目次
序文
はじめに:地域と都市――より確かな生産性と幸福度の可能性を手にする
要約
読者への指針
第Ⅰ部 国の競争力の原動力としての地域
1章 変化する地域格差
2章 経済的な地域格差の拡大と縮小
3章 生産性の向上と地域差
4章 どこで労働生産性の向上は起きているのか?
5章 地域内および地域間での生産性の空間的な差異
6章 研究開発と特許からみた地域のイノベーション
7章 地域における起業・創業
8章 都市―農村間にみられる創業の地域差
9章 経済活動と創業を牽引する首都圏
10章 地域における創業と雇用創出
第Ⅱ部 幸福度の地域差
11章 教育
12章 サービスへのアクセス
13章 世帯所得
14章 居住の状況
15章 就労
16章 健康状態
17章 治安
18章 市民参加とガバナンス
19章 環境
第Ⅲ部 人口動態と地域における包摂
20章 地域の人口と時系列変化
21章 地域の老年従属人口比率
22章 人口の地域間移動
23章 地域の移民人口と時系列変化
24章 地域の移民人口の年齢と従属率
25章 地域における移民の統合:教育成果
26章 地域における移民の統合:労働市場成果
27章 教育および労働市場成果のジェンダー差
28章 労働市場における移民女性の統合
第Ⅳ部 都市と国民経済
29章 OECD諸国における都市人口
30章 大都市圏内部での郊外化と土地利用
31章 国民経済に対する大都市圏の寄与
32章 大都市圏における世帯収入
33章 都市における所得の不均等と貧困
34章 都市における所得によるセグリゲーション
35章 都市におけるサービスへのアクセス
36章 都市における大気の質
第Ⅴ部 地方政府の財政と投資
37章 地方政府の支出
38章 分野別にみた地方政府の支出
39章 経済機能別にみた地方政府の支出
40章 政府レベル別の支出責任
41章 地方政府の投資
42章 機能別にみた地方政府の投資
43章 地方政府の投資:傾向と課題
44章 地方政府の歳入
45章 地方政府の債務
付録A 地域と機能的都市地域の定義
付録B 出所とデータ記述
付録C 指標と推計方法
付録D 地方政府の財政
監訳者あとがき
前書きなど
監訳者あとがき
OECD Regional at a Glanceは、2005年からおおむね隔年で刊行されており、本書はシリーズ7冊目となる。今回のバージョンが取り上げている特徴的な内容をキーワード的に挙げるならば、それは移民の社会統合、ビジネスの開廃業、大都市圏における不平等と貧困の3つである。このうち、移民に関する事柄を取り上げて、本書から明らかになる知見と、それが現在そして未来の日本に対して示唆することを考えてみたい。
日本は先進国にしては例外といえるほど、外国人労働力の導入に対して慎重な姿勢をとり続けてきた。78ページにあるとおり、いまではOECD地域の総人口の約10%は移民(外国生まれの人口)である。これに対して、日本の外国人人口比率は2%強にとどまる。「単一民族国家」というのが幻想であるにしても、日本はエスニシティの面で均質性の高い社会であることは確かである。似通った生活様式や考え方を多くの人が共有する社会に暮らす私たちは、外国人という「よそ者」の増加によって、「身内同士」の均質性が失われることに潜在的な不安を持っているといえる。
(…後略…)