目次
・道徳授業の新たな可能性を探る
●子どもが喜ぶ〈道徳プラン〉…………中 一夫
・道徳が教科化したって,へっちゃらです
●これからも〈道徳プラン〉でたのしい授業…………峯岸昌弘
・道徳ぎらいの私でも 幸せを感じられる道徳の時間 …………長 香里
A 主として 自分自身に関すること
・〈つれさられた記憶〉…………長嶋照代・峯岸昌弘
□小学校低学年から
□関連する内容項目
▶A「善悪の判断,自律,自由と責任」/「節度,節制」
・〈モンジ〉…………峯岸昌弘
□小学校低学年から
□関連する内容項目
▶A「善悪の判断,自律,自由と責任」/「正直,誠実」
・〈遠足〉…………四ヶ浦友季・峯岸昌弘
□小学校低学年から
□関連する内容項目
▶A「個性の伸長」
▶C「相互理解,寛容」/「よりよい学校生活,集団生活の充実」など
・〈ピンチの時に〉…………峯岸昌弘
□小学校低学年から
□関連する内容項目
▶A「希望と勇気,努力と強い意志」
▶C「よりよい学校生活,集団生活の充実」
・〈ミスした時に〉…………中 一夫
□小学校高学年から
□関連する内容項目
▶A「正直,誠実」
▶D「よりよく生きる喜び」
・コラム1:道徳教科書のこなし方──教科書をラクに終わらせるテクニック…………中 一夫
B 主として 人とのかかわりに関すること
・〈ホンダ君と私〉…………中 一夫長嶋照代・中 一夫
□小学校低学年から
□関連する内容項目
▶B「相互理解,寛容」
▶A「善悪の判断,自律,自由と責任」/「節度,節制」
・〈やっつけてやる〉…………中 一夫四ヶ浦友季
□小学校低学年から
□関連する内容項目
▶B「親切,思いやり」/「相互理解,寛容」
▶C「よりよい学校生活,集団生活の充実」
・〈ライバル〉…………前田健二・中 一夫
□中学校から
□関連する内容項目
▶B「友情,信頼」
▶A「希望と勇気,努力と強い意志」
・〈うれしい言葉・いやな言葉〉…………中 一夫
□小学校高学年から
□関連する内容項目
▶B「礼儀」/「相互理解,寛容」
・コラム2: 道徳プランはただの「当てもの」か? ──問題と選択肢があればプランになるか…………中 一夫
C 主として 集団や社会とのかかわりに関すること
・〈真夜中のいたずら〉…………峯岸昌弘
□小学校中学年から
□関連する内容項目
▶C「公平,公正,社会正義」/「よりよい学校生活,集団生活の充実」
・〈先輩と後輩〉…………四ヶ浦友季
□小学校高学年から
□関連する内容項目
▶C「公平,公正,社会正義」/「よりよい学校生活,集団生活の充実」
・〈社会を動かすもの〉…………中 一夫
□中学校から
□関連する内容項目
▶C「公平,公正,社会正義」
▶A「正直,誠実」
・授業記録〈社会を動かすもの〉
❖中学2年生とたのしい道徳の授業…………山田岳史
・コラム3: 道徳プランを教科書的に授業すると──対照実験で見えてくること…………中 一夫
D 主として 生命や自然,崇高なものとのかかわりに関すること
・〈うそつきノンちゃん〉…………淀井 泉
□小学校低学年から
□関連する内容項目
▶D「よりよく生きる喜び」
▶A「善悪の判断,自律,自由と責任」/「正直,誠実」
・〈神社〉…………淀井 泉
□小学校低学年から
□関連する内容項目
▶D「よりよく生きる喜び」/「感動,畏敬の念」
▶B「親切,思いやり」
・コラム4:研究授業での利用は慎重に!──過度の期待は禁物です…………中 一夫
・あとがきに代えて………中 一夫
前書きなど
道徳授業の根本の目的は,「よりよく生きるための基盤となる道徳性を養う」ことにあります。道徳の時間を本当に「社会で生きていく上で基礎となる知識と考え方を学ぶ時間」にすることが出来たら,その授業はきっと子どもたちからも喜ばれるものになるでしょう。
それを形にしたのが,この本で紹介する〈道徳プラン〉です。ただし,ここで言う〈道徳プラン〉とは,たんに「道徳の授業のためのプラン」というものではありません。そうではなくて,「そのとおりに授業を進めれば,子どもも教師も満足できるような道徳授業ができるようにまとめられたもの」のことです(以下,簡単に「(道徳)プラン」ということもあります)。
この本の道徳プランは,「お話」の部分と先の展開などを予想する「問題」の部分に分かれており,自分で選んだ予想の理由や意見を出し合いながら授業が進みます。道徳プランはそのまま印刷して,プリントを一枚ずつ配りながらその指示に従って授業を進めて,授業者がそれを改変する必要のないように作られています。というより,改変すると逆に悪くなることがほとんどです。
これらの道徳プランは,科学の最も基礎的な法則を教えるために作られた仮説実験授業の〈授業書〉と呼ばれるものをモデルにして作られています。そして,それらのプランはさまざまなクラスで実施され,その良し悪しは子どもたちに聞いた評価や感想をもとに判断されます。大多数の子たちが「たのしかった」「役立った」と評価し,「ほぼどのクラスで実施しても一定の評価を得られる」ことが確認されたものが,プランとして提供されるのです。
〈道徳プラン〉を個人で作るというのは,なかなかたいへんなことです。なにより,「深い学び」につながるような〈考えるに値するテーマ〉〈みんなの興味をかきたてるような問題(テーマ)〉を探すことが難しいですし,その配列や問題設定にも工夫や配慮が要ります。そして安定した評価が得られるか,多くの実験授業での確認も必要です。この本で紹介するプランは,そういう検証をもとに,一つ一つ積み上げられてきたものなのです。
授業を受けるのは子どもたちですし,授業を実施するのは先生たちです。道徳教科書ができても(できたからこそ),それぞれの先生が工夫をこらした道徳授業はこれからも求められますし,その重要性は減らないでしょう。
そして,子どもたちが評価してくれて,先生たちが「またぜひやりたい」と思うような道徳授業を,一時間でもいいから実現できたらすばらしいことではないかと思うのです。それは「誰が作ったか」ということよりも,それを選び取る先生の判断(決断)が求められる,創造的な活動と言えます。
そういう道徳授業が実現すれば,「子どもたちが最も歓迎する授業が道徳」ということだってありえます。そして,道徳プランを実施している先生のクラスでは,実際にそういう例があるのです(⇒長 香里「道徳ぎらいの私でも 幸せを感じられる道徳の時間」25ペ)。そう考えると,道徳授業には私たちが想像していなかったほどの可能性があるのではないでしょうか。
この本で「自分もやってみたい」と思えるようなプランが見つかることを願っていますし,まずは試してみて,自分の頭で判断してみてもらえたらと思うのです。この本がみなさんの〈道徳〉のイメージを大きく変えていってくれることを願っています。