紹介
総合的な視点から検討・分析しつつ「これからの道徳教育」を提言。
学会の総力を結集して検討した、今後の道徳教育の道案内になる教育全集が刊行。
教育の先導役を果たす道徳教育。
第1巻では、本質的な部分の基本的な道徳教育の変遷・展開・展望を押さえる。
第Ⅰ部 近代日本の道徳教育の変遷、第Ⅱ部 新たな道徳教育像の探究、第Ⅲ部 現代の教育課題と道徳教育、第Ⅳ部 日本の伝統的な思想と道徳、の4部構成。
【執筆者】*押谷由夫、*貝塚茂樹、高橋文博、江島顕一、行安茂、水野雄司、山田恵吾、山田真由美、足立佳奈、髙宮正貴、加藤宣行、*毛内嘉威、古川雄嗣、走井洋一、藤井基貴、川久保剛、小谷由美、秋山博正、小池孝範、大杉住子、*高島元洋、大久保紀子、頼住光子、斎藤真希、大持ほのか、德重公美、清水真裕、小濵聖子、森上優子、鈴木朋子、荒木夏乃、衛藤吉則、水野友晴、廣川正昭、緒賀正浩(執筆順、*は編者)
目次
刊行のことば
はじめに
第Ⅰ部 近代日本の道徳教育の変遷
―概要 近代日本の道徳教育の変遷
第1章 明治期における道徳教育
第1節 明治維新から「教育勅語」発布に至るまで
1「学制」発布以前 /2 「学制」の発令 /3 「教育令」から「改正教育令」へ /4「徳育論争」 /5 森有礼の文教政策
第2節 「教育勅語」発布以降の修身とその教科書
1 「教育勅語」の発布 /2 小学校令の改正と修身 /3 国定教科書制度の成立 /4 明治後期の検定・国定修身教科書
第2章 大正・昭和前期における道徳教育
第1節 大正期の修身教育と自由主義
1 明治後期から大正初期にかけての修身教育 /2 デューイの来日とその影響 /3 大正期の自由主義と「八大教育主張」 /4 大正期の修身教育と川井訓導事件 /5 川井訓導の修身授業と休職処分
第2節 昭和前期の修身教育と国家主義の台頭
1 昭和前期の時代と国家主義の教育 /2 1931(昭和6)年度の修身教科書とその内容 /3 1942(昭和17)年度の修身教科書とその内容
第3章 戦後教育改革期における道徳教育改革の展開
第1節 占領下の道徳と教育政策
1 道徳的意力と道義国家 /2 新日本建設の教育方針と四大教育指令 /3 修身の停止と公民教育構想
第2節 教育勅語と教育基本法の制定
1 教育勅語の意義 /2 教育基本法の制定 /3 教育勅語の失効
第3節 天野貞祐と「逆コース」
第4章 「道徳の時間」特設の過程とその意義
第1節 「道徳の時間」特設の概要
第2節 文部省における「道徳の時間」特設案―「道徳教育強化方策案」の策定―
第3節 教育課程審議会における審議経過
第4節 「道徳の時間」の内容と方法
第5節 「道徳の時間」の実施
第6節 「道徳の時間」特設をめぐる論争
第5章 「期待される人間像」と臨時教育審議会
第1節 「期待される人間像」の諮問と審議
第2節 「期待される人間像」に示された人間像
1 「期待される人間像」の全体像 /2 日本人に期待される諸徳性 /3 「期待される人間像」の評価と今後の検討課題
第3節 臨時教育審議会の設置と基本方針
1 臨時教育審議会の設置 /2 審議の基本理念
第4節 徳育の充実とその方向性
1 「ひろい心」の育成 /2 道徳教育の方針 /3 臨時教育審議会の評価と今後の検討課題
第6章 道徳の時間の確立・展開・模索
第1節 「道徳の時間」の確立
1 1958(昭和33)年学習指導要領における「道徳の時間」 /2 全面主義の理念継承と戦後の新たな視点 /3 初期の「道徳の時間」の授業典型例
第2節 「道徳の時間」の展開
1 道徳資料充実方策 /2 1968・69(昭和43・44)年および1977(昭和52)年学習指導要領 /3 1989(平成元)年学習指導要領
第3節 「道徳の時間」の模索
1 各種授業論の提起 /2 「道徳の時間」の対峙する課題
第Ⅱ部 新たな道徳教育像の探究
―概要 新たな道徳教育像の探究
第7章 「特別の教科 道徳」設立までの道のり
第1節 終戦後の学校教育と道徳教育の押さえ
1 日本国憲法と教育基本法において /2 学校教育法において /3 学習指導要領一般編(試案)において /4 学習指導要領社会科(試案)において /5 終戦後の道徳教育への期待と課題
第2節 道徳教育の目標と内容についての検討
