目次
新型コロナウイルス感染症:パンデミック2年目
A章 教育機関の成果と教育・学習の効果
A1 成人の学歴分布
A2 若年者の就学及び就業状況
A3 最終学歴別の就業状況
A4 教育による所得の増加
A6 教育の社会的成果
A7 成人の教育・訓練への参加状況
B章 教育機会・在学・進学の状況
B1 初等教育から高等教育までの在学率
B2 幼児教育
B3 後期中等教育卒業率
B4 高等教育進学率
B5 高等教育修了率
B6 高等教育機関における留学生と外国人学生
C章 教育支出
C1 在学者一人当たり教育支出
C2 国内総生産(GDP)に対する教育支出の割合
C3 教育支出の公私負担割合
C4 公財政教育支出
C5 高等教育機関の授業料と学生への公的補助
C6 教育支出の使途別構成
D章 教員・学習環境・学校組織
D3 教員と学校長の給与
D4 教員と学校長の授業時間数及び勤務時間数
D6 教員及び学校長になるための条件
D7 教員・学校長の職能開発活動
D8 大学教員の構成及び大学教員一人当たり学生数
付録1 教育制度の特徴(教育関連の主要基礎データ)
付録2 主要な基本データ
付録3 資料・算定方法・テクニカルノート
※インディケータA5、D1、D2、D5は原著公表がなかったため、これらの指標については日本語版についても収録されていない。
前書きなど
刊行にあたって
OECD加盟国全体では、高度な資格を持つ若年成人の割合が過去20年間で急上昇している。24~34歳人口に占める高等教育修了者の割合は、2000年には27%に過ぎなかったが、2021年には48%に達している。これは、労働市場において高度な技能へのニーズが高まっているためであり、私たちの社会と将来の教育においても大きな意味を持つものである。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的流行)は、学歴が経済的リスクに対する最良の防御策の一つであることを示した。つまり、パンデミックのピーク時には、後期中等教育未修了者の失業率が高等教育修了者に比べて大幅に上昇したのである。同じようなパターンは、2008年の経済危機以降にも見られた。
また、学歴が高くなるほど、生活の質を向上させる新しいテクノロジーを容易に取り入れることができるのかもしれない。例えば、55~74歳の高等教育修了者の71%がパンデミック時にオンラインやビデオによる通話を利用しており、そうすることで家族や友人と連絡を取り合って社会的孤立を避けることができた。一方、同年齢層の後期中等教育未修了者のうち、オンライン通話またはビデオ通話を利用したと回答した人は34%にとどまった。
『図表でみる教育OECDインディケータ(2022年版)』では、高等教育を取り巻くこうした環境の変化に焦点を当てている。
すべての学生のニーズに対応できる高等教育に
高等教育機関に進学する学生の増加に伴い、学生たちの社会経済的背景や教育的背景の多様化が進んでいる。そうした学生たちのニーズに応えるために、高等教育も多様性を高める必要がある。大学に進学する学生の割合が少なかった時代には、恵まれた背景を持つ学生が多かったが、若年成人の半数以上が高等教育を受けるようになってくると、従来の高等教育のモデルはもはや適切なものとは言えない。
高等教育制度は、学生が生涯の様々な段階で新たな技能を求めることができるように備えておかなければならない。例えば、マイクロクレデンシャル(学習単位を細分化して認証するもの)は、学ぶ内容、学ぶ場所、学び方、そして学ぶのに最適な時期を学生が選択できる自由度を広げられる有望なアプローチである。労働市場が変化する中で、雇用主が必要なスキルを持つ人材を見つけられないときであっても、若い卒業生が苦労せずに良い仕事を見つけることができるようにするためには、こうしたアプローチや類似のアプローチが重要になるであろう。
さらに、高等教育の学位を取得することが、すべての学生にとって最善であるとは限らない。高等教育への進学率が全般的に高まったことで、雇用主は高等教育の学位を取得することをニューノーマルとして普通のことと考えるようになり、職業教育訓練(VET)を受けた方がより多くのメリットを得られるような学生を、学術的な高等教育へと押しやった可能性がある。このような事態を避けるためには、品質と労働市場での成果という点で、高等教育に太刀打ちできるような後期中等教育の職業プログラムが重要であるが、そうした例はまだ稀である。VETを学生にとって最後の手段ではなく、最初の選択肢とするためには、VETの卒業生が後に追加の資格を取得する機会を持てるように、後期中等教育のVETと専門的な高等教育の間の新たな連携が必要である。
(…中略…)
OECDは、今後も加盟国やパートナーと協力し、政策立案者が教育復興政策を評価し、パンデミック時に採用したデジタル化政策と新機軸を基に、将来に向けてより良い雇用とより良い生活を後押しする教育システムを築き上げるために必要なデータを提供していく所存である。
(…後略…)