目次
序文[アンドレアス・シュライヒャー]
要旨
学習者と環境との相互作用
学習の科学:テクノロジーを用いた学習デザインとその活用
研究・教育実践・政策に対する意義:機会と課題
第1章 こころの発達と学習の科学:序論[スーシャン・リン/ソニア・グエリエロ/ダーク・ヴァン・ダム]
はじめに:何故、学習の科学なのか? 何故、今なのか?
第1節 本書の内容構成とその概観
第2節 本書の主要テーマと知見
第Ⅰ部:学習者と環境との相互作用
第2章 神経科学と教育:幼少期の脳の発達が学校教育に与える影響[パトリシア・K・クール/ナイヤ・フェルヤン・ラミレス]
はじめに
第1節 学習の科学の基礎:幼児は言語の天才である
第2節 学習の科学の基礎:幼児が言語を学ぶ方法
第3節 学習の科学の基礎:言語の導入
第4節 バイリンガル脳の科学
第5節 介入の科学:エビデンスに基づく実践を活用した早期の言語学習
第6節 政策的意義と子供の将来
第3章 固定観念が子供のSTEMアイデンティティと学習をどのように形作るか[アンドリュー・N・メルツォフ/ダリオ・クベンセク]
はじめに
第1節 概念的枠組みの確立
第2節 小学生の数学への固定観念と自己概念の発達
第3節 子供の数学への固定観念と自己概念に関する比較文化研究:シンガポール
第4節 何ができるのか? 心理科学と教育の架け橋
第4章 人種と教育:学習にとって人種と不平等はどのように重要か[ナイラ・スアド・ナシール]
はじめに
第1節 学校における人種的不平等
第2節 人種化された不平等な学習経路の経験的事例
第3節 人種化された不平等な学習経路に寄与するメカニズムと、それを解消するメカニズム
第4節 結論
第5節 政策的意義
第5章 不安と動機付け:生徒の数学と科学の成績における役割[クリストファー・S・ローゼック/スーザン・C・レヴィン/シアン・L・ベイロック]
はじめに
第1節 数学の成績への不安
第2節 動機付け
第3節 生徒の態度と成績における教師と親の役割
第4節 成績への不安を軽減し、動機付けを高めるための介入
第5節 今後の方向性
第6節 政策的意義
第6章 効果的な数の導入:認知科学からの教訓[ドミニク・J・ギブソン/タイラ・ベルコウィッツ/スーザン・C・レヴィン]
はじめに
第1節 子供への早期導入の役割
第2節 子供への介入の有効性
第3節 有効性の研究:統制された実験室での介入
第4節 有効性の研究:自然状態での介入
第5節 政策的意義
第7章 身振り:学習の科学を開く窓[エリザ・L・コングトン/ミリアム・A・ノヴァック/エリザベス・ウェイクフィールド/スーザン・ゴールディン=メドウ]
はじめに:問題の所在
第1節 身振りと学習
第2節 身振りの実験的操作
第3節 身振りのメカニズム
第4節 政策的意義
第Ⅱ部:テクノロジーを用いた学習
第8章 空間学習のためのテクノロジー[ケネス・D・フォーブズ/デヴィッド・ウータル]
はじめに:問題の所在
第1節 空間テクノロジー
第2節 スケッチの理解
第3節 地理情報システム
第4節 結論
第5節 政策的意義
第9章 共同注意と学習を結び付ける触媒としてのデジタルメディア[ブリジッド・バロン/アンバー・レヴィンソン]
はじめに
第1節 デジタルコンテンツとネットワーク機器の利用に関する地球規模の肖像
第2節 共同関与と学習のためのテクノロジーの効果的利用
第3節 政策的意義
第10章 幼児の科学学習支援のためのメディアとの計画的な共同関与[カーリン・ジョレンテ/サビータ・ムーシー/シメナ・ドミンゲス]
はじめに:問題の所在
第1節 早期の科学学習と教育メディア
第2節 早期の科学学習を支援することの可能性と課題
第3節 早期学習のための教育メディアと教育工学の活用
第4節 メディアとの計画的な共同関与の理論
第5節 DJEMアプローチによる教室での実演
第6節 テクノロジーと研究の意義
第7節 政策的意義
第11章 テクノロジーの社会的要素と社会的相互作用から見た学習[サンドラ・Y・オーキタ]
はじめに
第1節 学習と行動におけるテクノロジーの社会的要素
第2節 人間と「もの」との関係をデザインする
第3節 「教えることによる学び」の再帰的フィードバック
第4節 教育におけるロボットプログラミング
第5節 政策的意義
第12章 知的チューターを用いた基本的な実験計画の指導[デヴィッド・クラーア/ステファニー・サイラー]
はじめに
第1節 科学的探求への支援
第2節 TEDチューターの概要
第3節 政策的意義
第13章 大規模な実践的学習研究[ケネス・R・ケーディンガー]
はじめに
第1節 実践的な学習の科学の課題
第2節 評価を用いた学習の尺度化の応用
第3節 知識学習指導の枠組み
第4節 実践的な学習研究の尺度化
第5節 深層内容分析の尺度化
第6節 相互作用による講座改善の尺度化
第7節 政策的意義
第14章 野心的な学習実践の広がり[キャロリン・ペンシュタイン・ロゼ/シェリッシュ・クラーク/ローレン・レズニック]
はじめに
第1節 歴史的視点
第2節 協働学習のための技術的サポート
第3節 未来へ:大規模公開オンライン講座での協働の促進
第4節 結論と現在の方向性
第5節 政策的意義
第15章 音楽・認知・教育[アレクサンダー・カリル/ヴィクター・H・スミス/ジョン・イヴェルセン/ガブリエラ・ムサッチア/T・クリスチーナ・ザオ/アンドレア・A・チバ]
はじめに
第1節 教育の中の音楽
第2節 音楽のスキルは転移するのか?
