目次
仕事しよう――解説の代わりに[立岩真也]
序章 先行研究の検討と本研究の目的
0.1 研究背景と目的
0.2 先行研究およびその課題
0.3 研究の方法
0.4 本書の構成
第1章 1985年年金改正の経緯およびその構造
1.1 1961(昭和36)年の旧国民年金法の成立過程と問題点
1.2 基礎年金構想と基本懇
1.3 第二臨調の誕生とその目的
1.4 1980(昭和55)年の年金改革
1.5 鈴木首相の失脚と中曽根首相の誕生
1.6 第二臨調の第三次答申と有識者調査
1.7 共済統合法成立
1.8 1985年年金改正法成立
1.9 新制度の構造――給付水準と保険料
1.10 新制度の構造――被用者年金
1.11 障害基礎年金と障害厚生年金の特徴
1.12 特別障害者手当
1.13 小括
第2章 障害者団体と官僚・政治家の交渉①――CP研究会最終報告書完成まで
2.1 実態調査実施前の障害者団体の要求について
2.2 障害者の自立観の変遷と実態調査反対運動
2.3 厚生省と障害者団体の自立観の差異
2.4 CP研究会の発足
2.5 CP研究会への障害者側の事前提出資料
2.6 仲村の座長就任表明および異なる主張を持つ障害者団体間の意思統一
2.7 CP研究会での研究課題の優先順位をめぐる議論
2.8 脳性マヒ者らによる生活保護批判
2.9 停滞する厚生省との交渉
2.10 脳性マヒ者らの自立観
2.11 生活保護批判から年金による所得保障へ
2.12 障害等級についての議論
2.13 板山はCP研究会で何に貢献したのか
2.14 CP研究会の最終報告書が障害基礎年金制度に与えた影響
2.15 小括
第3章 障害者団体と官僚・政治家の交渉②――検討委員会・専門家会議を経て新制度誕生まで
3.1 推進協、所保連の結成と所得保障要求案
3.2 当事者と厚生官僚をつないだ政治の役割
3.3 園田厚生大臣の声明と脳性マヒ者らの交渉の柔軟性
3.4 検討委員会の結成から報告書の完成まで
3.5 山口新一郎と専門家会議
3.6 無拠出制年金と拠出制年金の統合の技術的根拠と年金局官僚の捉え方の違い
3.7 専門家会議の議論と最終報告書
3.8 板山と山口のつながりおよび同感の拡がり
3.9 年金大改正と当事者運動の同時進行
3.10 社会保険審議会と国民年金審議会への諮問
3.11 小括
第4章 障害者所得保障の理論的論争
4.1 高藤理論の展開と障害者手当法試案
4.2 高藤と障害者団体の主張の関連性と差異
4.3 堀と高藤の論争
4.4 憲法第二十五条の二項分離論――堀と高藤の論争の出発点
4.5 堀木訴訟控訴審判決に対する堀の立場および児童扶養手当
4.6 堀木訴訟控訴審判決に対する高藤の立場
4.7 障害者所得保障制度に関する堀の試案および堀・高藤の論争が新制度に与えた影響
4.8 堀と高藤の経歴に見る主張の背景について
4.9 小括
第5章 1985年年金改正に対する利害構造
5.1 障害基礎年金導入に伴う給付額の推移
5.2 国庫負担の基礎年金への集中と積立金運用権限の委譲
5.3 基礎年金拠出への反対の声――共済組合被保険者の立場から
5.4 基礎年金拠出への反対の声――日本社会党の主張
5.5 年金組合からの拠出についての議論
5.6 鎌田論文から各年金組合の拠出金とその影響を見る
5.7 障害基礎年金への拠出に被用者年金組合から反対の声はなかったのか
5.8 小括
第6章 国会対策に障害基礎年金はどのような役割を果たしたか
6.1 1985年年金改正に反対するアクターと障害者団体の動き
6.2 なぜ障害者団体が圧力団体となったのか
6.3 国会対策としての政治の役割――共済年金組合の年金改正への参加の背景
6.4 小括
第7章 考察
7.1 非難回避戦略モデルに基づいた障害基礎年金成立プロセス
7.2 改革の中で先送りされた問題
7.3 小括
終章 本研究のまとめと今後の研究課題
本研究のまとめ
今後の研究課題――少数意見の展開の重要性と政治家・行政官の役割
巻末資料
初出一覧
謝辞
註
文献
索引
著者紹介
前書きなど
序章 先行研究の検討と本研究の目的
(…前略…)
0.4 本書の構成
先行研究の課題について、本書の構成においてどこで何を明らかにしていくのかを、次に明示していく。
第1章では、1985年年金改正までの歴史的経緯から、公的年金改革を行わなければならなかった背景と、1985年年金改正の主要な制度設計上の4つの変更点、(1)基礎年金の導入による年金制度一元化、(2)給付水準の適正化、(3)婦人の年金権の確立、(4)障害年金の改善について、新制度全体の構造を明らかにする。(……)
第2章では、戦後の障害者の自立観の変遷と障害者運動の生成プロセスから始まり、身体障害者実態調査の反対運動をきっかけとして、CP研究会に結集した障害者団体や板山が障害基礎年金の原形と言われる最終報告書をまとめるまでの経緯について述べていく。(……)
第3章ではCP研究会を引き継いだ障害者の生活保障問題検討委員会(以下、検討委員会)、さらに具体的な障害者所得保障の検討の場であった障害者生活保障問題専門家会議(以下、専門家会議)の最終報告書提出を経て、1983(昭和58)年11月、林厚相による年金改革案の審議会への諮問に至るまでの、当事者の所得保障改革運動と年金局官僚の貢献を中心に先行研究にはない以下の諸点を明らかにする(……)
第4章では、1981(昭和56)年の国際障害者年前後から活発になった障害者所得保障に関する研究者の議論から障害者団体や厚生省の立場を明確にしていく。(……)
第5章では1985年年金改正で基礎年金への国庫負担の一元化に伴う大蔵省と厚生省の利害関係、さらには期待給付額削減の影響を受けた被用者年金組合や被保険者の立場、その背後に位置付けられる社会党や労働組合などの1985年年金改正への思惑を明らかにしていく。(……)
第6章では、第5章で明らかにした不利益を被るはずの被用者年金組合の被保険者等の反対アクターがなぜ最終的に賛成に回ったのか、反対意見を持ったアクターに対して、障害基礎年金はどのような役割を持ったのかを明らかにしていく。(……)
第7章では、第6章までの障害基礎年金の成立プロセスの中で解明された複数の経緯について非難回避戦略モデルを用いて考察していくとともに、成立プロセスの中で残された課題についても言及していく。(……)