目次
はじめに~第7版刊行にあたって~[日本弁護士連合会子どもの権利委員会委員長:安保千秋]
第1章 児童虐待アウトライン
1 児童虐待とは何か
2 児童虐待の原因と影響
3 児童虐待と親権
4 被虐待児救出の流れ(児童相談所が主となってかかわる場合)
5 被虐待児保護の方法
6 児童虐待における関係機関との連携
7 児童虐待対応における弁護士の役割
8 相談時の留意点~関係機関からの相談~
9 相談時の留意点~子どもからの相談、聴き取り~
10 相談時の留意点~虐待を疑われている親からの相談~
第2章 虐待防止と民事上の対応
1 親権制限制度について
2 親権停止
3 親権喪失
4 管理権喪失
5 親権喪失・親権停止・管理権喪失の審理手続
6 親権者・管理権者の辞任
7 未成年後見制度
8 虐待事件における未成年後見人の留意点
9 未成年後見人の解任・辞任
10 親権者変更・指定
11 監護者の指定
12 子の引渡し
13 養子縁組
コラム 渉外養子縁組
第3章 児童福祉行政機関による法的手続
1 発見・通告
2 調査
3 一時保護
4 児童福祉法第27条第1項第3号の措置
5 児童福祉法第28条の申立て
6 18歳に達した者の一時保護、施設入所措置等
7 親権制限制度
8 指導・支援
9 再統合
10 自立支援
コラム 子どもの意見表明権と子どものアドボケイト
コラム 子どもの手続代理人について
第4章 ケースから学ぶ法的対応
1 身体的虐待
2 性的虐待
3 ネグレクト
4 心理的虐待
5 代理によるミュンヒハウゼン症候群
6 不登校と引きこもり、登校禁止
7 医療ネグレクト
8 乳児ケースの特殊性
9 高年齢児童のケース
10 非行がからむケース
11 DVが背景にあるケース
12 知的障がい児のケース
13 貧困家庭ケース
14 親の同意のない特別養子縁組のケース
15 指導勧告ケース
16 警察・検察の捜査との関係が問題となったケース
コラム 虐待による乳幼児頭部外傷(SBS/AHT)
第5章 児童虐待と機関連携
1 虐待対応における機関連携の重要性
2 要保護児童対策地域協議会
3 情報共有・連携と個人情報に関する問題
コラム 無戸籍問題について
第6章 児童虐待と刑事事件
1 児童虐待における刑事手続の意味付け
2 虐待を受けた子どもへの法的支援
3 虐待を行ってしまった親の弁護活動
コラム CDR等の医療等との連携について
第7章 その他の諸問題
1 はじめに
2 児童相談所の処分に対する行政不服申立て
3 児童相談所や都道府県の決定等に対する行政訴訟
4 国家賠償請求
5 個人情報開示請求
6 公的機関等から児童相談所への照会等
7 保護者への対応
書式集
児童福祉法28条1項に基づく承認審判申立書
児童福祉法28条2項但書に基づく承認審判申立書
親権停止審判申立書/審判前の保全処分申立書
臨検・捜索許可状請求書
索引
前書きなど
はじめに~第7版刊行にあたって~[日本弁護士連合会子どもの権利委員会委員長:安保千秋]
1998(平成10)年6月に、私たち日本弁護士連合会子どもの権利委員会が本書の初版を出してから23年になります。その間、2000(平成12)年の児童虐待の防止等に関する法律の成立を含め、児童福祉法等は何度かの大きな改正を経てきており、そのつど、本書も改訂を重ねてきました。本書第6版は、2016(平成28)年の児童福祉法等の大改正(児童福祉法の理念に子どもの権利主体性、子どもの意見の尊重や子どもの最善の利益の考慮が明記された等)、さらに、2017(平成29)年の改正による一時保護の2か月越えについての司法審査の導入及びいわゆる28条審判における家庭裁判所のよる勧告の拡大等を受けて、2017(平成29)年に出版しました。
今回は、4年ぶりの改訂となります。2018(平成30)年の民法改正により2022(令和4)年4月1日から成年年齢が18歳に引き下げられること、2019(令和元)年の改正により親権者等による体罰の禁止が明記されたこと及び2020(令和2)年の改正により特別養子縁組制度が大きく変更されたこと等を反映したほか、2019(令和元)年の改正の付則で規定された懲戒権の在り方の検討(現在、法制審議会親子法制部会で審議中)、児童の意見表明権を保障する仕組みの検討(2021年5月に厚生労働省子どもの権利擁護に関するワーキングチームがとりまとめを公表)についても言及し、児童虐待の状況の変化等も踏まえ、大幅に内容を見直しました。
児童相談所における児童虐待相談対応件数は、毎年過去最多を更新し、2020(令和2)年度には20万5029件(速報値)に及びました。新型コロナウイルス感染拡大のなかで、子どもが同居する家庭における配偶者に対する暴力(面前DV)による警察からの通告が増加したり、子どもの日常生活に対して様々な制限がなされるなど、子どもの成長発達や心理に大きな影響を及ぼしています。私たち大人は、子ども達が安心して成長発達ができる環境を保障することが、ますます求められています。
本書は、初版から一貫して、各地で実際に子どもの虐待防止活動に関わってきた弁護士の活動の蓄積を踏まえ、その法的ノウハウをすべてまとめ、法的実務のポイントを解説し、あわせて子どもの虐待防止活動に必要な医学、心理学、福祉に関する情報・知識を盛り込んでいます。今回も、子どもの権利委員会小委員会のメンバーを中心に、試行錯誤のなかで得た知見をすべて出して、議論をしてまとめたものです。私たちは、子どもの権利擁護に取り組む皆様と活動するなかで、さらに研鑽を深め、子どもの虐待予防、防止のための実効的な法制度に向けて、活動を強化していきたいと考えています。
本書が、児童相談所や市町村、NPOなど様々な立場で子どもの虐待防止に取り組まれている皆様にお役に立つことができれば幸いです。