目次
序文
謝辞
頭字語・略語一覧
国名記号一覧
要旨
LGBTIを包摂する法律とは?
LGBTIを包摂する法律はどの程度施行されているか?
LGBTIを包摂する法律を可決する以外に何ができるのか?
第1章 LGBTIを包摂する法律と政策:本書の概観
はじめに
第1節 LGBTIを包摂する法律とは?
1.1 一般的な規定
1.2 グループ固有の規定
第2節 OECD加盟国の法律はLGBTIを包摂しているか?
2.1 OECD加盟国全体ではLGBTIの法的包摂性は中程度だが、上昇傾向にある
2.2 国によって水準と傾向はまちまちだが、全体的に進捗している
2.3 実績上位の国を含め、LGBTIの完全な法的包摂に至るには、まだ長い道のりがある
第3節 社会においてLGBTIの人々の包摂を向上させることがなぜ重要なのか?
3.1 LGBTIの法的包摂性とLGBTIの人々の社会的受容
3.2 LGBTIの法的包摂性とジェンダー平等
3.3 LGBTIの法的包摂性と経済発展
第4節 LGBTIを包摂する法律を可決する以外に何ができるのか?
4.1 LGBTIを包摂する差別禁止法、ヘイトクライム/ヘイトスピーチ法、庇護法の施行
4.2 教育、雇用、医療における平等な取り扱いの文化の醸成
4.3 LGBTIインクルージョンへの国民の支持の構築と維持
第2章 LGBTIを包摂する法律とは?
はじめに
第1節 OECD加盟国にとって重要な人権ステークホルダー
1.1 欧州連合
1.2 他の重要なステークホルダー
第2節 LGBTIを包摂する法律:一般的な規定
2.1 差別からのLGBTIの人々の保護
2.2 LGBTIの人々の市民的自由の保護
2.3 暴力からのLGBTIの人々の保護
2.4 迫害から国外に逃れるLGBTIの人々の保護
2.5 LGBTIを包摂する平等機関、オンブズマン、人権委員会の設置
第3節 LGBTIを包摂する法律:グループ固有の規定
3.1 LGB固有の規定
3.2 TI固有の規定
第3章 LGBTIを包摂する法律はどの程度施行されているか
はじめに
第1節 LGBTIの法的包摂性の測定
1.1 LGBTIを包摂する法律と政策に関するOECD質問票
1.2 OECD質問票への回答の集計
第2節 LGBTIの法的包摂性の水準と傾向
2.1 OECD加盟国全体ではLGBTIの法的包摂性は中程度だが、上昇傾向にある
2.2 国によって水準と傾向はまちまちだが、全体的に進捗している
2.3 LGBTIの法的包摂性は社会的包摂及び経済発展の尺度と関連性があるのか?
第3節 LGBTIの法的包摂性の向上に有望な次のステップは何か?
3.1 実現可能性に基づきLGBTIを包摂する法規定を分類する
3.2 LGBTIを包摂する法規定の成立に関するグッドプラクティス
付録3.A LGBTIインクルージョンに関する国際指標
1 国家的ホモフォビア指標(ILGA)
2 欧州・中央アジアトランスジェンダー権利指標(トランスジェンダー・ヨーロッパ)
3 レインボー指標(ILGAヨーロッパ)
付録3.B LGBTIインクルージョンを促進する法規定を特定するための質問調査
1 一般的な規定を特定するための質問票
2 グループ固有の規定を特定するための質問票
付録3.C LGBTIの法的包摂性の水準と傾向:一般的な規定とグループ固有の規定の構成要素別
1 一般的な規定
2 グループ固有の規定
3 TI固有の規定
付録3.D LGBTIの人々の市民的自由に対する脅威
1 リトアニア
2 ポーランド
3 トルコ
第4章 LGBTIを包摂する法律を可決する以外に何ができるのか?
はじめに
第1節 LGBTIを包摂する差別禁止法、ヘイトクライム/ヘイトスピーチ法、庇護法の施行
1.1 LGBTIを包摂する差別禁止法の施行
1.2 LGBTIを包摂するヘイトクライム/ヘイトスピーチ法の施行
1.3 LGBTIを包摂する庇護法の施行
第2節 教育、雇用、医療における平等な取り扱いの文化の醸成
2.1 教育におけるLGBTIの平等の促進
2.2 雇用におけるLGBTIの平等の促進
2.3 医療におけるLGBTIの平等の促進
第3節 LGBTIインクルージョンのための国民の支持の構築と維持
3.1 一般国民への適切に策定された意識向上活動の実施
3.2 政府機関と公共機関を通じて模範を示す
付録4.A LGBTIインクルージョンの改善に向けた現行の全国的な行動計画
付録4.B LGBTIの人々へのヘイトクライムに関するバイアス指標の明確化
付録4.C LGBTIの問題を学校カリキュラムに取り入れる:ストーンウォールの提案
付録4.D LGBTIを包摂する職場文化を構築する:ソデクソ『LGBT 会話ガイド』より
前書きなど
要旨
LGBTIの人々――すなわちレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、インターセックスの人々――が差別や攻撃を受けることなく自分らしく生きられるようにすることは、少なくとも3つの理由から私たちすべてに関わりがあるはずである。1つめの最も重要な理由は、間違いなく倫理的な理由である。性的指向、性自認、性的特徴は自己の不可分の要素である。LGBTIの人々がアイデンティティを明かしたときにそれを隠すよう強いられたり、報復を受けたりしないようにすることは、そうした人々が偽ることなく自分自身として人生を送るために不可欠である。2つめの理由は経済的な理由である。LGBTIの人々への差別は幅広い経路から経済発展を妨げる。たとえば、そうした差別によって、LGBTI嫌悪(LGBTIフォビア)による学校でのいじめが原因となって人的資本への投資が減少し、労働市場における教育投資の収益率が低下する。LGBTI差別はLGBTIの人材を労働市場から締め出し、そうした人々の心身の健康を、そしてそれゆえに生産性を阻害することによって、経済生産も減退させる。LGBTIインクルージョン(LGBTIの人々の包摂)を最優先事項の1つとすべき3つめの理由は、社会的な理由である。LGBTIインクルージョンはこれまでより柔軟なジェンダー規範の誕生につながり、概してジェンダー平等の改善に寄与すると考えられる。
本書は、OECD加盟国の法律がLGBTIの人々の平等な取り扱いをどの程度保障しているのかについて、またLGBTIインクルージョンの促進に役立ちうる補完的政策について、包括的な概観を示す。本書は、セクシャル/ジェンダーマイノリティの包摂に不可欠な法律・規制の枠組みを初めて明らかにした。そして、そうした法律がOECD加盟国で施行されているか否かを調査し、さらなる改善の余地を検証する。最終的に、LGBTIの人々の包摂を強化するために、LGBTIを包摂する法律に付随すべきより広範な政策措置を提示する。
(…後略…)