紹介
空間が荒廃している・・・
本書は3.11以前に書かれた文章を基にしていますが、しかし、今まさに我々の目の前に広がる状況を予言したような書物となりました。本書があらかじめ掲げていたテーマは、「空間の〈均質化〉の時代が終わり、より過酷な空間の〈荒廃化〉の時代に差し掛かった今日、私たちはいかにして自らの生活空間を取り戻すことができるのか?」というものでした。グローバリゼーションの発展以降、その負の遺産として、世界的に「スラム」と呼ばれるような場所が急増しています。日本でも、震災以前から、所々にそれに似た様相が現れていましたが、このたびの未曾有の出来事と共に、この問いがより過酷かつ切迫したものとして我々の目の前に突き付けられました。今後、放射線物質の漏洩事件の余波のもとで、さらによりアクチュアリティを増すであろう、「われわれの生活空間をいかに取り戻すのか」という難問に、気鋭の若手理論家が、新時代の〈思想〉の創造のために挑みます。
目次
はじめに
序章 生活世界の荒廃
第一章 空間と領土性
第二章 空間の質感
第三章 再領土化の諸問題
第四章 流動と停止
第五章 壁
第六章 虚構と想像
第七章 来るべきスラム化に備えて
第八章 空間的想像力の奪還
終章 黄金時代に秘められた地獄
あとがき