目次
まえがき
緒論 課題と方法
第一章 旧約聖書におけるメシヤ思想
第一節 「メシヤ」ということばの意味と用法
第二節 メシヤ思想の起源
第三節 律法におけるメシヤ思想
一 創世記三章一五節
二 創世記九章二六―二七節
三 創世記一二章二―三節、二二章一八節、二六章六節、二八章一四節
四 創世記四九章八―一〇節
五 民数記二四章一七節
六 申命記一八・一四―一五節
第四節 前預言者におけるメシヤ思想 付、詩篇におけるメシヤ思想
一 サムエル記第二、七章一〇―一六節
二 詩篇二篇
三 詩篇二二篇
四 詩篇八九篇
五 詩篇一一〇篇
第五節 後預言者におけるメシヤ思想 付、ダニエル書におけるメシヤ思想
一 アモス書
二 ホセア書
三 イザヤ書
(一)緒論的問題
(二)イザヤの預言の背景
(三)イザヤ書七章一四節
(四)イザヤ書九章六―七節
(五)イザヤ書一一章一―九節
(六)イザヤ書五二章一三節―五三章一二節
四 ミカ書
五 エレミヤ書
六 エゼキエル書
七 ダニエル書
(一)緒論的問題
(二)ダニエル書のメシヤ預言
八 ゼカリヤ書
(一)緒論的問題
(二)ゼカリヤ書のメシヤ預言
九 マラキ書
第二章 旧新約中間時代におけるメシヤ思想
第一節 外典におけるメシヤ思想
一 ベン・シラの知恵
二 マカバイ第一書
三 トビト書
四 ソロモンの知恵
五 バルク書
六 エズラ第二書
第二節 偽典におけるメシヤ思想
一 エノク第一書
二 十二族長の遺訓
三 ヨベル書
四 ソロモンの詩篇
五 モーセの昇天
六 バルク第二書(シリヤ語バルク書)
七 エズラ第四書
第三節 ラビ文書におけるメシヤ思想
一 ミシュナー
(一)エドゥヨート八章七節
(二)ベラコート一章五節、ソーター九章一五節
二 タルムード
(一)サンヘドリン五一
(二)シャバット一五一
(三)シャバット九七、アボダー・ザラー九
(四)シャバット六三
三 ミドラシュ
(一)レビ記九章七節についてのラバー
(二)レビ記一三章三節についてのラバー
(三)伝道者の書二章一節、一一章八節についてのラバー
(四)雅歌二章一三節についてのラバー
(五)創世記四九章一〇節および一一節についてのラバー
四 タルグム
(一)イザヤ書一二章三節
(二)雅歌五章一〇節
五 アミダー
第四節 死海文書(クムラン文書)
一 ダマスコ文書(CD)
二 証言集(4Q Test)
三 宗規要覧(1QS)
四 会衆規定(1QSa)、祝祷文(1QSb)
五 光の子と闇の子の戦い(1QM)
六 イザヤ書(1QISa)
七 感謝の詩篇(1QH)
第五節 結び
第三章 新約聖書におけるメシヤ思想
第一節 史的イエスの問題
第二節 福音書におけるメシヤ思想
一 「メシヤ」としてのイエス
二 「神の子」としてのイエス
三 「預言者」としてのイエス
四 「人の子」としてのイエス
五 「苦難のしもべ」としてのイエス
六 福音書記者のメシヤ観
第三節 使徒の働きと手紙におけるメシヤ思想
一 使徒の働き
二 使徒の手紙
結論 ユダヤ教のメシヤ思想とキリスト教のメシヤ思想の決定的相違
辞典・基本資料
参考文献
日本語文献
略記号表
おわりに
前書きなど
まえがき
ユダヤ人は、古くからメシヤ預言を知っておりました。やがてメシヤ(救い主)が来るという預言です。紀元一五世紀に印刷術が発明される以前は、一人一人が自分の聖書を持っておりませんでしたが、それでもメシヤ預言は知っていたのです。一九四七年に死海の近くの洞窟で発見された死海文書の中にも、メシヤ預言だけを記した「証言集」と呼ばれる巻物があったことによっても、そのことはよく分かります。つまり、旧約聖書の中に記されているメシヤ預言を知っていたのです。
それなのに、メシヤとしてキリストがこの世に来られた時、なぜ彼らはキリストをメシヤとして受け入れず、十字架に掛けて殺してしまったのでしょうか。これは、昔から大きな謎でした。このことを、あらゆる文献を駆使し、解き明かそうと言うのが、この論文の目指すところです。
(…後略…)