第3節 音楽は世界共通の言語なのか?
第4節 音楽と社会文化的環境
第5節 音楽とSTEM教育
第6節 政策的意義
第16章 図形・積み木・パズル・折り紙:空間遊びからSTEM学習まで[タマラ・スピーワック・トーブ/ブライアン・N・ヴァーダイン/ロバータ・ミシュニック・ゴリンコフ/キャシー・ハーシュ=パセック]
はじめに
第1節 空間能力とSTEM
第2節 空間学習の改善
第3節 有望な教育法としての遊びながらの学習
第4節 今後の方向性
第5節 結論:空間遊びの利点の最大化
第6節 政策的意義
第17章 インフォーマルなSTEM学習環境:研究と実践の協力関係[ニコル・A・スアレス/マリーン・サマノ/シューイン・ユ/スティーブン・スナイダー/リアン・チュコスキー]
はじめに
第1節 インフォーマルな学習環境の重要性
第2節 研究と実践の協力関係モデル
第3節 サイエンスセンターの外でのSTEM学習
第4節 研究と実践の協力関係におけるフィードバックループ
第5節 研究と実践の協力関係をさらに進めるには何が必要か
第6節 政策的意義
第18章 学習の科学が科学的能力の評価をどのように変えているか[バーバラ・ミーンズ/ブリート・ホーガン・チェン/クリストファー・J・ハリス]
はじめに
第1節 テスト実施の起源
第2節 科学の専門的知識の性質に関する学習の科学の視点
第3節 科学的能力を評価することの意義
第4節 テクノロジーの進歩の重要性
第5節 テクノロジーを基盤とした科学的能力の評価課題
第6節 学習と評価を支援するテクノロジーを基盤とした学習環境
第7節 大規模試験と評価システムの意義
第8節 残された課題
第9節 新しい機会
第10節 政策的意義
第Ⅲ部:学習の科学におけるグローバルな展開:国際的な視点
第19章 香港大学における学習の科学に関する戦略的研究テーマ[ナンシー・ロウ/カイ・ミン・チェン]
はじめに
第1節 教育科学を超えた学際的研究によって支えられた教育政策と教育実践の必要性
第2節 多層的で相互接続的なものとしての学習に関する複雑系モデル
第3節 大学や学部の強みに基づく研究の下位テーマ
第4節 国際的・国内的・地域的な機会を活用するための戦略
第5節 これまでに達成されたこと
第6節 未来を見る
第20章 教育科学のネットワーク:ブラジルからの提案[ロベルト・レント/デボラ・フォーゲル/マリア・Z・ギマランイス/ダニエル・ボテロ/ジーザス・P・メナ=チャルコ]
第1節 考え方の基本:現在
第2節 今後の新しいシナリオ:未来
第3節 結論
第21章 オーストラリア学習の科学研究センター[ジョン・モリス/パンカジ・サー]
はじめに
第1節 教育研究の歴史
第2節 オーストラリア学習の科学研究センター
第3節 教育学と神経科学・心理学との違いに注目すること
第4節 結論
第22章 学習の科学は重要か?[カイ・ミン・チェン]
はじめに
第1節 何故、学習の科学なのか? 何故、今なのか?
第2節 教育か学習か
第3節 学習の要点
第4節 結論:規模の拡張
謝辞
訳者あとがき
編著者・編者紹介
執筆者紹介
訳者紹介
前書きなど
要旨
強力なトレンドが教育の文脈を作り直している。このトレンドは、急速に変化するテクノロジー、職場での新しい能力への需要と、公平性、社会的包摂、グローバルな市民性を育む必要を満たすための変化と革新への要求を伴っている。これらの需要と期待に上手く応える試みの中心にあるのは、個人が生涯を通して学べる十分な能力を発達させることである。そうして初めて、教育は生産性の高い個人を生み出し、ますます知識集約的でテクノロジー主導の21世紀を上手く渡っていくことができる。この大志を実現するための主要な道筋は、人間の学習に関する入手可能な最良のエビデンスを用いて、教育実践と教育政策に情報を提供することである。
近年、以前は不可能だったやり方で学習を研究できるようにするテクノロジーの進歩と新しい研究方法が生まれた。人々がどのように学習するのか、そして環境要因がどのように学習に影響を与えているのかということの根底にある複雑で動的なプロセスとメカニズムについて、重要な洞察が得られてきた。大切なことだが、学習者への入力と学習者からの出力の間にある、よく知られた「ブラックボックス」を垣間見ることは、神経科学者、社会科学者、行動科学者、認知科学者、数学者、コンピュータサイエンティスト、エンジニア、教育研究者を含む様々な分野の専門家の協力から生まれてきた。今は、研究者、教育実践者、政策立案者がより緊密に協力して、人間の学習に関する新しい発見による影響を調べ、私たちの前にある学習と教育の課題に対処するという、科学に基づく行動を提案する絶好の機会である。
本書は、OECD教育研究革新センターによる、研究と教育政策、教育実践の間の橋渡しをするという使命の精神に基づいて、この切望された取り組みに貢献することを目的としている。本書は、学習の中心にあるすべてのテーマの包括的な説明を意図したものではなく、数え切れないほどの複雑な教育的ジレンマに対する解決策をあえて処方するものでもない。本書は、研究成果が教育実践と政策に与える意義、さらには、現実世界の教育実践と政策から生まれた知識と経験がどのように研究課題と理論形成に異議を申し立て、特徴付けているのかについて議論を促すことを目指している。
本書は3部に分かれており、各章では、主要な研究者たちが最近の研究を紹介しつつ、その教育政策と教育実践に対する意義を議論している。
(…後略…)