紹介
出会いの大切さとは,「治療者がクライエントを瞬時に観察し,クライエントの何気ない言葉やささやかな思い出,そして微かな興味や関心などの素材をもとに,その瞬間に,クライエントの体験してきたことやそれに伴う思いを考え抜くこと」(著者識す)。
村瀬嘉代子の「心理臨床」は,我が国の臨床心理学において他に比較しがたい重さを持っている。本書には,心理臨床の技術的側面を考える優れた論考を収録した。
卓抜な着想,迸るような臨床センスの煌めきが溢れ,このうえもなく現実的な臨床的治験が全編に亘ってちりばめられており,本書の各論考からは,仕事を通してよく生きることと学ぶこととは不可分であることが伝わってくる。すべてのセラピスト,心理援助者に読んでほしい本である。
目次
□第Ⅰ部 面接の基礎となること
治療関係における言語表現
プレイセラピストに求められるもの
事例研究をどう学ぶか
サイコセラピー,カウンセリング,ソーシャルワーク
□第Ⅱ部 多面的アプローチの諸相
遊戯療法の理論と実際
ピノキオから少年へ
心理臨床におけるシンボル
スクィグル法の治療促進的内面過程
診断的理解と共感的理解
□第Ⅲ部 児童・青年期臨床と共同体とのかかわり
地域社会におけるネットワーク
外来相談における環境療法的アプローチ
子どもの精神保健にかかわるインフォームド・コンセント
子どものクライエントから贈られたことば
[追補]
つながることと転機
発達障害のある人の人生に寄り添うこと
治療者とそだち
子育て困難とその臨床