1 1955(昭和30)年改訂の小学校学習指導要領社会科編において /2 1958(昭和33)年改訂の学習指導要領において /3 1989(平成元)年に改訂された学習指導要領において /4 2015(平成27)年に一部改正された学習指導要領において
第3節 道徳の教材について
1 道徳の時間が設置されて以降 /2 1989(平成元)年以降
第4節 道徳の指導方法と評価
1 道徳教育指導方法の解説書 /2 テーマごとの指導資料の刊行や「道徳教育アーカイブ」の発信 /3 道徳教育推進指定校の委嘱や道徳教育指導者養成講座の実施 /4 道徳教育の評価について
第5節 「特別の教科 道徳」が目指すものとこれからの課題
第8章 「特別の教科 道徳」の成立とその意義
第1節 教育再生実行会議の提言と道徳の教科化
1 戦後における教科化をめぐる論議 /2 道徳教育の充実に関する懇談会の「報告」
第2節 中央教育審議会答申と専門家会議の議論
1 中央教育審議会答申「道徳に係る教育課程の改善等について」 /2 専門家会議の「報告」と道徳科の評価 /3 「特別の教科 道徳」の教科書検定基準 /4 「特別の教科 道徳」と「主体的・対話的で深い学び」
第3節 「特別の教科 道徳」の歴史的意義
第9章 「特別の教科 道徳」における教科書と教材
第1節 道徳科の教材をどのように活用すべきか
第2節 道徳科の教材の活用方法の3類型
第3節 価値理解を深める教材活用の方法
1 行為・解決策と価値理解の区別 /2 多面的な価値理解を促す教材づくりへ
第10章 「特別の教科 道徳」を要に豊かな自己形成を図る
第1節 よりよく生きようとする子どもたち
第2節 要としての道徳授業
第3節 自己生成を図る主体としての子ども
第4節 授業の実際と授業後の子どもたちの活動
1 授業後の取組により,授業理解を促進させた事例 /2 授業をきっかけにして,前後の意識を変容させた事例 /3 授業を契機に日常生活に影響をうけ,変容させた事例
第5節 授業で何をすべきか
第6節 道徳ノートの意義
1 道徳ノートの意義と活用方法 /2 道徳ノートの実際
第11章 「チーム学校」で取り組む道徳教育
第1節 道徳教育の位置づけ
1 道徳性の育成と道徳教育 /2 校長方針の明確化 /3 道徳教育推進教師を中心とした全教師による協力体制の整備 /4 道徳教育の全体計画と別葉 /5 道徳科の年間指導計画 /6 道徳教育の指導計画の評価と改善
第2節 道徳授業の指導と評価の一体化
1 チーム学校としての指導と評価 /2 指導と評価に基づく授業づくり /3 道徳授業のPDCA サイクル
第3節 総合単元的道徳学習の工夫
1 総合単元的道徳学習とは /2 総合単元的道徳学習による道徳教育の展開
第Ⅲ部 現代の教育課題と道徳教育
―概要 現代の教育課題と道徳教育
第12章 グローバル・共生社会と道徳教育
第1節 なぜ「多文化共生」なのか
第2節 世界市民主義
第3節 多文化主義
第4節 リベラル・ナショナリズム
第5節 道徳教育の課題
第13章 AI 社会と道徳教育
第1節 情報化社会への歩み
1 問題の所在―AI 社会と道徳教育 /2 情報化への期待―「第三の波」という社会革新 /3 情報化社会におけるアーキテクチャ―新たな支配
第2節 情報化社会の今後
1 政策課題としてのSociety5.0 /2 AI というアーキテクチャ /3 自己の変容―シェアされる自己
第3節 AI 社会と道徳教育
1 社会創造としての道徳教育 /2 AI 社会と道徳教育
第14章 防災・環境問題と道徳教育
第1節 防災・環境問題の実践例とその課題
1 現代的課題としての防災・環境教育 /2 従来の取組の課題 /3 新たな教材開発に向けて
第2節 これからの防災・環境問題の「見方・考え方」と道徳科の役割
1 考える防災 /2 リスク教育としての防災・環境教育 /3 ナショナル・ミニマムとしての防災・環境教育 /4 人間科学としての防災・環境教育
第3節 防災・環境を題材とした授業実践例
1 防災・環境を題材とした授業実践:「南海トラフ地震臨時情報」 /2 道徳教育の一環としての防災・環境教育
第15章 公共性と道徳教育
第1節 〈協力の仕方〉としての道徳
