紹介
◆日本の現行の法システムの全体像を明らかに ― 刑事法、民事法、行政法、ソフトロー(団体の自主規範)の段階構造とその組み合わせによる問題解決方法を提示◆
日本法社会学会学術大会のミニシンポジウム「『法の動態に応じて法の担い手の選択可能性を提示する学問』としての法社会学(法動態学)―法社会学教育の対象の明確化とその必要性」での発表成果を一冊に!
「本書は日本の法社会全体の動態的俯瞰を学際的に行おうとするものであり、法学部生、法科大学院生、司法修習生はもとより、法学者、法実務家にとっても、本来の法システムの中で舵取りをする上での「導きの星」になると期待される著作である」(太田勝造:推薦のことばより)。2020年の日本法社会学会学術大会のミニシンポジウムでの研究成果を軸に、法規制モデルを追究する。
目次
『刑事・民事・行政・団体の法規制モデル―法システム解明のミクロ法社会学―法学教育・社会人教育の新教材(法動態学講座5)』
遠藤直哉(弁護士・法学博士) 編著
【目 次】
推薦のことば(太田勝造)
はしがき
序 論 人・企業・ウイルスの対立を抱える社会の法はどのようにあるべきか―刑事処罰に依存しない法システムの構築に向けて―
1 「事前規制から事後規制の社会へ」の空疎なかけ声
2 刑事制裁は過剰ではないか?
3 被害救済と共に予防システムの構築へ
4 民事司法をドイツ型に強化せよ
5 行政手続も欧米型に強化せよ
6 ホリエモンの暗転からゴーン逃亡劇へ
7 オリンパス粉飾から東芝粉飾へ
8 長銀日債銀:監査法人の責任は?
9 個人情報保護より情報公開が大事
10 三権分立から三権連携へ
11 法科大学院の改革と人材育成を
12 感染症対策の法システム
第1章 刑事・民事・行政・団体の法規制の架橋
第1 法社会学の役割
1 法制度と運用
2 三権分立から三権連携へ
3 法の担い手
4 進行中の事件の普遍化
5 法社会学(法動態学)の目的と方法論
6 法社会学の必修化
7 新しい教材
8 自然犯の刑事制裁と予防政策
9 法制度の成功例
(1) 交通事故分野
(2) 労働法分野(民事主導型の成功例)
10 消費者法分野(不十分な保護政策)
11 社会経済分野
第2 四大類型の連携
1 各法制度の相互機能(法社会学の教育対象)
2 西欧モデル
3 日本型近代化
4 法制度の主たる目的
5 先行研究
6 法制度の4段階ピラミッドモデル(別表1)
7 法機能の2段階ピラミッドモデル(別表2)
8 規制と効果の相関ピラミッドモデル(別表3)
9 刑事手続の硬直性
10 民事司法の欠陥
11 行政規制の不備
12 団体の役割とガバナンスの不備
13 事実認定手続の強制力と相互利用
14 日本型の類型化
(1) 刑事主導型
(2) 民事主導型
(3) 行政主導型
(4) 団体主導型
(5) 四大類型の連携
15 事例分析に基づく検証
(1) 第2章 会計粉飾事件
(2) 第3章 医療過誤
(3) 第4章 薬害など
(4) 第5章 非弁活動の規制
(5) 第6章 団体法の運用
第2章 会計粉飾における行政規制と刑事・民事の責任
第1 民事訴訟の機能の強化に向けて
(1) 刑事処分または行政処分の先行
(2) 民事訴訟の課題
第2 会計粉飾の最新典型例(行政主導型)
1 オリンパス事件
(1) 第三者委員会の報告書及び業務改善命令
(2) 課徴金
(3) 監査法人の責任
2 東芝事件
(1) 利益粉飾
(2) のれん粉飾
(3) 監査法人に対する業務改善命令
(4) 課徴金
(5) 監査法人と会計士に対する業務停止
3 第三者委員会報告書と監査法人監査(団体主導型)
(1) 歴史的経過
(2) 第三者委員会の在り方
