目次
序章 人口減少・超高齢社会と外国人の包摂――秋田県の事例から新たな地域社会づくりを展望する[熊谷嘉隆]
はじめに
1.わが国の外国人
2.外国人介護労働者をめぐる動き
3.秋田県内の外国人――住民と労働者
4.問題意識と課題設定
おわりに
第Ⅰ部 外国人介護労働者の受入れ
第1章 秋田県における外国人介護労働者の受入れ――EPAから技能実習へ[秋葉丈志・嶋ちはる]
はじめに
1.EPAから技能実習へ――拡大・分化する制度
2.秋田県内の状況
3.制度の乱立と受入れ体制の模索
おわりに
第2章 秋田県内の先行事例にみる外国人介護労働者受入れの展望[秋葉丈志・平田友香・嶋ちはる]
はじめに
1.社会医療法人正和会におけるEPAによる受入れ
2.正和会における技能実習生の受入れ
3.今後の展望と課題
おわりに
第3章 外国人介護労働者受入れに関する秋田県内の施設の意識調査[秋葉丈志・嶋ちはる・平田友香]
はじめに
1.秋田県実施の2つの調査について
2.県内施設の意識調査について
3.調査結果
4.分析と考察
おわりに
Column① 外国人介護労働者を受け入れて――医療法人受入れ担当者の視点から[玉井寛]
Column② インドネシア人看護師のライフストーリー――秋田県湯沢市に赴任して[アガタ・アリニンティヤス(補筆・校正:佐野ひろみ)]
第Ⅱ部 外国人住民と地方経済
第4章 外国人労働者受入れのための市町村の政策課題――秋田県での事例を踏まえての検討[豊田哲也・中川秀幸・山部理沙・大金優子・三宅裕揮]
はじめに
1.労働の国際移動と諸外国の外国人受入れ制度
2.日本の外国人受入れ制度
3.仙北市の外国医師受入れの検討
4.大潟村による農業労働者の戦略的受入れの検討
おわりに
第5章 秋田県における外国人技能実習生受入れへの課題と提言――秋田県とベトナムでの現地調査を踏まえて[飯牟禮克年]
はじめに
1.実習のプロセス
2.ヒアリング調査からわかった技能実習生の現状
3.技能実習生受入れの課題
4.行政機関の対応
5.今後の受入れへの提言
おわりに
第6章 秋田県における外国人の起業と課題[堀井里子・後藤明日香]
はじめに
1.先行研究と分析概念
2.外国人住民の起業のリアル――聞き取り調査から
3.考察――社会関係資本としての地域社会
おわりに
第7章 韓国での自治体主導の農業季節労働者制度の特徴と課題[成澤徳子・豊田哲也]
はじめに
1.農村の人手不足と外国人受入れ
2.農業季節労働者制度の導入まで
3.農業季節労働者制度の特徴
4.今後の課題
おわりに
Column③ 秋田県の農業と外国人労働者1――複合経営の展開と担い手の育成をめぐって[成澤徳子]
Column④ 秋田県の農業と外国人労働者2――受入れ先駆者の経験から[成澤徳子]
第Ⅲ部 外国人労働者の受入れと日本語教育
第8章 秋田県における外国人労働者受入れと地域日本語教育――日本語教育の機会の確保と質の向上という視点から[嶋ちはる・平田友香・宮淑・古田梨乃]
はじめに
1.秋田県における在留外国人と地域日本語教育の変遷
2.県内調査の概要
3.地域日本語教室における技能実習生の受入れ
4.地域における外国人労働者に対する日本語教育の課題
おわりに
第9章 秋田県におけるオンライン日本語教育の活用可能性と課題――秋田市日本語教室の事例から[平田友香・宮淑・古田梨乃]
はじめに
1.秋田市日本語教室の概要
2.オンライン教室の実践
3.オンライン教室の利点と課題
4.これからの地域日本語教室
おわりに
Column⑤ ㈱たけや製パンにおける技能実習生受入れ1――来日前・準備編[平田友香・宮淑・古田梨乃]
Column⑥ ㈱たけや製パンにおける技能実習生受入れ2――来日後・実践編[平田友香・宮淑・古田梨乃]