1 倫理・道徳とは何か /2 公共教育と道徳教育
第2節 〈協力の仕方〉を主題とする道徳教育
1 道徳における不変と可変 /2 「道徳の本質」とその「実現の仕方」を学ぶ
第3節 多層的な公共体における〈協力の仕方〉
1 多次元的な「自己―他者―公共世界」観 /2 国家公共体における〈協力の仕方〉
第16章 人権と道徳教育
第1節 人権への取組と人権教育
1 「人権教育のための国連10 年」と日本の取組 /2 道徳教育と人権教育
第2節 人権思想
1 近代における人権思想の展開 /2 人権思想と自然法
第3節 人権思想を生かした道徳教育のために
第17章 平和社会と道徳教育
第1節 平和社会の基盤としての共生体
第2節 暴力の不在としての平和
第3節 平和社会の実現を妨げるもの
第4節 道徳教育の実績と可能性
第18章 宗教と道徳教育
第1節 宗教と道徳,教育の関係について―歴史的視点から―
第2節 日本における道徳教育と宗教教育
第3節 道徳教育における宗教教育の可能性と限界について
第19章 ESD,SDGs と道徳教育
第1節 ESD,SDGs と学習指導要領
1 SDGs とは何か /2 ESD とは何か /3 学習指導要領との関係
第2節 「考え,議論する道徳」とSDGs
1 道徳教育の充実とSDGs /2 道徳科の内容項目と,持続可能な社会づくりを捉える概念 /3 経済,社会,環境の調和と道徳的価値に関わる葛藤
第3節 「社会に開かれた教育課程」の実現とSDGs
第Ⅳ部 日本の伝統的な思想と道徳
―概要 日本の伝統的な思想と道徳
1 義務教育(道徳教育)と高等学校(公民・倫理) /2 道徳教育と倫理学 /3 和辻倫理学 /4 伝統・文化(神道・仏教・儒教な
ど)と西洋近代思想
第20章 古代における道徳教育の原理
第1節 古代の人びとの世界観
1 原始的心性 /2 『万葉集』にみる世界と人との関係 /3 超越的な力との関係
第2節 「清明心」
1 透きとおった明るさ /2 明るさと暗さ /3 清らかさと穢れ
第3節 「清明心」の特質
1 受動的な態度 /2 純粋さ
第21章 中世における道徳教育の原理
第1節 中世仏教にみる道徳教育の原理
1 中世仏教にみる道徳教育の原理―「禅」の思想を手がかりとして
1 仏教の基本道徳としての「慈悲」 /2 仏教道徳の基底としての「空―縁起」―『正法眼蔵』「現成公案」巻
2 法然の浄土思想
1 仏教の特徴 /2 浄土思想 /3 法然における念仏
第2節 中世芸道にみる道徳教育の原理
1 芸道の始まり /2 芸道における特色 /3 芸道と道徳教育
第22章 近世における道徳教育
第1節 近世儒教にみる道徳教育の原理
1 日本朱子学
1 藤原惺窩 /2 林羅山 /3 山崎闇斎
2 古学
1 伊藤仁斎 /2 荻生徂徠
3 そのほか特筆すべき思想家・教育家
1 中江藤樹 /2 貝原益軒 /3 吉田松陰
第2節 近世庶民思想にみる道徳教育の原理
1 近世庶民の生活と思想 /2 石田梅岩と石門心学 /3 近世仏教と庶民道徳
第3節 近世近代の武士道にみる道徳教育の原理
1 武士の精神―近世以前 /2 近世における士道と武士道 /3 近代と武士道 /4 新渡戸稲造の『武士道』
第4節 近代の宗教と道徳:仏教,キリスト教
1 明治時代の仏教と道徳 /2 田中智学と井上円了の忠孝論 /3 清沢満之の真俗二諦論 /4 明治時代とキリスト教の受容 /5 女子教育への貢献 /6 キリスト教と国家主義―内村鑑三不敬事件―
附 章
1 近代の道徳教育を創った人びと
第1節 福沢諭吉,西村茂樹,和辻哲郎
1 福沢諭吉 /2 西村茂樹 /3 和辻哲郎
第2節 西晋一郎における道徳教育の理論と実践
1 戦前を代表する倫理学者・西晋一郎 /2 広島高等師範学校による教育 /3 西理論の構造と学問的スタンス
第3節 西田幾多郎
1 『善の研究』の道徳論の概要 /2 『善の研究』の道徳論が有する意義
2 戦後の道徳教育を創ってきた人びと
1 戦後道徳教育を方向づけた指導者 /2 日本道徳教育学会を設立し推進した指導者 /3 関西道徳教育研究会を設立し,推進した指導者 /4 行政の立場から道徳教育を研究し,その実践を推進した指導者
3 道徳教育史 略年表
おわりに
人名索引
事項索引