紹介
人間が営む「消費」という行為には,認知,感情,社会性といった様々な心理学的特性が反映されている。本巻では,知覚心理学や人格心理学,社会心理学などの心理学の各分野の研究成果,さらには経済学や脳科学などの他分野の知見を応用することで,消費者行動・心理のメカニズムに迫る。企業‐消費者間の新たな可能性も顧客エンゲージメントの観点から考察。
【主な目次】
第1章 消費者行動研究の意義と目的
第2章 消費者行動研究の方法論
第3章 消費者の購買意思決定過程
第4章 消費者への説得過程
第5章 消費者行動の規定要因1:個人差要因
第6章 消費者行動の規定要因2:状況要因
第7章 消費者行動の規定要因3:社会的影響
第8章 消費者問題と消費者保護
第9章 消費者行動の新展開1:消費者行動研究における行動経済学的アプローチと生体情報活用
第10章 消費者行動の新展開2:顧客エンゲージメント―企業と顧客との関係性における新たな視点
目次
産業・組織心理学会設立35周年記念講座 刊行の言葉
編集委員一覧
はじめに
第5巻の発刊に寄せて「私と消費者行動」
●第1章 消費者行動研究の意義と目的
第1節 消費者行動研究の意義
1.消費生活の向上
2.企業活動の推進
3.社会経済の繁栄
第2節 マーケティングとの関連性
1.マーケティングとは
2.マーケティングにおける「4P」戦略
第3節 消費者行動の規定要因とマーケティングへの応用
1.心理的要因
2.個人特性
3.対人的・社会的要因
4.状況的・物理的環境要因
第4節 消費者行動における心理学的アプローチが果たす意義
●第2章 消費者行動研究の方法論
第1節 マルチディシプリナリーな消費者行動研究
第2節 従来型の消費者行動研究のアプローチ
1.心理学的アプローチ
2.心理学的アプローチによるデータ収集
3.解釈主義的アプローチ
4.解釈的アプローチのデータ収集法
5.購買時点の行動分析
第3節 ビッグデータの活用へ
第4節 ソーシャルメディアデータ活用の注意すべき点
第5節 個人情報の保護
●第3章 消費者の購買意思決定過程
第1節 購買行動の意思決定モデル
1.ハワード・シェスモデル
2.消費者意思決定モデル
3.多属性態度モデル
4.二重過程理論
第2節 よい意思決定をするために考慮すべき要因
1.意思決定方略(効用最大化,満足化,多重制約充足)
2.プロスペクト理論
3.後悔最小化
第3節 相互作用を伴う消費者行動
●第4章 消費者への説得過程
第1節 説得コミュニケーションが態度に及ぼす影響
1.説得コミュニケーション
2.説得コミュニケーションの処理過程
3.説得に対する抵抗
第2節 態度と行動
1.態度が行動に与える影響
2.行動が態度に与える影響
第3節 要請の技法
1.単純な手がかりの影響
2.連続した働きかけの影響
3.一体感の原理
●第5章 消費者行動の規定要因1:個人差要因
第1節 消費者行動に影響を与える要因
1.消費者行動における個人差
2.個人要因と環境要因
第2節 マーケット・セグメンテーション
1.地理的変数(ジオグラフィック変数)
2.人口動態変数(デモグラフィック変数)
3.心理的変数(サイコグラフィック変数)
4.行動変数
第3節 パーソナリティと消費者行動
1.消費者行動の基盤となる動機づけの個人差
2.サティスファイサー/マキシマイザーと消費者行動
3.セルフ・モニタリングと消費者行動
4.独自性欲求と消費者行動
5.ブランド・パーソナリティ
第4節 ライフスタイルと消費者行動
1.AIOアプローチ
2.VALS
●第6章 消費者行動の規定要因2:状況要因
第1節 店舗内購買行動における状況要因の重要性