第Ⅳ部 民俗文化の継承と外部参加者
第10章 秋田県内の民俗芸能の現状と課題[熊谷嘉隆]
はじめに
1.秋田県内における民俗芸能の現状
2.民俗芸能の消滅危機
3.民俗芸能の継承に向けた新たな取り組み
4.民俗芸能の今後
おわりに
第11章 男鹿のナマハゲ行事と外部参加者[成澤徳子]
はじめに
1.ナマハゲ行事の観光化
2.ナマハゲ行事の秘匿性と開放性
3.外部参加者受入れの実例
おわりに
第12章 秋田市竿燈行事と外部参加者[根岸洋]
はじめに
1.先行研究にみる竿燈行事の変容
2.参加形態に関する聞き取り調査
3.国際教養大学竿燈会に関する調査報告
4.竿燈行事の担い手についての現状と展望
おわりに
Column⑦ 民俗芸能の継承――危機的状況と保存へ向けた取り組み[中川秀幸]
Column⑧ 秋田竿燈まつりとの関わり――地域連携と異文化間コミュニケーション[ジョン・モック(日本語訳:根岸洋)]
終章 外国人居住者の包摂による新たな地域づくりの可能性[熊谷嘉隆]
はじめに
1.課題整理
2.総論
おわりに
初出一覧
前書きなど
序章 人口減少・超高齢社会と外国人の包摂――秋田県の事例から新たな地域社会づくりを展望する[熊谷嘉隆]
(…前略…)
4.問題意識と課題設定
グローバル化の進行に伴い、ヒト、モノ、カネ、そして情報が従来にないスピードで行き交い、流動する現代社会において、今後はわが国の人口構成も少なからず変化していくことになるであろう。様々な目的で世界各地から日本に来訪し、そして長期間滞在する外国人の数は今後も増え続けるものと思われる。また、類例のないペースで人口減少・高齢化が進行するわが国で労働力の確保の観点から積極的に受入れを図っている外国人、特に近年増加傾向にある技能実習生(本来、開発途上国の人々が日本の様々な技術や知見を学び、それを母国の発展のために応用・移転するための技能実習制度ではあるが)などが職場以外の場で、そして自らが住まう地域でどのような生活や文化的課題に直面しているのか、また、どのような役割を果たしうるのか。それら長期滞在外国人が、自らが住む地域と無関係に生活をすることは健全ではないだろうが、彼らが地域に溶け込み、地域住民と協働・共存する可能性はあるのか。
日本人とは異なる言語、社会規範、文化、宗教などを有する外国人との共生は簡単ではないかもしれない。その一方で、これらの人々が生活の質を担保され、地域コミュニティと自然に関わり、さらに地域でより積極的な役割を果たすためには、様々な課題があるように思われる。国・地方レベルで、技能実習生をはじめとする外国人が労働力の補完だけではなく、地域社会にどのように溶け込み、多様な人々による新たな地域社会を形成するのか、そのためにどのようなハード・ソフト面における環境整備が必要なのか、を理解する必要があるとの問題意識を我々はもっている。
本書は、2018年に採択された「JSPS課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業(実社会対応プログラム)JPJS00118071774」の委託を受けて実施された研究「人口減少社会における包摂と継承――『最先端』秋田からの提言」の成果をまとめた論文集である。研究調査について、(1)外国人介護労働者の受入れ、(2)外国人住民と地方経済、(3)外国人労働者の受入れと日本語教育、(4)民俗文化の継承と外部参加者、の切り口で各課題設定を行い、それを基に分析を試みた。各切り口における課題設定は以下のとおりである。また、終章では各章の報告内容を課題に引きつけつつ統合的な分析を行い、その上で今後の展望について提言的に取りまとめる。
(…後略…)