目次
はしがき
第1部 衰退する日本経済における格差と公共政策
第1章 世帯主年齢と本人年齢による所得格差の寄与度分解
――格差拡大は人口高齢化によるものか?:四方理人
はじめに
第1節 先行研究
第2節 使用データと分析方法
1 使用データ
2 所得格差の寄与度分解の方法
第3節 年齢別ジニ係数と年齢構成の変化
1 年齢内格差の推移
2 年齢構成の変化
3 年齢間相対所得の変化
第4節 所得格差の寄与度分解
おわりに
第2章 変わりゆく持家社会・日本と家計
――居住形態別貧困率と住宅費負担率の推計:田中聡一郎
はじめに
第1節 日本の住宅システム――住宅所有と社会政策の観点から
1 変わりゆく持家社会・日本
2 高齢者の居住形態と年金の関係
第2節 住宅費負担の現状
1 定義
2 推計結果
第3節 居住形態別貧困率
1 定義
2 推計結果
3 低所得高齢者の住宅問題
むすびに――ポスト持家社会の住宅保障に向けて
第3章 「平成の大合併」における市町村合併要因の分析:宮﨑雅人
はじめに
第1節 分析手法
第2節 推定結果
第3節 一般財源の動向
おわりに
第4章 社会保険制度における規制緩和の危険性
――介護保険制度における混合介護の議論を中心に:結城康博
はじめに
第1節 医療保険制度における保険内・外サービスの議論
1 混合診療における論争分析
2 例外で認められてきた保険外サービス
3 混合診療禁止の最高裁判決
第2節 介護保険制度における「混合介護」の実態
1 「混合介護」は条件付きで認められる
2 上乗せ・横出しサービスは公的制度
3 訪問介護における混合介護
4 サービス付き高齢者住宅
5 通所介護(デイ・サービス)
第3節 介護保険制度の変遷――2006年以降
1 措置から介護保険制度へ
2 「市場」原理導入の問題
3 未届け有料老人ホーム火災から学ぶ
第4節 混合介護の弾力化のねらい
1 介護業界の新たな財源
2 介護報酬マイナス改定の影響
3 混合介護へ期待する介護保険事業者
第5節 混合介護によって揺らぐ公平性
1 格差が生じる社会保険制度
2 無視できない認知症高齢者
3 契約自由の補完
4 競争原理のデメリット
5 無駄を生む危険
第6節 公平な社会保険制度の維持
1 潜在能力(capability)というキーワード
2 混合介護の弾力化は供給側が主導となる
3 準市場と純市場
4 格差是正について
おわりに
第5章 デフレーションの再検討
――公的固定資本形成と政府最終消費支出を分離したVARモデルによる分析:佐藤一光
はじめに
第1節 デフレーションを巡る議論
第2節 財政構造改革と社会保障費の抑制
第3節 VARモデルによる因果関係の推論
おわりに
第6章 市町村国民健康保険の保険料収納率に関する分析:大津 唯
はじめに
第1節 制度的背景
1 日本の公的医療保険制度の体系と市町村国民健康保険の位置づけ
2 市町村国民健康保険の保険料収納率の長期推移
3 保険料滞納問題への行政の対応
第2節 先行研究
第3節 分析の枠組み
1 分析に用いるデータ
2 推定モデル
3 分析に用いる変数と仮説
第4節 分析結果
おわりに
第7章 資源利用における行財政の役割と過少利用の影響
――温泉資源を事例に:高柳友彦
はじめに
第1節 熱海温泉における市営温泉事業の展開
1 町営温泉事業の成立と意義
2 高度成長期の市営温泉事業
第2節 高度成長期以降の熱海温泉
1 1970年代以降の市営温泉事業
2 温泉事業の見直し検討委員会の発足
3 その後の温泉事業と抱える問題
おわりに
第2部 グローバル経済下の金融と財政
第8章 新常態における中国の政府間財政関係:徐 一睿
はじめに
