紹介
沖縄に〈戦後〉はない
「普天間」に象徴される沖縄問題とは一体何なのか。
なぜ、東アジア共同体構想は潰えたのか。
沖縄問題は戦後日本が積み残してきた問題の縮図である。
「沖縄」には3.11後の日本がもはや避けては通ることのできない
戦後日本の「高度経済成長」の陰にある都市と地方の「格差」が刻み込まれている。
商品、貨幣、そして資本が東京へ一極集中する一方、
「日米安保」という名のもとに「(国家の)暴力装置」である(在日)米軍は沖縄へ移駐集約されてきた。
今なお沖縄は「例外状態」にあり、「米軍基地のなかに沖縄がある」ことは言うまでもない。
本書では、明治政府による琉球王国の併合から、敗戦後の米軍による
直接軍事占領(1945~1972年)、1972年の沖縄返還/本土復帰、そして現在に至るまで、実質的には
日米両政府の内国植民地であり続ける沖縄の苦悩と闘争の歴史を、
米公文書や日米外交文書といった資料を基に、アメリカ、日本政府(〔日本〕本土)、沖縄(県、県民/市民)三者それぞれの立場を勘案しながら、沖縄問題の起源を探究する。
『原爆の記憶』(2010年6月刊行)で高い評価を得た著者が、日本人として真摯に向き合うべき「沖縄問題」に、真正面から挑んだ渾身の一冊。
目次
序
占領を再考する
本書の構成
(日本)本土から琉球/沖縄を捉えかえす試みとして
第I部 琉球/沖縄への視線
第1章 琉球王国から琉球藩、そして沖縄県へ――「琉球処分」
近代日本の形成
東アジアをめぐる地政学的な対立と相克
東アジアにおける〈近代〉
植民地主義と「日琉同祖」論
〈日本化=皇民化〉教育
第2章 沖縄戦とは何であったのか?――強制された「集団自決」
戦時総動員体制
本土決戦の前哨戦
「軍官民共生共死」――「命令だったから自分に責任はないと思っていた」
沖縄戦と教科書問題
沖縄の「玉砕」
第3章 米軍による直接軍事占領下の沖縄――「潜在主権」
米国による沖縄占領支配
「分割された領土」――対日講和条約への道程
「太平洋の要石」
法的「銃剣とブルドーザー」による土地収用
「島ぐるみ闘争」
沖縄の「祖国復帰」運動
第II部 米ソ冷戦構造のなかの「日米条約」
第4章 日本「復帰」/沖縄「返還」運動――「核抜き、本土並み返還」
沖縄返還交渉
ヴェトナム紛争と沖縄
「沖縄国会」
沖縄返還協定
変わらぬ沖縄の現実
第5章 日米安全保障体制とは何か?――「平和国家」としての日本(本土)と「戦時国家」としての沖縄
日米安全保障条約とは何か?
日米地位協定とは何か?
秘密主義
「密約」外交
沖縄「買い戻し」から「思いやり予算」へ
〈アメリカ〉の残像
第6章 「国土」と「国民」の(再)統合――「沖縄観光」
大日本帝国の「版図(領土)」への「併合」――「沖縄」の両義性
慰霊観光から沖縄観光へ
沖縄振興開発計画――日本国への「(再)併合」
日本「復帰」記念イヴェント・沖縄国際海洋博覧会
創られた「沖縄らしさ」――ブームからスタイルへ
記憶の埋立て
第7章 〈物語〉の力――「沖縄文学」
戦場と占領のリアリティ
沖縄戦の語り
記録から文学へ
体験から記憶へ
土地の記憶
第III部 内国植民地・沖縄の相克
第8章 グローバル化のなかの「日米同盟」――「少女暴行事件」(1995年9月4日)
在沖米海兵隊
「日米同盟」
在日米軍の治外法権――「司法の消極性」
10.21沖縄県民総決起大会
普天間飛行場の「返還/移設/新(基地建)設」
日米軍事再編、日米合意、そして反米軍・反基地闘争
第9章 日米軍事再編――「普天間」問題
基地の政治学
「新しい日米防衛協力のための指針」(通称、新ガイドライン)
「グアム統合軍事開発計画」
日米軍事一体化
日本の国民意識
第10章 琉球弧から眺める「東アジア」という表象空間
「グローバル化」
日本は「孤立した島国」なのか?
「日米同盟」の陰の東アジア
共栄共存と共生
沖縄は「本土の縮図」なのか?
結論
「極東条項」の空洞化
防衛政策見直し協議のゆくえ
政治の構造的な問題
〈支配する視線〉
東アジアに「戦後」はあるのか?
不平等の装置
沖縄との対話を意匠する
あとがき
註
沖縄年表
索 引