目次
序章 バブル政治を生み出したメディア──二つのバブルが危機を生む
時代が大きく転換する分水嶺の年/被害を拡大させるバブルの長期化/米国の金融危機は終わっていない/今回の不況は長期化する可能性が高い/バブル政治が三年以上も続いてきた/政治バブルを再現しようとしたが……/政策よりも磐石の政治基盤を/バブル政治の責任はメディアにも
第1章 時代を左右するメディア
1 選挙を左右するワイドショー―メディア・リテラシーの視点で
政党支持基盤の流動化/「自民党をぶっ壊す」というマジック/メディア戦略が勝敗を決する/ブッシュのように二者択一を迫る/ワイドショー政治の功罪/視聴率圧力と政治的バランス/デマの伝播と同様の経路/メディア・リテラシーの必要性
2 時代のヒーローとメディア──メディアや政権に責任はないのか
ライブドア現象が与えた影響/耐震偽装事件の背景と重なる/拡大の源泉はバブル的錬金術/ホリエモンは小泉改革の鏡?/スケープゴートにされた郵政労働者/小泉構造改革の犠牲者は誰か/経済格差拡大の悪影響
3 時代の空気をつくるメディア報道──権力・メディア複合体にならないように
メディアを制する者が選挙を/記者クラブ制度を改めるべきとき/情報操作を受けやすい体質・システム/「第四の権力」から「権力の僕」へ?/時代の空気を創る「悪玉叩き報道」/二重基準になっていないか/「情報という餌」は魔力である
4 今日のメディア・権力・市民──三者の関係性を再考すべきとき
テレビ離れ、新聞離れが進行/メディア・権力・市民の三すくみ状況/癒着・アンド・アンバランスになっていないか/日本独特の記者クラブ制度/大衆迎合的メディアを支持する市民/戦争賛美の社会状況がメディアを加速させた/権力チェックから権力関与になっていないか/経済的圧力がメディアを歪めていないか/司法判断に誤った影響を与えないか
第2章 メディアの不祥事と問題放送
1 前代未聞の差別放送──視聴率アップのために部落差別を利用していないか
前代未聞の差別放送/差別放送の具体的内容/関係者の謝罪放送/部落差別を利用していないか/被差別部落出身と断言してよいか/差別意識状況を認識しながら/タブー視と差別意識
2 看過できないテレビ報道──近年の毎日放送・報道番組を見て
近年の報道を視聴して/部落解放同盟を殊更に強調していないか/特定政党の宣伝に利用されていないか/視聴者に誤った認識を与えないか/法人側のどこに問題があるのか/なぜ解放同盟の肩書を報道したのか/二倍の補助金という表現に問題はないか/毎日放送一般基準等が遵守されているか
3 BRCのヒヤリングを体験して──毎日放送の問題点は指摘したが
三つの委員会を内部にもつBRC/聴いていない委員には驚いた/審査対象にする基準を明確に/センセーショナルな報道も不適切と/テレビ局の局による局のための機関か?/
真に弱者救済の組織にはなっていない/真に独立したメディア評議会の創設を
4 メディアとインサイダー取引──質的に異なる重大さをもつ
真摯なNHK記者は嘆いている/不当に一般化してはいけない/きわめて重大な事件である/メディア全体に大きな打撃/立場を悪用した公務員犯罪と同様/徹底した調査が求められる/すべてのメディア企業が教訓化すべき/教育とシステムの両方から取り組め/システムだけで防止はできない/現状の正確な把握が大前提
第3章 メディアと近年の部落問題報道
1 不祥事報道とメディア──マスコミ報道に問題はないか
信頼を取り戻すために/「エセ行為」への取り組み/人びとの支持が存立の基盤/人権機関は社会の病を治す機関/人びとの努力を水泡に帰さないために/マスコミ報道を検証する
2 メディアと初期報道──初期報道に問題はないか
メディア報道に多くの疑問を抱く/集団過熱報道ではないのか/コメントも正確に掲載されない/初期報道に大きな問題/「悪」「闇」「腐敗」のレッテル貼り/メディアの部落問題認識を聞きたい/同和行政の必要性・内容を明らかに/部落差別撤廃に向けたメディアの役割は?
3 メディア報道と不当な一般化──同和行政の評価が歪められていないか
部落差別が現存するかぎり/基本的な認識すらない記者/時代の雰囲気だけで報道していないか/メディアが権力化していないか/思い込みで取材していないか/見出しを鵜呑みにする読者/一方的な視点での見出しや記事/不当な一般化を防ぐのもメディアの課題
4 ひとつの言葉・単語のもつ重み──「事実上の同和対策事業」とは何なのか
決定的な重要性をもつ単語/「従軍慰安婦」と「性奴隷制」/事実上の同和対策事業ではない/取り組みを大きく後退させる/事実上と報道した根拠は?/なぜ急に同和対策事業になったのか/発表報道よりも調査報道を/無関心メディアにならず差別の現実報道を
第4章 地方自治体における劇場型政治と小泉手法
1 財政再建が財政を悪化させないために──経済効率最優先が長期的不経済を生む
クローズアップされた「涙の答弁」/正当な意見表明ができなくなる/後期高齢者医療制度のようにならないために/正しい財政再建が誤った再建になるとき/ビジョンなき改革はただの削減になる/長期的な視点を堅持しスピードを/誤った改革は将来の世代にも泥をかぶせる/多面的な視点で財政再建を
2 「拒否権」は時に絶大な権力となるが……──橋下大阪府知事へのメッセージ
生活保護の申請すら受け付けられず/長期的視点で禍根を残さないように/破壊は簡単でも創造は長期を必要とする/判断基準とビジョンを明確に/知事の権限は大きく制限されている/「拒否権」という壁は政策創造の力にならない/これまで積み上げてきた基盤を大切に/府民の府民による府民のための大阪府政を
3 大阪府は「破産企業」ではない──人材悪化スパイラルを防げ
限度を超えた賃金カットは問題を残す/被害を受けるのは国民・市民/ダブルスタンダードは間違っている/破産企業というレッテル貼りはよくない/給与カットは評価・誇りのカットにも/正当な評価と報酬がなくては人は育たない/財政再建は多面的・長期的な視点で
4 朝日新聞がなくなれば世の中のためになるか──理解に苦しむ橋下知事の発言
橋下氏に八〇〇万円の支払いを命じた/「弁護士資格の返上」まで論じるのは?/自衛隊の対局は朝日新聞か/橋下知事にもイマジネーションを/メディアで働く記者にも想像力を/朝日新聞のコメントにも驚いた/テレビ報道のあり方にも問題
補章 政治の根幹が問われている──危うい文民統制と究極の愚策
政府の無能ぶりが露呈/危険な時代の兆候を感じる/過去に目を閉ざす人は/自由の敵に自由を与えることで/日本の未来を左右する問題/バラマキで景気浮揚はできない/景気浮揚策ではなく地方負担策/セーフティーネットの強化を/雇用創出につながる政策を
あとがき