第1節 中国の政府間財政関係の回顧
第2節 政府間財政関係の現状と制度的特徴
第3節 政府間財政移転による地域の再分配効果
おわりに
第9章 「オランダモデル」形成期の財政・社会保障改革
――ルベルス政権とコック政権の政策連続性に着目して:島村玲雄
はじめに
第1節 「オランダ病」からの回復
1 ワセナール合意と経済回復
2 財政収支の推移
第2節 ルベルス政権の財政改革
1 ルベルス政権の歳出削減策
2 第1次・第2次ルベルス政権下の社会保障改革
3 中道左派の第3次ルベルス政権
第3節 コックの「第三の道」
1 コック政権の就労不能保険改革
2 コック政権の積極的労働市場政策
おわりに
第10章 デンマークの所得税制と児童手当
――負担の公平性と課税方式の変化に着目して:倉地真太郎
はじめに
第1節 デンマークの所得税制と児童手当の基本的構造
1 デンマークの所得税制度の構造
2 デンマークの児童手当の基本的構造
第2節 1970年代までの制度改革
――夫婦合算課税方式から部分的な個人単位課税方式へ
第3節 1980-1986年の制度改革――1983年移転的基礎控除の導入
第4節 1987年税制改革――二元的所得税と児童手当の普遍主義化
1 二元的所得税の弱点と児童手当による補完
2 税制改革の効果
おわりに
第11章 アメリカにおける産業構造の変化と法人税向け租税支出の変遷
――2000年代以降を中心に:吉弘憲介
はじめに
第1節 租税支出の概要
第2節 法人税における加速度減価償却制度
第3節 償却制度の拡張過程について
1 ボーナス償却制度
2 Section 179の拡大
3 減価償却制度変更に関する経済効果
第4節 償却制度を巡る経済効果と政治過程
1 経済効果
2 ボーナス償却制度を巡る政治過程
おわりに
第12章 金融自由化、金融革新と金融不安定性
――「制度の経済学」によるミンスキー理論の深化の可能性:横川太郎
はじめに
第1節 ミンスキーの金融不安定性仮説――金融的ダイナミクスと制度
進化
1 FIHの金融的ダイナミクス――資本主義経済の内生的不安定化
2 FIHの制度論的側面――抑止的システムと制度的ダイナミクス
第2節 金融自由化の進展と金融危機の深刻化
1 ニューディール型銀行システムの行き詰まりと規制緩和の進展
2 金融システムの転換とサブプライム金融危機
第3節 生産要素の市場化の限界と市場的領域・非市場的領域
1 貨幣の市場化の限界と金融革新による「貨幣」供給の増大
2 貨幣市場における「信認」と金融自由化、金融革新
おわりに
第13章 ブレトン=ウッズ体制期における英米の通貨管理と財政
――国際金融制度の政治経済学:土橋康人
はじめに
第1節 財政金融政策を分析する視座としての国際関係論
1 覇権安定論とリアリズムアプローチ
2 構造的リアリズムと自由主義的国際秩序
3 自由主義的国際秩序とトリレンマ論の衝突
第2節 ブレトン=ウッズ体制期における通貨管理の黎明(1958-64
年)
1 基軸通貨の衰勢
2 通貨管理体制確立の余波
第3節 通貨管理をめぐる攻防とその帰結(1964-71年)
1 通貨管理による国内統治とその限界
2 ポンド切下げとブレトン=ウッズ体制の崩壊
おわりに
第14章 「制度」の政治経済学に関する一考察
――財政史的考察方法をその出発点にして:茂住政一郎
はじめに
第1節 財政史的考察方法の整理
第2節 アメリカ初期制度主義者の提唱した制度の政治経済学
第3節 アメリカ制度学派による制度の政治経済学の見方
第4節 新制度派経済学と比較制度分析に対する若干の疑問
第5節 政治学および社会学の分野における新制度論
おわりに
索引
執筆者紹介