目次
序章 漢詩を読むカフカ①
――フェリーツェへの手紙に見る中国人モチーフ
1 袁枚の「寒夜」――ハイルマン詩集より
2 ヨーロッパが見た中国――オリエンタリズムと女性嫌悪
3 カフカは「中国人」だった――研究史の視点
4 ユダヤ人と中国人
第一章 ドイツ語圏の黄禍論に表れた「男性の危機」
1 黄禍の図
2 「情けは無用、皆殺し」――ヴィルヘルム二世の黄禍論
3 オイレンブルク事件――ドイツ宮廷の同性愛スキャンダル
4 カール・クラウスの『万里の長城』
5 混淆の不安――エーレンフェルスの黄禍論と「男性解放」論
第二章 漢詩を読むカフカ②
――『ある闘いの記録』に姿をとどめた中国詩人たち
1 「藪の中から裸の男たちが……」
2 男だけの世界
3 ハイルマンの中国文化紹介
――帝国主義批判と「詩人同盟」の図
4 李白の「江上吟」と「太った男」
5 杜甫の「渼陂行」と「祈る男」
第三章 『流刑地』のオリエンタリズム
――植民地主義批判とシオニズムのあいだで
1 流刑地論争
2 ポストコロニアルなカフカ?
3 アナーキズムと女性嫌悪――思想家ミルボー
4 ミルボーの『責苦の庭』
――オリエンタリズムと植民地主義批判
5 「男同士の絆」から「女性の抹消」へ
6 シオニズムの入口で
第四章 「こいつは途方もない偽善者だ」
――中国学者ブーバーと「中国人学者」カフカ
1 マリーエンバートの中国人
2 父の視線――『中国人学者』と『判決』
3 中国服を着た息子
4 ブーバーの「タオの教え」
――体験の伝達(不)可能性をめぐって
5 カフカのブーバー受容①「老子」対「荘子」
第五章 『万里の長城』とシオニズム①
――「分割工事」方式で築く民族共同体
1 「民族の輪舞」!
2 シオニズムの隠喩
3 カフカのブーバー受容②文化シオニズムの方向転換
――宗教性から「労働」へ
4 ブーバーの宗教思想と「バベルの塔」
5 ランダウアーの無政府主義と「分割工事」
6 農耕民と遊牧民
第六章 『万里の長城』とシオニズム②
――シオニストの「労働」像に占める「男性」の位置
1 結婚とシオニズム
2 シオニズム寓話としての『カルダ鉄道』
3 ユダヤ民族ホーム――シオニズムの「核心の問題」
4 荒野の男性同盟
5 『無産労働者団』とパレスチナ移住の夢
第七章 東方からの使者
――カフカが見たロシアとロシア革命
1 「隣の州の反乱」――ロシア革命の影
2 女人禁制のロシア
3 「現在」に生きる――革命家ゲルツェンの回想録
4 新聞読者カフカ――古いメディア、新しい価値観
5 抹消される「現在」
終章 異郷の女ミレナ
――晩年の中国物語群と異民族「通婚」問題
1 ミレナとの恋とロシア共産党礼賛(?)
2 共産党員とシオニスト
3 『拒絶』とゲルツェン回想録――「革命思想」の射程
4 『掟の問題』とラッセル論文――新しい「貴族」
5 『徴兵』に描かれた「通婚」の挫折
6 おわりに