紹介
本邦で展開されてきた多彩な感情制御研究を一望できる書。基礎理論に始まり,社会・人格・認知・発達・臨床・教育の心理学領域,さらには経済・司法・労働分野に亘る最新知見を8部31章21トピックスで紹介。54名の専門家による豊富なテーマが横断研究や実践との往還が期待される今後の発展に向けて新たな出発点を提供する。
【主な目次】
●第Ⅰ部 感情制御の基礎
1章 感情制御研究の系譜:代表的な概念モデル
2章 感情制御の精神生理学
●第Ⅱ部 社会
3章 感情制御の文化差
4章 個人の感情制御と集団パフォーマンス
5章 コミュニケーション場面における感情制御
6章 対人的感情制御
7章 社会的共生と感情制御
●第Ⅲ部 人格
8章 共感性・向社会性と感情制御
9章 衝動性と感情制御
10章 情動知能と感情制御
●第Ⅳ部 認知
11章 作業記憶と感情制御
12章 注意と感情制御
●第Ⅴ部 発達
13章 乳幼児・児童期の感情制御
14章 思春期・青年期の感情制御
15章 老年期の感情制御
●第Ⅵ部 臨床
16章 精神病理と感情調整
17章 精神分析と感情制御
18章 クライエント中心療法と感情制御
19章 認知行動療法と感情制御
20章 日本の心理療法と感情制御
●第Ⅶ部 教育
21章 主体的学習と感情制御
22章 いじめと感情制御
23章 過剰適応と感情制御
24章 先延ばしと感情制御
●第Ⅷ部 感情制御の展開
25章 消費行動と感情制御
26章 災害と感情制御
27章 量刑判断と感情制御
28章 依存症と感情制御
29章 メンタルトレーニングと感情制御
30章 職場のメンタルヘルスと感情制御
31章 感情労働と感情制御
目次
監修者まえがき:「感情心理学」から「感情制御」研究へ
はじめに
第Ⅰ部 感情制御の基礎
1章 感情制御研究の系譜:代表的な概念モデル
1節 感情制御とは
2節 感情制御研究の夜明け前
3節 Grossのプロセスモデルと拡張版プロセスモデル
1. プロセスモデル/2. 拡張版プロセスモデル
4節 感情制御を捉える有用な視点
1. 感情の二重経路モデル/2. 自己制御モデル
5節 感情制御研究の新展開
1. 感情のポリレギュレーション/2. 対人的感情制御/3. 予防的介入や新しい感情制御方略の提案
6節 おわりに
2章 感情制御の精神生理学
1節 精神生理学的現象としての感情喚起過程
2節 感情制御に関する初期の精神生理学研究
3節 末梢の生理活動に注目した感情制御研究の展望
4節 感情機能の神経基盤
1. 扁桃体/2. 前頭前野
5節 LeDouxの二重経路説
6節 感情制御の神経基盤
Topics 1 自己制御と感情制御
Topics 2 ウェル・ビーイングと情動の持続
第Ⅱ部 社会
3章 感情制御の文化差
1節 文化と感情制御
2節 感情制御の文化差に関するこれまでの研究
1. 自己申告法による調査研究/2. 神経生理学的指標を用いた実験的研究
3節 精神的健康に及ぼす文化的影響
4節 おわりに
4章 個人の感情制御と集団パフォーマンス
1節 他者の感情認識と集団パフォーマンス
2節 他者の感情認識と自己制御の交互作用的影響
3節 集団パフォーマンスに着目した情動知能研究の展開
4節 社会性と集団パフォーマンス:課題と展望
5章 コミュニケーション場面における感情制御
1節 社会的状況における感情表出の制御
1. 笑顔の表出における対人関係要因の影響/2. 不快表情の表出制御
2節 対人コミュニケーションにおける感情の共変動
1. コミュニケーションにおける感情表出の同調/2. コミュニケーションにおける感情状態の共変動
3節 感情表出の抑制の対人的効果
6章 対人的感情制御
1節 はじめに
2節 感情制御における「対人交流」の位置づけ
1. プロセスモデルに基づく位置づけ/2. 状況的認知論に基づく位置づけ
3節 対人的感情制御(IER)の研究例
1. 目標指向的なIERに関する研究/2. 心的表象を前提としないIERに関する研究
4節 今後の展望
1. 対人交流における文脈/2. 対人交流の適応性/3. まとめ
7章 社会的共生と感情制御
1節 集団間葛藤と感情制御
1. 集団間葛藤と利害対立/2. 感情制御による集団間葛藤の解決
2節 社会的共生と嫌悪
1. 嫌悪の一般的な特徴/2. 嫌悪と集団間葛藤/3. 非人間化
3節 集団間葛藤における嫌悪と感情制御
1. 認知的再評価/2. 間接的接触を通じた感情制御/3. 非人間化への対応
4節 より良い社会的共生に向けて
Topics 3 感情制御の伝染
第Ⅲ部 人格
8章 共感性・向社会性と感情制御
1節 はじめに
2節 感情共有における感情制御の役割
1. 感情共有とは/2. 自分とは異なる他者との感情共有と感情制御/3. 感情制御による「正確な」他者理解と「過剰な」他者理解
