紹介
黒い絵で知られるゴヤの同時代に生きたスペインの作家カダルソ。客観的で公平な批評によって普遍を追求する『モロッコ人の手紙』、暗い夜の闇のなかで人間存在の悲惨を炸裂せる『鬱夜』。
理性の光ゆえにその影をも見出した彼の作品は、「理性の眠りが怪物を生み出す」(ロス・カプリチョス43番)時代のヨーロッパに屹立する。
異国人による書簡の形式に仮託した研ぎ澄まされた批評精神。新しい芸術思潮の始まりを告げるみずみずしい戯曲。世界が激動する世紀末を目前に控えた時代の息吹を如実に示す、18世紀スペインを代表する文学的達成、待望の邦訳成る。