目次
はじめに
要旨
第1章 創造性と批判的思考の育成と評価:プロジェクトの概観
第1節 創造性と批判的思考はなぜ重要なのか
第2節 創造性と批判的思考の育成と評価:プロジェクトの目的
第3節 創造性と批判的思考の理解を深める
第4節 創造性と批判的思考の指導と学習をサポートするルーブリック
第5節 創造性と批判的思考をサポートする授業計画
第6節 教員の職能開発計画
第7節 試験運用から得られたフィードバック
第8節 プロジェクトから得られた成果と次のステップ
第2章 創造性と批判的思考:求められるスキルの意味とルーブリック
第1節 創造性と批判的思考:2つの異なる重要なスキル
第2節 創造性と批判的思考の定義、理論、サブスキル
第3節 指導、学習、評価を向上させるルーブリック
第4節 OECDのルーブリック開発:収束過程
第5節 プロジェクト参加チームによるルーブリックの試用
第6節 まとめと結論
付録2.A1 創造性と批判的思考のOECDのルーブリック(領域特殊的)
付録2.A2 プロジェクト参加チームによるルーブリックの利用・設計例
第3章 創造性と批判的思考を育む11のシグネチャーペダゴジー
はじめに:シグネチャーペダゴジーとは何か
第1節 クリエイティブ・パートナーシップ(全科目)
第2節 デザイン思考(全科目)
第3節 対話型教育(全科目)
第4節 メタ認知教育法(数学教育、全科目):CREATE
第5節 モダンバンドムーブメント(音楽教育)
第6節 モンテッソーリ教育法(全科目)
第7節 オルフ音楽教育(音楽教育)
第8節 プロジェクト型学習(科学教育、全科目)
第9節 リサーチ型学習(科学教育)
第10節 スタジオ思考(視覚芸術教育)
第11節 芸術的行動のための教育法(視覚芸術教育)
第4章 創造性と批判的思考を育む授業計画
第1節 創造性と批判的思考を育む授業計画の枠組み
第2節 科目領域別の授業計画例:「どのようにみえるのか」
第3節 重要な知見
第5章 教員の職能開発計画
はじめに
第1節 教員の職能開発計画:主な構成要素
第2節 個別フォローアップ
第3節 同僚との対話
第4節 得られた教訓
第6章 創造性と批判的思考をめぐる教員の態度と実践
はじめに
第1節 イノベーティブなスキルの育成に向けた教員の態度と実践の形成
第2節 創造性と批判的思考に対する教員の態度
第3節 創造性と批判的思考をめぐる教員の指導実践と評価実践
第4節 介入に関する教員の報告
第5節 重要な知見
付録 オンラインサイトの掲載表一覧
第7章 生徒への介入効果と調査ツールの開発
第1節 OECD-CERIプロジェクト
第2節 研究課題
第3節 調査ツールの開発と妥当性の確認
第4節 被験者群
第5節 生徒への介入効果の測定
第6節 授業レベルの分析の概略
第7節 結論
第8章 プロジェクト参加チームのアプローチと成果
ブラジルチーム
オランダチーム
フランスCRIチーム
フランスLamapチーム
ハンガリーチーム
インドチーム
ロシアチーム
スロバキアチーム
スペイン(マドリード)チーム
タイチーム
イギリス(ウェールズ)チーム
アメリカ(モンテッソーリ)チーム
アメリカ(ビスタ)チーム
技術的補遺
1 調査ツール(アンケートとテスト)
2 STEMテストとVAMテストのスコアの構築
3 背景指数の構築
4 創造性と批判的思考に関連する指数の構築
5 傾向スコアマッチング
6 効果の評価
謝辞
前書きなど
はじめに
教えることやテストすることが容易なものについては、簡単にデジタル化され自動化されるのが、現代の世界である。この点からみても、創造性と批判的思考の重要性はますます高まるばかりで、テクノロジーを制御して活用したり、持続可能な思いやりのある世界を共にめざし続けることに結びつくものでもある。ほとんどのカリキュラムが創造性と批判的思考を重視しているのは不思議なことではない。また、それらを教えたりテストしたりすることが困難だと思われているのも不思議なことではない。
未来の学校は、生徒が自分で考え、他者と協働することを助けなければならない。生徒は、個人の活動や集団活動の限界を認識するとともに、自分自身の観点や自分を取り巻く世界を振り返り、理解しなければならない。職場でも、家庭でも、地域社会でも、科学者の観点から、あるいは芸術家の観点から、文化や伝統が異なる人々の暮らしぶりや考え方を深く理解する必要がある。また、新たなソリューションを想像し、新たな可能性や新たなつながりに目を向けて、それらを新たな製品やより良い世界に共に生きる方法につなげる必要がある。
したがって学校は、生徒の創造性と批判的思考を育み、さまざまな視点から物事を見ることを助け、自他のものの見方の限界を理解させ、アイディアをイノベーティブなソリューションに転換することを助ける場でなければならない。そのためには、生徒は探求し、想像し、実行し、省察しなければならない。これが、創造性と批判的思考についてOECDのルーブリックが語ることである。
どれも容易なことではなく、一夜で成し遂げられることではない。しかし、本書は前へ進むための具体的な機会を提供する。生徒には、創造性と批判的思考のスキルを実践する機会、そして学校や教員には、内容知識や手続き的知識の価値を貶めることなく、そのような学習環境を構築するための新しいツールを提供する。さらに政策立案者には、教育実践の向上を助ける方法と、エビデンスを生かした教育システムの改善方法に関する知見を提供する。
本書で示すリソースは、11か国の教員や学校のネットワークによって開発され、検証されたものであり、その取り組みは、OECDによる2021年の生徒の学習到達度調査(PISA調査)の革新的分野である「創造的思考」の概念的枠組みの開発にも貢献した。
プロジェクトに関与した数多くの教員が求めるのは、二流のロボットではなく一流の人間を育てる教育システムであり、その実現は世界レベルの協働に大きく委ねられている。