目次
まえがき
序章 現代アジア世界への扉を開く[佐藤史郎・石坂晋哉]
第Ⅰ部 社会
第1章 [人口・家族]アジアにおける人口問題と身体をめぐる政治[松尾瑞穂]
第2章 [シングルマザー・寡婦]アジアにおける夫をもたない女性の貧困[佐藤奈穗]
第3章 [ジェンダー]ジェンダーをめぐる暴力と解決への取り組み[菅野美佐子]
第4章 [ケア]アジアにおける高齢者ケアとその変化[岩佐光広]
第5章 [教育]期待と失望のはざまで生きるアジアの若者[茶谷智之]
第6章 [移民]アジアにおける国際労働移動の展開と現状[細田尚美]
第7章 [難民]国民国家の暴力が生み出した地位を生きる人々[山本達也]
第8章 [人身売買]アジアの豊かさと貧しさが引き寄せる人身売買[中村文子]
第9章 [先住民族]大規模開発への抵抗と持続可能な権利基盤の発展[木村真希子]
第10章 [社会運動]アジアの社会運動の多様性と共時性[石坂晋哉]
第11章 [カースト]インド社会の文脈を越えて[舟橋健太]
第Ⅱ部 経済
第12章 [経済成長]アジアの経済成長プロセスとその行方[井出文紀]
第13章 [一帯一路構想]中国の「一帯一路」構想をめぐる現状と課題[土屋貴裕]
第14章 [開発・貧困]「開発」の進展と課題[和田一哉]
第15章 [資源・エネルギー]アジア経済の中の天然資源とエネルギー[出町一恵]
第16章 [農業・食料]モンスーンアジアの食と農の変容[佐藤孝宏]
第17章 [環境・公害]グローバル化するアジア環境問題[知足章宏]
第18章 [都市化]アジア都市の発展メカニズムと都市問題[宇根義己]
第19章 [観光]日本とアジアにおける国際観光の現状と課題[北邦弘]
第Ⅲ部 政治
第20章 [民主化・民主主義]アジアにおける民主化と民主主義の後退[山根健至]
第21章 [香港・台湾]緊張する中国との関係[福田円]
第22章 [軍事化]南シナ海にみる大国の角逐[松村博行]
第23章 [核兵器・原発]アジアにおける原子力技術の軍事利用と平和利用の遠景[佐藤史郎]
第24章 [平和構築]アジアの紛争と平和への取り組み[クロス京子]
第25章 [ASEAN]ASEANウェイとその懐疑論[井原伸浩]
第26章 [汚職・贈賄]アジアにおける汚職と汚職取締をめぐる政治[外山文子]
第27章 [感染症]地域内保健協力[詫摩佳代]
第28章 [災害・防災]災害に柔軟に対応するアジアへ[上野友也]
第Ⅳ部 文化
第29章 [仏教]アジアの仏教と日本の仏教[小林知]
第30章 [ヒンドゥー教]1年間の祭事からみるヒンドゥー教徒の信仰と実践[虫賀幹華]
第31章 [キリスト教]アジアにおけるキリスト教の現地化とグローバル化[宮脇聡史]
第32章 [イスラーム]アジアのイスラームの日常風景と課題を知る[渡邉暁子]
第33章 [世界遺産]アジアにおける世界遺産の特質[笠井敏光]
第34章 [ポップカルチャー]アジアにおける文化的コンテンツの再編[小西公大]
第35章 [路上文化]躍動するアジア社会の源泉[岩谷彩子]
あとがき
執筆者紹介
前書きなど
まえがき
現代アジアは躍動性と多様性で彩られている。アジア経済はいま,新型コロナウイルスの感染拡大により,深刻な影響を受けている。その回復の見込みを立てることは容易ではない。とはいえ,アジア経済が世界経済を牽引するという趨勢に変わりはない。現代アジアは依然として躍動感に溢れており,その鼓動は世界で鳴り響いたままである。
また,現代アジアはその広大さゆえに,気候,生態,言語,宗教,文化なども大きく異なる。たとえば,言語についていえば,現代のアジアでは約2,300もの言語が使用されている。現代アジアは多様性に満ちているのだ。この多様性が多くの人たちをアジアに惹きつける。
しかし,その躍動性と多様性ゆえに,そしてそれらの特徴が絡み合う複雑性ゆえに,現代アジアを理解することはときに難しいのではないだろうか。たとえば,民主化を求める香港・タイ・ミャンマーの抗議デモは,アジアの民主主義という点で,どのように捉えることができるのだろうか。また,それは国際社会に対して,どのような影響を与えるのだろうか。
現代アジアについては,1つの国ないし地域に絞った書籍が多い。もちろん,アジア全域を対象とした本もある。けれども,その多くは1つのテーマやイシューに限定されがちである。現代アジアの社会・経済・政治・文化に関するテーマやイシューを網羅的に取り扱った学術書は,叢書として編まれたいくつかの書籍を除いて,ほぼ皆無といってよい。そこで本書は,現代アジアが直面する社会・経済・政治・文化をめぐる問題について,①どのような問題があるのか,②なぜそれが問題なのか,③その問題を考えるためにはどのような専門知識が必要なのか,④その問題に対してどのような見解や立場があるのか,⑤その問題を解決するための方向性とは何か,などを考える。これらを通じて,現代アジアに関する知識と見解を読者に提供していきたい。
本書の読者対象は,学生・研究者・社会人・一般の方々といったように,幅広く設定している。ただし,少し細かくいえば,学生は留学・語学研修・海外研修・インターンシップなどで東アジア・東南アジア・南アジアに行く人たちを主にイメージしている。また,社会人については出張・駐在で,一般の方々については観光で,東・東南・南アジアに赴く人たちを強く意識している。
(…後略…)