1.消費者の非計画購買と計画購買の分類
2.店舗内購買行動の現状
第2節 パッケージがもたらす効果
1.商品画像の有無と位置
2.パッケージの形状
3.パッケージの色
第3節 陳列やレイアウトがもたらす効果
1.陳列位置が非計画購買に及ぼす影響
2.全体的なレイアウト
第4節 価格に関する店頭での戦略
1.端数価格
2.セール表示
第5節 店舗の雰囲気
1.店舗内での香り
2.店舗内での音楽
3.店舗内の色
第6節 多数の選択肢の中でのブランド選択
1.ブランド選択における文脈効果
2.選択のオーバーロード現象
●第7章 消費者行動の規定要因3:社会的影響
第1節 購買行動における対人的影響:クチコミの影響力
1.クチコミの影響過程
2.クチコミの影響力
第2節 社会の中の「自己」と購買行動:個人の社会動機とアイデンティティ
1.消費の外部性
2.社会の中の「自己」と消費行動
第3節 社会集団の影響と消費者行動:準拠集団と社会的アイデンティティ
1.準拠集団とは
2.準拠集団の影響過程
3.準拠集団の影響力
●第8章 消費者問題と消費者保護
第1節 消費者問題の変遷と消費者保護の歩み
1.消費者問題の発生
2.消費者問題の変遷と消費者政策
第2節 悪質商法と欺瞞的説得
1.悪質商法の現状
2.悪質商法に騙される心理
3.欺瞞的説得と消費者問題
第3節 社会問題としての苦情
1.苦情増加の社会的背景
2.苦情行動の心理的背景
3.苦情行動の規定因
第4節 より良い消費社会の構築に向けて
●第9章 消費者行動の新展開1:消費者行動研究における行動経済学的アプローチと生体情報活用
第1節 行動経済学と消費者行動研究
1.行動分析学領域の行動経済学
2.行動意思決定論からの行動経済学
3.消費者行動研究と行動経済学
第2節 神経経済学とニューロマーケティング
1.神経経済学とニューロマーケティングとその方法論
2.神経経済学とニューロマーケティングの初期の研究
第3節 消費者行動の脳機能画像研究
1.プロスペクト理論における参照点とフレーミングに関する知見
2.プロスペクト理論におけるリスクや不確実性に対する処理に関する知見
3.プロスペクト理論における価値関数に関する知見
第4節 眼球運動測定を用いた消費者行動研究
1.眼球運動の基礎
2.眼球運動測定装置
3.商品選択における眼球運動測定
4.結論
●第10章 消費者行動の新展開2:顧客エンゲージメント―企業と顧客との関係性における新たな視点
第1節 企業と顧客との関係性の変遷と顧客エンゲージメント
第2節 顧客エンゲージメント概念の登場の背景
第3節 顧客エンゲージメントの概念規定と対象範囲
1.社会的関係行動としての顧客エンゲージメント
2.顧客エンゲージメント概念の範囲
3.顧客エンゲージメントを捉える重要な視点
第4節 顧客エンゲージメントの類似概念との異同
第5節 今後の課題
文 献
索 引
前書きなど
【第5巻:執筆者一覧】(執筆順)
金井 篤子 名古屋大学大学院発達科学研究科 刊行の言葉
永野 光朗 京都橘大学健康科学部心理学科 はじめに,*編者
杉本 徹雄 上智大学経済学部 第5巻の発刊に寄せて
花尾 由香里 東京富士大学経営学部 第1章
新井 範子 上智大学経済学部 第2章
上市 秀雄 筑波大学システム情報系 第3章
田中 知恵 明治学院大学心理学部 第4章
鎌田 晶子 文教大学人間科学部 第5章
前田 洋光 京都橘大学健康科学部 第6章
杉谷 陽子 上智大学経済学部 第7章
池内 裕美 関西大学社会学部 第8章
竹村 和久 早稲田大学文学学術院 第9章
西原 彰宏 亜細亜大学経営学部 第10章