紹介
マスクというアート言語を用いて、世界の人々と交信する。
池田緑の、12年間わたって取り組んだアート行為の異色の写真集
15年ほど前、作者は、新聞などで連日のように報じられる地球環境の悪化に、「ひとりのアーティストとして何か出来る事はないだろうか」「アートを介してささやかなりとも公害について考えるきっかけのようなものを提供できないだろうか」との念いを抱く。あれこれ模索するするうち、日本のガーゼのマスクこそ、性別や年齢、国境を越えて「呼吸・生命・大気」に視覚的に直結する格好の素材ではなかろうか、との考えに至る。折あるごとに世界中の国々に出かけては、地球環境の保全を願い、出会ったモノたちにひたすらマスクをかけて歩いたのである。2011年の東日本大震災と福島第1原発事故を区切りとし、作者はこのアート行為に終止符を打つ。この写真集には、作者のマスクに託した念いもさることながら、長きにわたって活動をともにした縦10 cm、横13 cmの白い小さなアートのメッセンジャーに寄せる深い感慨があふれている。