紹介
社会構成主義の第一人者ガーゲンが、独自の関係論から世界を徹底的に記述しなおし、新たな知の地平を切り開く。
存在を隔てる壁を無効にし、対立を乗り越える未来への招待状。
PROSE Awards(心理学部門、2009年度)受賞作。
●原著者
ケネス・J・ガーゲン(Kenneth J. Gergen)
1957年イェール大学心理学部を卒業、1962年デューク大学心理学部で博士号を取得。ハーバード大学助教授を経て、1967年よりペンシルバニア州スワースモア大学心理学部の助教授、1971年より同教授。2006年に退職。現在、同大学名誉教授。社会構成主義の第一人者として数多くの著作を発表。多くの研究者や実践家と対話を重ね、社会構成主義の理論と実践を結集して社会に変化をもたらすために活動を続けている。邦訳に、『あなたへの社会構成主義』『社会構成主義の理論と実践』『もう一つの社会心理学』(以上、ナカニシヤ出版)、『現実はいつも対話から生まれる』『ダイアローグ・マネジメント』(以上、Discover21)、他。
●訳者
鮫島輝美(さめしま・てるみ)
京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了
博士(人間・環境学)
現在,京都光華女子大学健康科学部准教授
主要著作:
『「生きづらさ」に寄り添う〈支援〉』(単著,ナカニシヤ出版,2018)
東村知子(ひがしむら・ともこ)
京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了
博士(人間・環境学)
現在,京都教育大学教育学部准教授
主要著作:
『発達支援の場としての学校』(共編,ミネルヴァ書房,2016)
『音楽アイデンティティ』(共訳,北大路書房,2011)
K. J. ガーゲン『あなたへの社会構成主義』(翻訳,ナカニシヤ出版,2004)
目次
日本語版への序文
はじめに―新たな知の地平へ
知的な旅の同伴者たち
書き方の探求
言葉の限界
物語の今後の展開
第1部 境界画定的存在から関係規定的存在へ
第1章 境界画定的存在からなる世界
自己の弊害
自己と他者
境界画定的存在という文化
伝統の変革に向けて
第2章 関係こそすべてのはじまり
協応行為による意味生成
すべては協同的に創造される
因果関係から関係の合流へ
第3章 関係によって生み出される自己
内と外の境界を取り除く
自分の心がわかるとは
専門家には心がわかるか
心から関係へ
関係の中の行為としての心
第4章 関係としてある身体─感情、快楽、苦痛
歴史と文化に見る感情
感情というダンス
関係のシナリオ
危険なダンスを止めるには
感情は生物学的なものではないのか
身体の快楽─協応行為からの贈り物
苦痛─最後の難問
第2部 日常生活における関係規定的存在
第5章 変幻自在的存在と日常生活の冒険
変幻自在的存在
協調─飛翔への挑戦
日常生活に潜む危険─関係のあいだの関係
協調の技法
第6章 絆とバリケードを越えて
絆の形成を推し進める力
固定化する絆
絆と境界
侵食から壊滅へ
バリケードを乗り越える
激しい対立と変化力のある対話
第3部 専門的実践における関係規定的存在
第7章 知の共同生成
知はコミュニティによって創造される
知の分断が招く混乱
学問分野の垣根を乗り越えるために
書くことは関係である
書くことは関係への奉仕である
知の個人主義を超える
人間科学における関係主義からの代案
第8章 関係こそが教育のカギ
教育の目的を再考する
参加の輪
関係にもとづく教育学─その具体的な展開
参加の輪1 教師と生徒
参加の輪2 生徒同士の関係
参加の輪3 教室とコミュニティ
参加の輪4 教室と世界
参加の輪は続く
第9章 関係の回復としてのセラピー
セラピーを取り巻く関係の文脈
セラピー─行為の協調がもつ力
セラピーのレパートリーを拡大する
第10章 組織─不安定なバランス
組織化─肯定から生まれる活力
組織を警戒せよ
関係調整としての意思決定
リーダーシップから関係的主導へ
価値の評定から価値の発見へ
組織と世界との関係
第4部 道徳から聖なるものへ
第11章 道徳─相対主義から関係規定的責任へ
道徳的行為という難問
不道徳は問題ではない
道徳こそが問題
第二階の道徳に向けて
関係規定的責任の実際
共存からコミュニティへ
はじまりのその先へ
第12章 聖なるものの探求
関係を理解するための手がかりとしてのメタファー
関係規定的存在の聖なる可能性
聖なる実践に向けて
おわりに─関係中心主義の到来
世界に広がる関係中心主義
訳者あとがき―伝統的人間観の超克と対話による意味生成へ
索引