目次
『法における伝統と革新―日独シンポジウム(総合叢書19)』
守矢健一・高田昌宏・野田昌吾 編
【目 次】
はしがき
◆第Ⅰ部◆ 伝統と革新の関係の法制史的観察
伝統による革新,または法に固有の次元の剔抉について―来栖三郎の市民法研究の史的分析(2)
〔守矢健一〕
Ⅰ 前提―日本における,伝統を欠如させた革新
Ⅱ ローマ法継受以来のヨーロッパ法史
Ⅲ 来栖による裁判実務に固有の論理の発見
Ⅳ 法解釈論争に「戦後」という形容詞が施されるのは適切か?
Ⅴ むすび(22)
伝統と革新 ― 1968年から2000年までのゲルマン法史学〔フランク・L・シェーファ〔守矢健一 訳〕〕
要 約
Ⅰ はじめに
1 学問―リスクと副作用
2 時代区分―1968年と《長い1960年代》
Ⅱ 制度とスタッフ
1 未来への投資―ドイツの大学の状況
2 ゲルマン法史の中心
Ⅲ 公表媒体―学問市場の多元性
1 雑誌―犯行と牢屋破り
2 叢 書
Ⅳ ゲルマン法史学という科目の在り方と主なテーマ
1 家庭内紛争―ほかの専門領域との関係
2 旗艦―ドイツ法史
3 護衛艦―そのほかの科目
Ⅴ 覇権争い―方法論争
Ⅵ 回 顧
◆第Ⅱ部◆ 古典的市民社会と大衆社会のはざまで
「民主化の条件」から「人間の条件」へ―戦後日本における「主体の政治学」の展開とその今日的意義
〔野田昌吾〕
Ⅰ はじめに
Ⅱ 問題としての近代化と主体の確立
Ⅲ 政治の条件としての個人的主体―丸山眞男
Ⅳ 「現代的可能性」そして「人間の条件」としての「市民」―松下圭一
Ⅴ 政治学の今日的課題と戦後政治学の「伝統」―市民社会論との関連で
労働法による伝統と革新―労働者組織の新たな形式の技術,内容,応答
〔セバスティアン・クレバ〔守矢健一 訳〕〕
Ⅰ 問題提起
Ⅱ 労働法と民法一般原則
1 法技術
2 実質的内容
3 中間総括
Ⅲ 労働法と労働組織
1 問 い
2 法的な捕捉
Ⅳ まとめ
伝統と革新のあいだにある社会保険の基礎と構造的諸原則
〔カタリーナ・フォン・コペンフェルス=シュピース〔野田昌吾 訳〕〕
Ⅰ はじめに
Ⅱ 社会保険における被雇用者概念はなお時代適合的で,将来性があるか?
1 社会保険の中心規範としての社会保障法典第4編7条1項
2 社会保険の対象者を被雇用者に限定することの理由
3 雇用の類型(Typus)
4 被雇用者概念の柔軟性と非時代拘束性(Zeitlosigkeit)
Ⅲ 社会保険,とりわけ法定疾病保険の脱連帯化?
1 脱連帯化の徴候および事実
2 連帯原理の後退という点からのこれらの諸現象の考察
3 小括:脱連帯化の徴候ではなく,連帯と自己責任の関係の再編
Ⅳ 法定疾病保険における現物給付原則の後退?
1 現物給付原則とその機能
2 社会保障法典第5編における費用弁済の基礎と可能性
3 社会保障法典第5編における費用弁済のさまざまな形
4 伝統と革新のあいだの現物給付と費用弁済
Ⅴ 結 論
◆第Ⅲ部◆ 私法学における新たな傾向と伝統
日本における後発的不能論の展開の素描〔坂口 甲〕
Ⅰ はじめに
Ⅱ 債務からの解放
1 伝 統
2 革 新
3 民 法(債権関係)の改正
Ⅲ 債務転形
1 伝 統
2 革 新
3 民法(債権関係)の改正
Ⅳ 危険負担
1 伝 統
2 革 新
3 民法(債権関係)の改正
Ⅴ まとめ
インターネット媒介者に対する権利行使―伝統と革新の狭間で〔ボーリス・P・パール〔坂口甲 訳〕〕
Ⅰ はじめに
Ⅱ 出発点
Ⅲ 妨害者責任(Störerhaftung)
1 基 礎
2 「Sommer unseres Lebens」事件
Ⅳ テレメディア法(TMG)に基づく責任制限(7条~10条)
1 妨害者責任とテレメディア法による責任制限との関係
2 具体例:公衆無線LANのアクセスプロバイダ
3 McFadden事件における欧州裁判所の先決裁定手続
4 ドイツの立法者の対応
Ⅴ まとめ
日本の会社法学における伝統と革新―社員権論をめぐって〔高橋英治〕
Ⅰ はじめに
Ⅱ 日本における株式の語源
Ⅲ 明治23年旧商法下における株式論の状況
Ⅳ 伝統的学説としての社員権論の成立―岡野敬次郎,松本烝治
Ⅴ 革新理論としての社員権否認論―田中耕太郎
Ⅵ 革新思想を推し進めた株式=債権説―松田二郎・八木弘
Ⅶ 株式=債権説の敗北―最高裁判決による決着
Ⅷ おわりに―本稿の結論
1 日本の資本市場の変遷と株式本質論
2 財産権と管理権
3 社員権否認論の現代的意義
団体における社員権と団体の多様性〔ハンノ・メルクト〔高橋英治 訳〕〕
Ⅰ 序 説
Ⅱ 団体における社員権に関する伝統的一元論