3節 共感から生起される感情反応と感情制御
1. 共感に関する2つの感情反応/2. 心拍変動と向社会性
4節 共感の認知的側面と感情制御
5節 瞑想訓練による共感性・向社会性の向上
1. マインドフルネスと共感性・向社会性/2. 慈悲の瞑想訓練による介入
6節 おわりに
9章 衝動性と感情制御
1節 衝動性とは
2節 衝動性ならびに衝動的行動の測定方法
3節 衝動性と感情制御との関連
4節 衝動性と感情制御が精神疾患・逸脱行為に及ぼす影響
5節 まとめ
10章 情動知能と感情制御
1節 情動知能と社会からの注目
2節 情動知能の構成要素
3節 情動知能研究に対する批判
4節 感情制御のプロセスモデル
5節 感情制御のプロセスモデルから見た情動知能の個人差
1. 感情制御の目標設定(識別段階)/2. 感情制御方略および手段の選択(選択段階・実行段階)
6節 まとめ
Topics 4 一般パーソナリティ因子と感情制御
第Ⅳ部 認知
11章 作業記憶と感情制御
1節 私たちの行動を支える認知機能
1. 認知機能とは/2. 作業記憶とは
2節 作業記憶と感情制御の関係
3節 認知トレーニングと感情制御の関係
1. 認知トレーニングとは/2. 作業記憶トレーニングによる感情制御能力の改善効果/3. 認知トレーニングによるネガティブ感情の低減
12章 注意と感情制御
1節 はじめに
2節 感情制御のプロセスモデル
3節 注意配分
1. 気晴らし/2. 集中
4節 まとめ
Topics 5 安静時脳活動と感情制御
Topics 6 生理的覚醒制御の脳内ダイナミクス
Topics 7 感情ラベリングと感情制御
Topics 8 記憶と感情制御
第Ⅴ部 発達
13章 乳幼児・児童期の感情制御
1節 子ども期の感情制御とその測定
1. 感情制御/2. 子どもの感情制御の測定方法
2節 乳幼児・児童期の感情制御行動と感情制御に関する理解
1. 乳児期/2. 幼児期/3. 児童期
3節 感情制御の社会化
1. 子どもの感情表出に対する養育者の反応/2. 感情に関する会話/3. 感情表出性/4. アタッチメント
4節 感情制御の発達の文化差
5節 感情制御と適応
14章 思春期・青年期の感情制御
1節 思春期とは
2節 思春期における抑うつ症状と食行動異常
1. 抑うつ症状の蔓延/2. 食行動異常の蔓延
3節 思春期における感情制御方略の活用の重要性
1. 小学校高学年児童・中学生用情動調整尺度の開発/2. 感情制御方略の抑うつ調整効果とストレス生成効果/3. 感情制御方略と食行動異常の関連
4節 まとめ:臨床的示唆
15章 老年期の感情制御
1節 はじめに
2節 感情と加齢
1. 感情と加齢に関する知見/2. 感情と加齢に関する理論
3節 感情制御と加齢
1. 感情制御のプロセスモデル/2. 感情制御の年齢差
4節 おわりに
Topics 9 感情制御と絵本遊び
Topics 10 病児と感情制御
第Ⅵ部 臨床
16章 精神病理と感情調整
1節 はじめに
2節 感情調整の発達と精神病理
3節 精神病理に関連する感情調整:児童・青年期
1. 感情調整と精神病理の関連/2. 感情調整不全が先か,精神病理が先か?/3. 感情調整における保護者の役割
4節 精神病理に関連する感情調整:成人期
1. 気分障害と不安症の感情調整不全モデル/2. ポジティブ感情とネガティブ感情/3. 情動スタイルと調整不全
5節 まとめ
17章 精神分析と感情制御
1節 精神分析とは何か
2節 防衛機制とヒステリー
1. 防衛機制・ヒステリーとは何か/2. ヒステリーのメカニズムと治療論
3節 愛着理論
4節 その他の精神分析理論
18章 クライエント中心療法と感情制御
1節 はじめに
2節 HEPとは
1. HEPにおける感情制御/2. HEPの治療関係と体験過程に関する実証的支持
3節 エモーション・フォーカスト・セラピー(EFT)
1. 感情アセスメントと感情処理プロセス/2. EFTにおける感情制御と変容における治療関係
4節 まとめ
19章 認知行動療法と感情制御
1節 認知行動療法における感情制御
2節 認知行動療法の実際:うつ病の事例を通じて
1. 仮想事例:Aさん(50歳・うつ病)/2. CBTモデルによるケース・フォーミュレーション/3. CBTの基本的な流れ
3節 認知行動療法のエビデンスと今後の展開
20章 日本の心理療法と感情制御
1節 はじめに
2節 日本で実施される心理療法と感情制御
1. 心理療法において日本語や日本文化に着目する意義/2. 日本語臨床/3. 日常語による感情の理解と制御
3節 日本で開発された心理療法と感情制御
1. 日本で開発された心理療法とは/2. 森田療法における感情/3. 内観療法における感情/4. 感情制御の観点から見た特徴
4節 おわりに
