目次
まえがき
第1章 戦争
美術品をめぐる最大のスキャンダル――「黄金のアデーレ 名画の帰還」
ホロコーストを免れ、生き延びたユダヤ人――「ヒトラーを欺いた黄色い星」
ナチス将校になりすました脱走兵――「ちいさな独裁者」
ひっくり返るのは歴史か、あなたの常識か――「主戦場」
現代に生きる川柳作家――「鶴彬 こころの軌跡」
満洲に置き去りにされた、残留孤児――「嗚呼 満蒙開拓団」
闇があるから光がある――「小林多喜二」
ホロコーストを生き延びたピアニスト――「戦場のピアニスト」
第2章 基地
軍隊を放棄した国家――「コスタリカの奇跡 積極的平和国家のつくり方」
なぜ世界で基地が増え続けているのか――「誰も知らない基地のこと」
沖縄辺野古基地反対の闘い――「戦場ぬ止み」
核ミサイル基地を止めた一〇年間――「グリーナムの女たち」
第3章 原発
原発が生活や人権を破壊した――「福島は語る」
原発ゼロを決めたドイツ――「モルゲン、明日」
第4章 民主主義
トランプの当選を予告した――「華氏119」
気高い良心の叫び――「君が代不起立」
CMは世界を変えられるか――「NO」
メディア対権力――「新聞記者」
北朝鮮帰国事業の理想と現実――「かぞくのくに」
報道の自由を!――「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」
ウソを暴き、真実に執念を!――「記者たち 衝撃と畏怖の真実」
「天安門事件」の真の姿――「亡命」
第5章 差別
中東の貧困と移民問題に挑む――「存在のない子供たち」
人権回復を訴え続けた闘いの記録――「谺雄二 ハンセン病とともに生きる」
植民地支配、天皇制への反逆――「金子文子と朴烈」
不法移民問題に切り込んだ――「闇の列車、光の旅」
イギリスで起きたこと、それは日本の姿だ――「ピケをこえなかった男たち」
心をえぐられた真実の告白――「沈黙 立ち上がる慰安婦」
日本のシンドラー――「命のビザ」
誰が教室を窒息させるのか――「映像‘17 教育と愛国 ~教科書でいま何が起きているのか~」
史上初めて在日問題を映画化――「伽?子のために」
第6章 裁判
冤罪青春グラフィティ――「獄友」
生涯かけて「水俣病」を問うた土本典昭――「水俣病シリーズ」
ウチらの命はなんぼなん?――「ニッポン国VS泉南石綿村」
「凡庸なる悪」アイヒマンを追究――「ハンナ・アーレント」
第7章 ジェンダー
世界を変えたのは平凡な女性たち――「未来を花束にして」
「天才か怪物か」知られざるドキュメント――「あしたはどっちだ、寺山修司」
思想に、行為に自由に生きた大杉栄――「エロス+虐殺」
第8章 貧困
中国出稼ぎ労働者の愛おしい人間を見つめる――「苦い銭」
密航移民者を救う――「ル・アーヴルの靴みがき」
第9章 独立
沖縄「抵抗精神」の支柱――「米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー」
市民が歴史を動かす――「タクシー運転手~約束は海を越えて~」
世界の未来を変えた革命的生き様――「マルクス・エンゲルス」
若者たちが立ち上がった「雨傘運動」――「乱世備忘 僕らの雨傘運動」
命がけで闘った青春の光と影――「灰とダイヤモンド」
一台のバイクに二人で南米大陸縦断――「モーターサイクル・ダイアリーズ」
サンダースに負けない山本太郎――「Beyond the Waves&山本太郎トーク」
あとがき
前書きなど
まえがき
(…前略…)
奇しくもコロナ問題と重なり、私がこの本を通して読者に伝えたかったことがより鮮明に見えてきたように思う。いま、世界で起きていることは、人間の幸福や健康を犠牲にして、ひたすら経済を追い求めてきた結果である。その意味から、本書で紹介した作品のそれぞれが、私たちに訴え、多くの警鐘を鳴らしているように思う。
例えば「乱世備忘」の節でも取り上げたが、香港の人びとは決して諦めることなく、自分たちの主張を貫き、全力でぶつかり、行動している。一時的に武力で抑えられたように見えても、最近の全人代(中国全国人民代表大会)による「香港国家安全法」の制定に対するデモにおけるように、彼らは命がけで闘っている。
本書で私は、戦争に突き進んだ過去への深い反省から、新しい社会創造を生むことを願い、さまざまな映画を紹介しようと思う。各章でまとめたように、どのテーマも無視できない問題を孕んでいる。これらの問題を、映画とともに考えてもらえれば幸いだ。
なお、古くから現代まで、本書で扱った作品のほとんどは、DVDでいつでも好きな時に、何回も観ることができる。私も映画の奥深さや美しさ、訴求力に感動しながら、繰り返し鑑賞している。