紹介
古代から“文明の十字路”として多彩な文化が形成された東アナトリア地域
(アルメニア・東トルコ・グルジア)及びシリアに残された
キリスト教とイスラームの歴史建築の全貌に迫る17年間にわたる
学術調査の成果報告書!
有史以来、数多くの民族が移住・定住を繰り返し、多様・多彩な文化が
形成された東アナトリアは、グローバルとローカルの文明が鬩ぎ合う
周縁地域として、今後、文化史的に大きな意味と可能性を孕んだ地域と
いえる。しかし、その多様性は同時に、近・現代史における数多くの紛争を
誘発し、学術調査を忌避するものとなってきた。
21世紀においても依然として調査・研究未開拓地が残される、
そうした地域の文化遺産の内、本書はキリスト教とイスラームの歴史建築に
焦点を当て、1998年より継続して実施した調査の成果として、
本邦で初めて、東アナトリア地域に残る歴史建築の全貌に迫るべく、
文化史的意味と解説、及び遺構の現状、更には地震多発地域における
文化財の保全に関わる工学的研究を含めた論考を、多数の図版を用いて、
全文英文にて収録したものである。
中には調査後に倒壊した遺構もあり、
本書は東アナトリア地域の文化財資料としても貴重である。
96 頁( 概説部)+ DVD-ROM(研究論文234頁、遺構解説425頁、
遺構図版1518点!)付。
20世紀初頭にオーストリーの美術史家ストシィゴフスキーによって提唱され、
その後、20世紀の不幸な歴史の中で禁忌の扉によって閉ざされてきた
文化史的論争「アルメニア建築」に対し、本書は東アナトリア地域という
枠組みで、新たな視点と解を問いかけるものである。
同時にそれは、日本近代にとっての西欧という歴史的枠組みの再考を
迫るものになっている。