Topics 11 発達障害への介入
Topics 12 不安症への介入
Topics 13 気分障害への介入
Topics 14 統合失調症への介入
Topics 15 感情体験と感情制御
第Ⅶ部 教育
21章 主体的学習と感情制御
1節 はじめに
2節 自己調整学習
3節 自己調整学習に適応的な動機づけ
1. 自己決定理論/2. 期待・価値と動機づけ
4節 自己調整学習と感情制御
1. 感情と感情制御の動機づけ機能/2. 動機づけ調整方略/3. セルフコントロール
5節 まとめ
22章 いじめと感情制御
1節 いじめの問題
1. いじめの定義/2. いじめの出現率
2節 いじめ加害・被害とその情動的特徴
1. いじめ加害・被害と情動的問題との関係/2. いじめ加害・被害と長期的な情動への影響
3節 いじめの加害・被害と情動制御
1. 情動制御・情動制御不全といじめ/2. いじめ加害と道徳的離脱
4節 まとめ
23章 過剰適応と感情制御
1節 はじめに
2節 過剰適応とは
3節 過剰適応研究から見た感情制御
4節 子どもの抑制的な方略への介入
1. 個人という視点/2. 相互作用という視点
5節 親の抑制的な方略が子どもへ及ぼす影響
6節 これからの過剰適応研究と感情制御研究に必要なもの
7節 おわりに
24章 先延ばしと感情制御
1節 先延ばしの定義
2節 先延ばしと感情
3節 先延ばしと自己制御
4節 先延ばしと感情制御
5節 先延ばしのメタ信念
6節 先延ばしと類似した現象
1. 気晴らし/2. 誘惑対処
7節 先延ばしとうまく付き合うために
Topics 16 学校における心理教育:社会性とEQ
Topics 17 学校における心理教育:感情の理解とコーピング
Topics 18 学校における心理教育:抑うつ予防
第Ⅷ部 感情制御の展開
25章 消費行動と感情制御
1節 はじめに
2節 感情制御のための消費行動
3節 消費行動から生じた感情の制御
4節 消費行動から予期される感情の制御
5節 おわりに
26章 災害と感情制御
1節 災害を乗り越えるために
2節 災害に関する心理学的問題と感情および感情制御
1. 災害サイクルと心理学的問題/2. 防災行動の促進と感情/3. 避難行動と感情/4. 災害による心理的影響と感情制御/5. こころの防災教育
3節 災害と感情制御研究の今後の展開
27章 量刑判断と感情制御
1節 法制度下における意思決定と感情
1. 量刑判断/2. 感情と「べき論」/3. 感情の種類/4. 制御されるべき感情
2節 怒り・応報
1. 概要/2. 懲罰的態度との関係/3. 怒りが影響するための条件/4. 制御可能性/5. 応報
3節 共感・恐怖
1. 共感/2. 共感の第三者効果/3. 恐怖(犯罪不安)
4節 現実の裁判に対する示唆
28章 依存症と感情制御
1節 はじめに
2節 依存症とは
3節 日本における依存症の現状
1. アルコール/2. 薬物/3. ギャンブル
4節 依存症と感情制御の関連
1. アルコール/2. 薬物/3. ギャンブル
5節 依存症と自己治療仮説
6節 おわりに
1. 依存症の啓発・対策/2. 依存症の治療
29章 メンタルトレーニングと感情制御
1節 競技スポーツと感情との関係
2節 競技スポーツにおけるメンタルトレーニングの役割
3節 メンタルトレーニングとしての感情制御方略
1. 気晴らしの活用事例/2. 再評価の活用事例
4節 感情制御で個人差を規定する要因
30章 職場のメンタルヘルスと感情制御
1節 はじめに
1. 本章の目的と構成/2. 本章の着眼点
2節 一次予防としてのメンタルヘルス対策と感情制御
3節 二次予防としてのメンタルヘルス対策と感情制御
4節 三次予防としてのメンタルヘルス対策と感情制御
5節 まとめと今後の課題
31章 感情労働と感情制御
1節 感情労働とは
1. 感情労働の定義/2. 感情労働に該当する職業とは
2節 感情労働理論を構成する主要な概念
1. 感情労働理論の特徴:労働を「演技」という視点から捉える/2. 演技以外の構成要素
3節 感情労働に伴う影響
1. ストレッサーとしての感情労働:感情労働によるネガティブな影響/2. 感情労働のポジティブな影響
4節 感情労働の態様や影響に対する先行・調整・媒介要因
1. 個人的要因/2. 環境的・社会的要因
5節 感情労働研究の課題
1. 構成概念の再検討の必要性/2. 感情労働のベネフィットの実証的検討/3. 感情労働に特化した具体的な対処方略の検討/4. 文化的な観点を踏まえた検討の必要性/5. 元来の感情労働理論の視点
Topics 19 接客業における感情労働
Topics 20 教師・保育士の感情労働
Topics 21 筆記開示法による怒りへの対処
付録:感情制御の測定尺度
文献
索引
おわりに