紹介
2022年10月に惜しまれながらこの世を去った科学人類学者/哲学者ブリュノ・ラトゥール。死の前年には、これまでの功績をたたえ、第36回(2021年)京都賞(思想・芸術部門)が贈られた。自然・文化という二項対立的・二元論的な「近代」のあり方を問い直すその知的探究は、実験室内の生活を事細かに描いた民族誌的記述に端を発し、エコロジー、法律、現代性、政治性、宗教、科学と技術など、さまざまな知の領域へと展開していった。本書は、最晩年のラトゥールが、ARTE Franceの取材に応じて制作された対談動画に基づいて編まれ、死後、フランス本国で刊行された。
本書掲載のインタビューでは、ラトゥールは多岐にわたる自らの仕事を振り返り、生涯を通じて問い続けたその哲学の全貌を丁寧に解説していく。ブリュノ・ラトゥール自身による、ラトゥール哲学の最良の入門書。
「ラトゥールの思想は一つの哲学として成立している。このことは間違いない」(訳者解題より)
「私が自分が社会学者であるのか哲学者であるのか決して分からないことの理由は、社会性を理解するために、私が複数の存在様式に関心を向けるからです。そして、その同じ理由によって、私はやはり本当に哲学者なのです。もし私が複数の存在様式について思考することのできる哲学者でなければ、私は社会性を理解することができません。」(本書より)
目次
凡 例
序 文 ――ニコラ・トリュオングによる
1 世界の変更
2 近代性の終焉
3 ガイアの督促
4 どこに着地すべきか
5 新たなエコロジー階級
6 共同的な仕組みを作り出す
7 宗教的なものの真理
8 作られている通りの科学
9 存在様式
10 政治の円環
11 哲学は本当に美しい
12 リロへの手紙
謝 辞
訳者解題