紹介
本書は、子どもの治療・療育に長年携わってきた著者たちによって、本邦における注意欠陥多動性障害(ADHD)に対する医学と教育からの最新の知見と、最良のアプローチを呈示するものである。ADHDには、落ち着きのなさや、注意集中の困難、衝動性、学習の困難、反抗的行動など、さまざまな病態が見られる。こうした症状は、薬物療法によって改善される例が多いものの、以前に培われてしまった教育の遅れや、自尊心の低さなど、発達的な問題も発生してしまうため、ADHDを持ってしまった子どもたちへの対応は、医学的な見地と教育的な見地の両面から行う必要が出てくる。医師、教育者、心理療法家、研究者といった多方面の筆者たちの手によって、ADHDの知識と臨床実践、療育方法が多彩かつ多面的に描き出されており、ADHD臨床における豊富な知識を提供することだろう。
目次
1 ADHDの臨床-教育への情報提供をめざして(ADHDの臨床像(精神医学
小児科学)
成人期のADHD
ADHDと学習障害
ADHDの行動合併症
ADHDの治療
アメリカにおけるADHD治療)
2 ADHD教育の実際-臨床との情報交換を求めて(小学校でのADHD
中学生時期のADHD
学童期のグループ指導
教育と医療の連携)
3 ADHDの研究-臨床現場への架け橋(ADHDへの臨床研究総論
ADHDと脳科学
脳の発達とADHD-極低出生体重児の追跡研究から
ADHDと持続的処理課題
非線型現象としてのADHDの理解
小児精神科と医療倫理-ADHDをめぐって)