ」の醸成に向けて
3-3 流域の栄養循環と地域のしあわせを生物多様性でつなぐ
はじめに
(1)「4つの歯車」仮説
(2)「4つの歯車」仮説の実態:野洲川流域を対象として
(3)超学際的研究におけるツールとしての意義
◉コラム3-1 リンはどこからやってくるのか? リン酸酸素安定同位体比による分析
◉コラム3-2 流域からの地下水経由による琵琶湖へのリン供給
◉コラム3-3 産業連関分析からひもとく経済活動が引き起こすリンの流れ
第4章 シラン・サンタローサ流域における超学際的研究の展開
第4章解説
4-1 ラグナ湖流域における人口の急速な増加と開発――流域管理の課題
(1)フィリピン開発の歴史と課題
(2)シラン・サンタローサ流域における流域管理の課題
4-2 シラン・サンタローサ流域におけるコミュニティが抱える課題――カルメン村を事例として
(1)カルメン村の概要
(2)周辺開発によるカルメン村の変容
(3)開発影響下にあるカルメン村の将来
(4)マリンディッグの泉の保全に関するアクションリサーチ
4-3 シラン・サンタローサ流域における栄養負荷、栄養循環と生物多様性の現状
(1)流域の土地利用と河川の栄養バランスの不均衡の関係
(2)栄養螺旋長の計測による河川の栄養代謝機能の評価
(3)栄養負荷と大型底生無脊椎動物の多様性の関係
(4)シラン・サンタローサ流域における栄養循環と生物多様性、今後の展望
4-4 サンタローサ流域における共通の関心(Boundary Object)――地下水問題
(1)歴史的に豊富な地下水
(2)地下水に関する問題と懸念
(3)シラン・サンタローサ流域の地下水の窒素汚染の現状
(4)バウンダリーオブジェクトとしての地下水
(5)ワークショップによる調査活動のまとめ
4-5 サンタローサ流域委員会の発展と地域の福祉
(1)サンタローサ流域における流域管理に向けた協力・協働の歴史
(2)サンタローサ流域委員会(SWMC)の設立(2017年)
(3)サンタローサ流域委員会(SWMC)の制度分析
(4)サンタローサ流域における参加型ステークホルダー分析
(5)協力関係の強化にむけて――サンタローサ流域フォーラムの開催
(6)サンタローサ流域の流域ガバナンスの今後
第5章 流域ガバナンス研究の超学際的発展にむけて
5-1 垂直志向の研究戦略から明らかになったこと
(1)第三のアプローチ
(2)野洲川流域とシラン・サンタローサ流域の結果の差異は何によるのか?
(3)未来の専門家の姿
5-2 多様な流域のモザイクとしての地球
(1)多様な流域のモザイクとしての地球――ユニバーサル型の地球環境問題の視点から
(2)地球環境研究の文脈の中での私たちのプロジェクト
(3)「ジャーナル共同体」からの越境
謝辞
索引
執筆者一覧