目次
第一章 夢・希望・幸福
希望を叶える魔法の杖
夢――「人生をたかが」から「されど」にする道具
人は「真実であって欲しい」と願うことを信じる
他人のことを第一にすると幸福になる
不完全な頭脳で正しいことを求める不幸
今日一日生きられればそれで幸福
「気軽に行こう!」――ずぶ濡れの幸福
私の生涯の言葉となった、バスケットボール選手のひと言
「献身」すれば幸福は向こうから来てくれる
第二章 仕事・お金
「水が低きに流れる如く」――何も考えずに動く
幻の疲労感――人間は疲れない
35歳脳死説――努力は出世のためでなく
節約と消費――国家のお金と家計のお金は分けて考える
心を持たない人間が大好きな言葉「コストパフォーマンス」
コツコツ貯めたお金で遊んでも楽しくない理由
中村修二氏の8億円――科学者にとっての「正当な報酬」とは
第三章 人生・人間関係
忙しい割に儲からない状態が一番
行為そのものを目的にすると「失敗」がなくなる
人生は「柿泥棒」だ
「昨日は晴れ、今日も朝」
人を動かすのは意志の力ではなく、後押しの力
頭で考えたことは間違っている
結婚――「男女の愛」を「家族の愛」に変える
世代間ギャップの真相
男の性欲は「幻想」である
人は不幸になりたがる癖がある
他人に勝とうとするから挫折する
第四章 社会
「空気を読む」が道徳となった社会
勝てば官軍――力で勝った方が「正義」とされるアメリカ的発想
憂鬱な八月――WGIP(ウォー・ギルド・インフォメーション・プログラム)の残像
四日市と水俣――市民運動が引き起こす悲劇
「世に盗人の種は尽きまじ」人間の本質をついた石川五右衛門
2000年間戦争をしなかった民族
第五章 人間・日本人
人間の頭脳が「良い」と考えた方向に行けば人は滅びる!?
努力は欲を強め、欲は絶望を招く
なぜ日本人は「河童」が大好きなのか
小説が死んでいるのは私達が死んでいるから
行列に見る「個人と社会」の考え方の違い
現代の教育は人間を野獣にする
法治国家は原始的国家である――法律に勝る日本の「駅伝精神」
「してはいけないことはしない」――世界に誇るべき日本人の倫理観
前書きなど
はじめに
誰もが悩みを持っている。それは人間として当然のように思うけれど、奇妙だ。何かの原因で不幸のどん底に陥ったりしているのであれば悩みもあるだろうが、凍死もしない、飢え死ぬおそれもない。それでいて悩みに悩む。どうしてだろうか?
37億年前にこの地球上に生命というものが誕生して以来、生物の行動や判断はほぼすべてDNAという遺伝子が担っていた。その遺伝子は親から譲り受けたものだから、親が「アイツは敵だ」とDNAで教えたら、相手がどんなに親切にしてくれても、愛してくれても、自分は相手を憎むしかできない。敵だからだ。
ところが私たち人間はDNAを1000倍も上回る「頭脳情報」というものを持っていて、こちらは後天性だから、親がDNAで教えてくれても、相手が親切にしてくれればうっかり信用してしまう。頭脳はやっかいだ。そして、DNAが「アイツは敵」と教えてくれても、もう一度「敵か味方か」を考え込まなければならない。だから大脳が発達している人間だけが深い悩みに沈むことがある。
つまり、「悩みを持つ」というのは「人間である」という証拠でもあるのだが、それは現代の人間、つまり我々だけのような気もする。動物の種というのは特殊な例を除き、せいぜい数千万年ぐらいで絶滅するので、数千万年後には「人類の次の頭脳動物」が誕生するだろう。その時には、今、私たちを悩ませている欲望、挫折、嫉妬などを適切に処理できる頭脳を持っているだろうが、私たちの人生はせいぜい100年程度なのでそれまで待つことはできない。
でも、よい方法がある。私たちが悩む原因は「頭脳の情報を書き換える」ことができるからなので、それを逆手にとって「悩まない方法」を脳にインプットすれば、数千万年の時を超えて、一気に悩みがない新しい人生の仲間入りができるのだ。
紀元前、人類が「鉄の鍬」を発見して食糧の生産量を飛躍的に伸ばすことができるようになって以来、宗教家、哲学者などを輩出して、「悩みの解決方法」を探ってきた。しかし人間の悩みは時代ともに、また社会とともに大きく変化するので紀元前に編み出された素晴らしい教えも残念ながらそのままでは現代の私たちの役には立たない。翻訳が必要なのだ。
この本は日本人が大脳の情報を書き換えて、悩みの多い人生を楽しくラクな人生に変えるための一つの方法を伝達するためにまとめられたものである。やがてこの本も時間が経てば古びてくるだろうけれど、現代の日本に生きる人、そしてさまざまな悩みを抱えている人に「科学」という武器を活用して、一つの回答を示そうとしたものである。