目次
巻頭言
第Ⅰ部 移行支援と生活保障
第1章 若者の生活保障と若者政策[宮本みち子]
1 若者期とは何か
2 若者政策とは何か
3 若者が権利の主体となるために――生きるために大切なこと
4 若者のシティズンシップと参画政策
5 おわりに――若者政策の課題
第2章 早期離学と進路保障[園山大祐]
1 フランスにおける若者のセーフティネットを参考に
2 教育内部における差異化が早期離学者を生み出す背景
3 フランスにみる若者を包摂する教育訓練制度の多様化
4 1989年教育基本法以降にみる一人ひとりの進路保障
5 再チャレンジの機会保障と省庁連携
6 すべての人に開かれた社会権と機会保障
第3章 若者の就労支援と労働施策[西岡正次]
1 若者支援と就労支援の経緯
2 就労支援施策と労働施策
3 就労支援のための仕事情報――福祉と労働の連携、そして基礎自治体の出番が問われる課題
4 新たな若者支援施策と就労支援、労働施策
第4章 若者と社会保障制度[矢野茂生]
1 若者をめぐる社会保障制度の「手薄さ」
2 「相談支援」の可能性と「地域」という基盤
3 届けるデザインと届くデザイン
第5章 若者の住まいと住宅政策[川田菜穂子]
1 若者を取り巻く日本の住宅システムの動向や課題
2 国際比較の視点から
3 困難を抱える若者たちの住まい
4 若者への住宅・居住支援のあり方
第Ⅱ部 移行と自立の保障
第6章 性とジェンダー[鈴木晶子]
1 若者支援施策黎明期のジェンダー意識
2 若年女性支援の始まりと発展
3 10代女性支援の登場と性被害問題
4 性とジェンダーに関わる若者支援の多様な課題
5 性とジェンダーから考える若者支援の今とこれから
第7章 親に頼れない若者の自立保障[早川悟司]
1 地域の子どもや家庭を地域で支える
2 施設退所後も含め安定した社会生活を支える
3 子どもの主体的意思を育み、表明を支える
4 「意見表明等支援」から「意思決定支援」へ
5 社会的養護から離脱した、あるいはつながらなかった子ども・若者への支援
第8章 結婚・家族形成と結婚支援事業[板本洋子]
1 農村の「嫁不足」の要因は少子化の予兆だった
2 全国に広がる結婚支援事業の苦悩と成果探し
3 若者と社会が求める「幸せな結婚」のズレは
Column 地方圏に暮らす若者[宮本みち子]
第Ⅲ部 意見表明と社会参画の権利
第9章 民主主義を語る若者政策・ユースワークへ――汎ヨーロッパの若者参画施策の経験から[両角達平]
1 子ども・若者の意見表明権保障のその先は何か
2 欧州評議会とEUの若者政策の違い
3 欧州若者政策の対象年齢
4 欧州における若者参画施策の萌芽
5 欧州若者政策における若者参画の考え方
6 今日の欧州の若者参画政策の実際
7 欧州若者政策の実践主体としての「ユースワーク」
8 欧州ユースワークの歴史研究プロジェクト
9 ユースワークの二つの型――「移行」と「フォーラム」
10 東欧社会にみるユースワークと民主主義
11 「民主主義の危機」の時代の若者政策とユースワーク
12 日本の若者参画施策への示唆
第10章 子ども政策と若者政策の連続性と固有性――こども基本法と子ども・若者育成支援推進法[野村武司]
1 「こども」と若者
2 「若者問題」の子どもの問題との連続性と固有性
3 若者問題と子ども・若者育成支援推進法
4 若者施策と地方自治
5 こども基本法と若者支援
第11章 若者の手で若者とコミュニティのために――「人づくり」×「まちづくり」を行うNPO法人SETの挑戦[三井俊介・岡田勝太]
1 学び舎を運営するSETの概要、そして学び舎の成り立ち
2 学び舎で行うこと
3 参加者の学び舎での様子と卒業時の状態
4 それぞれの道
5 彼らはなぜ残ったのか?
おわりに[宮本みち子]
資料
前書きなど
巻頭言
ついにわが国でも、子ども若者の権利を基盤としたこども政策、若者政策が展開されていく段階に入った。
2022(令和4)年6月、子どもの権利を位置づけた国内法であるこども基本法が成立し、2023年4月に施行された。
ここに至る道は長く、平坦ではなかった。子どもの権利条約(児童の権利条約)は、1989年国連総会において採択され、1990年に発効した。日本は1994年に批准している。
ここから2022年のこども基本法の成立に至るまで、およそ30年、子どもの権利条約批准の年に生まれた子どもたちが、成長し、社会を担う世代になるまでの時間を要した。この30年は、わが国の政治・行政をはじめとする大人たちが、子ども若者がおかれる厳しい実態を知り、改善に取り組む中で、子どもの権利の重要性を理解し、国内法に位置づける必要性を共通認識とするために要した時間でもあった。
こども基本法が存在する日本においては、子ども若者が自身の権利を知り、政策や実践の中で、子ども若者の最善の利益の実現や、子ども若者の意見表明や参画の権利などの諸権利を、着実に丁寧に実現していくことこそが、重要となる。
なによりも、子ども若者自身が、幸せな今を生き、成長していくために、大人たちは、子ども若者の声を聴き、声なき声にも寄り添い、対話を重ねながら、ともに進んでいかなければならない。
本シリーズは、子ども若者自身の権利を尊重した実践、子ども政策、若者政策をどのように進めるべきか、いま(現在)の状況を整理するとともに、これから(今後)の取り組みの充実を展望することを目的とする。
子ども若者の権利、こども基本法に込められた理念や願い、それらを子ども若者とどのように実現していくか、当事者、実践者、研究者や政治・行政のアクターによる論稿をまじえることで、日々の実践の中にあっても、子ども若者や関わる大人たちが「共通のビジョン」を持ちながら進んでいくための、手がかりとなれば幸いである。
保育・教育・福祉や司法、労働、医療等の分野で子ども若者と関わる大人たち、子ども若者自身など、子ども若者の権利をこの国・社会において実現するために、ともに道を進んでくださる方々に届くことが、編著者一同の願いである。