(3) 第三者委員会の報告が公正・適正でないと評価される場合
(4) 第三者委員会の報告が適正である場合
(5) 他の手続への流用
(6) 追加措置
(7) 公認会計士についての法規制
第3 刑事主導型の弊害
1 自由刑
2 証明度
3 起訴される場合
4 刑事手続の弊害
5 あるべき刑事手続
(1) 悪質事犯
(2) 選択の基準
第4 民事主導型の類型
1 ①金銭流出型
2 ②資産棄損型
3 ③倒産型
4 ④粉飾違法配当型
5 ⑤粉飾一般型
6 調査資料開示制度へ
第3章 医療における民事・刑事の規範と医療事故調査制度
第1 医療と法制度の接点
1 事後処理と事前予防
2 ピラミッドモデルにおける医療法の体系
3 法変動の経過と現状
第2 医療過誤による被害者の民事上の救済
1 医療契約の法的位置づけ
2 社会の情報化
3 医療水準論の確立
4 医療における説明義務
5 医療裁判の改善
6 現状の課題
第3 医療過誤に対する刑事手続の導入の失敗
1 刑事司法と医療過誤
2 医療過誤に対する刑事手続の発動
3 刑事司法による介入の限界
第4 医療事故調査制度(自主規律と行政規制の中間の団体主導型)
第5 行政主導の失敗例
1 ハンセン病患者に対する行政主導の対策とその誤り
2 ハンセン病患者の被害救済
第4章 薬事分野における法規制の変動
第1 法規制の拡大
1 民事司法手続き主導から行政主導へ
2 民事司法手続き機能不全型の継続
3 刑事司法手続き発動の是非
第2 薬害エイズ事件(帝京大学ルート)
1 事案の概要,民事訴訟の経過と残された問題
2 刑事司法手続による原因究明とその問題点及び原因究明の望ましいあり方
第3 ディオバン事件
1 事案の概要
2 刑事事件の経過
3 臨床研究法の成立とその課題~団体主導の必要性~
第4 結 語
第5章 非弁行為禁止に対する刑事上民事上の機能と弁護士会の規制
第1 非弁活動の時代的変遷
1 非弁活動の昭和型
2 非弁活動の平成型
3 法治国家のあり方
第2 非弁行為に対する法的規制
1 規制の3類型
2 弁護士会の規制
3 刑事上の規制
4 民事上の規制
第3 平成時代の類型
1 不動産業者
2 司法書士(行政書士・社会保険労務士)
3 地上げ業者
4 警備会社など(少額定額請求案件)【違法駐車取締事件(京都地判平成30年3月8日(LLI/DB判例秘書登載))】
5 コンサルタント
第4 弁護士一元化及び非弁行為に対する救済の提言
1 訴訟外活動の(準)非弁行為
2 弁護士会主導の立法案
第5 結 語
第6章 団体運営の行政・民事・刑事の機能と弁護士の役割
第1 団体の法的機能
1 団体とソフトロー
2 団体のガバナンス
第2 団体の構成員の除名と役員の解任の法的規律
1 評議員の随時解任の制限
2 除名・解任の典型型たる正当事由型(民法と会社法の随時解任型の制限)
3 組合・社団・財団・会社の共通原則
4 委任規定(民法650条まで)の準用(651条の排除)
5 一般財団法人法の財団の正当事由型
6 民法651条随時解約規定の制限
7 取締役の随時解任規定の制限
8 団体構成員としての評議員
9 モデル定款と判決(ソフトロー)
10 団体・会社の三類型
第3 宗教法人法の運用
1 宗教法人法下における宗教法人のガバナンスの欠如
2 法機能不全型の典型的事例
(1) 規則認証制度
(2) 裁判所の法令解釈の誤り
(3) 裁判所が誤判を是正できないこと
3 立法権・行政権の優位
4 副住職居住の許可条件
5 寺院規則の認証制度の破壊行為
6 宗教団体の近代法の否定
第4 弁護士の役割
1 法解釈における弁護士の役割
2 団体役員と構成員との協議
3 団体の相手方代理人として
あとがき