紹介
◆ハーンは、まだまだ新しい!◆
「外部」から戻ってきた人間のお話はいつでも魅力的ですが、「外部」と遭遇し戻ってこれなかった人の話はどうなるのでしょうか? ハーンの「怪談」もまた、異なる世界との往還・出会いを描いて、いまなお新鮮な驚きを与えてくれます。本書は、ハーンを補助線・通奏低音に、外部と遭遇した作家、ベケット、イェイツ、コンラッド、ゴッホなどを取り上げて論じます。また『お菊さん』などで維新期日本人を「猿」として表象したピエール・ロティ、「踊り子」を猿のような醜さで描いたドガ(日本では大人気ですが)などにも、異なるものと遭遇した作家・画家の無意識の視線を暴き出します。「外部との遭遇」というユニークな視点から、我々の文学的常識を問い直し覆してくれる痛快文学論です。
目次
「外部」遭遇文学論―目次
はじめに
第一部 異界との遭遇
第一章 死者の霊に向き合う作家たち――ハーン、ベケット、イェイツ
一 「松山鏡」と「茶碗の中」
二 ハーン的霊魂の世界――「伊藤則資の話」と「宿世の恋」
三 ベケット的霊魂の世界――ゴドーを待ちながら』
四 イエイツ的霊魂の世界――『煉獄』 38
第二章 「耳なし芳一」の物語をめぐって――ハーン、アルトー、ゴッホ
一 ハーンの描いた「耳なし芳一」
二 アルトーの描いた「耳なし芳一」
三 アルトーからゴッホへ
第二部 「異国」との遭遇
第三章 「帰還しない旅」の行方――「夏の日の夢」を読みながら
一 帰還する旅と帰還しない旅
二 「夏の日の夢」の真のテーマとは何か
三 もうひとつの浦島物語――「リス」
四 ハーンはどこに行くのか――「夏の日の夢」の終わりから
第四章 ピエール・ロティ、あるいは未だ発見されざる作家
一 『アジヤデ』――「東洋」との出会い
二 『アジヤデ』――ヴィヨーとロティ=アリフ
三 『アフリカ騎兵』――「アフリカ」の発見
第三部 奇異なる存在との遭遇
第五章 「猿」をめぐる物語――ピエール・ロティの場合
一 『お菊さん』に描かれたロティの日本体験
二 『お菊さん』における「猿」のイメージ
三 十九世紀ヨーロッパの「他者」表象
四 十九世紀ヨーロッパの「科学的」武器――「顔面角」と進化論
第六章 「猿」をめぐる物語――エドガー・ドガの場合
一 ドガにおける猿のイメージ
二 ドガにおける階級性
三 「十四歳の小さな踊り子」をめぐって
四 悪徳が「刻印」された顔
五 「小さなナナ」と呼ばれる踊り子
おわりに
注
あとがき
索引
装幀――虎尾 隆