Ⅲ 団体における社員権の特別な表出
1 人的会社:異なる種類の団体における同じ種類の社員権
2 資本主義的な資本会社:社員の限定的な持分
3 ハイブリッドの参加形態:株主と同一の立場
4 上場会社:合理的で無関心な投資家
5 単独の社員―コンツェルン母体:結合なき団体
Ⅳ 結 論
◆第Ⅳ部◆ 行政法における伝統的問題と新動向
日本における代執行の「機能不全」について〔重本達哉〕
Ⅰ はじめに
Ⅱ 伝統的な観方
1 代執行に係る従来の解釈論と代執行の「機能不全」
2 立法的措置の必要性とその障壁
Ⅲ 問題事例―代執行過程の過剰と過少
1 一般法上の手段である代執行の可能性と限界
2 代執行手続の過剰と過少
Ⅳ 問題解決のための1つの提案―手続法上の解釈論的努力
Ⅴ おわりに
日本の行政訴訟における原告適格について〔西上 治〕
Ⅰ 序
Ⅱ 伝 統
1 いわゆる「法律上保護された利益」説
2 三つの前理解
3 前理解からの帰結
Ⅲ 革新の契機
1 伝統学説の弱さ
2 利益概念の複層性
3 利益(ないし権利)概念の機能的理解
Ⅳ 革新の方向性
1 市民の法的地位の新構成
2 行政訴訟の構想転換
Ⅳ おわりに
現代民主制における中核的要素としての情報の自由〔フリードリヒ・ショッホ〔重本達哉 訳〕〕
Ⅰ ドイツにおける情報自由法の制定
1 民主制国家における情報の自由
2 連邦及び州の情報自由法
3 「新たな世代」―透明化法(Transparenzgesetze)
Ⅱ 公的部門における情報へアクセスする場合のパラダイムシフト
1 以前の法状況
2 現行情報自由法の構成要素
3 パラダイムシフトの実務的影響
Ⅲ 政治分野におけるIFGの展開
1 IFGの適用領域
2 連邦政府の情報提供義務化
3 議会分野のIFGによる透明化
Ⅳ 情報の自由の限界
1 特別な公益(IFG3条)
2 第三者の利益の保護
Ⅴ 結 語
EU行政法における法典化の革新的な試み〔イェンス=ペーター・シュナイダー〔西上治 訳〕〕
Ⅰ ヨーロッパ行政手続の意義と法典化に関する導入的コメント
Ⅱ ReNEUAL模範草案と,特に第3編の概観
1 特に模範草案の細分化された適用範囲に関する第1編の一般的規律
2 第3編に従った個別事案決定手続
3 EU官庁の法的拘束力のある決定に焦点を合わせた第3編の適用範囲
4 ReNEUAL模範草案とEU行政手続規則(欧州議会提案)の概括的比較
Ⅲ 展 望
◆第Ⅴ部◆ 刑事法における伝統と革新
日本における未遂論の発展―離隔犯を素材として〔金澤真理〕
Ⅰ はじめに
Ⅱ 日本における未遂論
Ⅲ 離隔犯における実行の着手
Ⅳ 未遂の危殆化構造についての考察
Ⅴ 結びにかえて
刑事訴訟における伝統と革新―法定証拠主義から自由心証を経て構造的な心証形成へ
〔ヴォルフガング・フリッシュ〔金澤真理 訳〕〕
Ⅰ 序
Ⅱ 刑法の全体系における心証形成の意義について
Ⅲ 証拠調べ(Beweiserhebung)と心証形成
Ⅳ 法定証拠主義の規則,その問題性及び自由心証への移行
Ⅴ 有罪判決の前提としての犯行の確信―批判と代案
Ⅵ 第一の評価:客観的蓋然性―これは実りをもたらす選択肢か?
Ⅶ 確信への回帰と第二の評価
Ⅷ 心証構造について:根拠に基づいた仮説の再吟味としての心証
Ⅸ 実践理性と合致し,高度の蓋然性を前提とする心証の結果としての裁判官の確信
◆第Ⅵ部◆ 民事訴訟における伝統と革新
共有者の共同訴訟の必要性について〔鶴田 滋〕
Ⅰ はじめに
Ⅱ 伝統理論の形成
1 1890年民事訴訟法の成立と学説継受
2 1896年民法の成立と学説におけるドイツ法全盛期
3 伝統理論の特徴
Ⅲ 革新理論登場の萌芽
1 1920年代以降の時代状況
2 訴訟目的論と訴権論
3 訴訟追行権論と共有者の共同訴訟の必要性
Ⅳ 革新理論の形成
1 当事者主義的民事訴訟の目的としての紛争解決
2 職権主義的民事訴訟の目的としての紛争解決の一回性
3 多数当事者紛争における紛争解決の一回性と手続保障
4 訴訟政策説の登場
5 革新理論の特徴
Ⅴ 革新理論が伝統理論に与えた影響
1 訴訟利用者のための訴権の保障
2 判例による革新理論の受容
現代の民事訴訟における証拠法則?〔アレクサンダー・ブルンス〔鶴田滋 訳〕〕
Ⅰ テーマ
Ⅱ 歴史的淵源
1 ローマ法
2 ゲルマン訴訟
3 イタリア=カノン訴訟
Ⅲ 法比較における法定証拠法則と自由心証
1 フランス
2 イギリスおよびアメリカ合衆国の訴訟
3 ドイツ
Ⅳ 証拠法則による民事裁判官の真実発見の法律上の形成(Ausformung)
Ⅴ 要 約
執筆者・翻訳者紹介(巻末)