目次
日本語版刊行によせて
謝辞
第1章 科学者の視点から見た教育
はじめに
1 アートから科学へ
2 PISAの始まり
3 現状肯定に終止符を打つ「PISAショック」
政治的怠慢のコストの上昇
4 危機に瀕していること
個人や国にとっての教育とウェルビーイング
過去に学ぶのではなく、子どもたちの将来のために備える
インスピレーションを求めて
第2章 幾つかの神話を暴く
はじめに
1 貧しい子どもは成績が悪い。これは運命なのか
2 移民は学校システムのパフォーマンスを低下させるのか
3 より多くのお金を使えば教育は成功するのか
4 クラス規模が小さいほど成績が良くなるのか
5 学習時間が多いほど成績が良くなるのか
6 持って生まれた才能で教育の成功が決まるのか
7 文化的背景は教育に大きな影響を及ぼすのか
8 成績の良い生徒が将来教員になるべきか
9 能力別クラスで成績が良くなるのか
第3章 優れた学校システムは何が違うのか
1 成功した学校システムとは
2 教育を優先する
3 全ての生徒が学び、高い水準に達することができると信じる
4 高い期待を示し、その意味を明確にする
資格取得のためのテスト
カリキュラム設計のためのテスト
5 質の高い教員を採用し定着させる
質の高い教員を引きつける
質の高い教員を育てる
教員のスキルをアップデートする
6 独立した責任ある専門家としての教員
7 教員の時間を最大限に生かす
広島で体験した創造的な学び
8 教員、生徒、保護者を一つにする
生徒のウェルビーイングに焦点を当てる
9 有能な教育リーダーを育てる
10 学校の自律性を適切にする
11 管理から職業的な説明責任体制へ
信頼の重要性
誰が彼女を素晴らしい教員と呼ぶか?
責任を取る、……どこが?
12 一貫したメッセージを示す
シンガポールを端的に語る
13 より多くではなく、より賢く支出する
14 成績上位5か国の教育システムのスナップショット
シンガポール
エストニア
カナダ
フィンランド
上海
第4章 なぜ教育の公平性はわかりにくいのか
はじめに
包摂的な社会進歩に向けて
1 機会均等をめぐる闘い
リソースとニーズの適合
生徒自身が選び、決めるということ
2 より公平なシステムを作るための政策
フランスの舞踏会からの招待
ニュージーランドの多様性とパートナーシップの素晴らしさ
保護者を巻き込む
3 学校選択と公平性の両立
香港の教育改革
ベルギーのフランドル地方の学校選択
オランダの学校間および学校内部の多様性
学校選択
公立、私立、官民連携
バウチャーの難しさ
4 大都市、大きな教育機会
5 移民の子どもたちへの支援
6 根強く残るジェンダーギャップ
7 教育と過激主義の闘い
「グローバル・コンピテンシー」が意味するもの
建設的な議論の場としての学校
第5章 教育改革の実現
1 なぜ教育改革はこんなにも難しいのか
2 改革の成功に必要なこと
3 「正しい」アプローチの多様性
4 進むべき方向を定める
5 合意形成
6 教育改革に教員が参加する意味
7 試行プロジェクトと継続的な評価
8 システム内の能力開発
9 タイミングが全て
10 教員組合と共に改革する
第6章 今何をするか
1 不確実な世界のための教育
2 差別化要因としての教育
3 加速する時代で知識、スキル、人間性を育てる
点と点を結ぶ
情報の批判的な消費者であることを学ぶ
他者との協同
4 価値観を教育でどうとらえるか
5 成功した学校システムの変貌
6 タイプの異なる学習者
7 21世紀の教員
教員への高い期待、ますます高まる期待
教育を支えるデジタルテクノロジー
共有する文化へ
専門性を獲得する
8 学校内外のイノベーションを促進する
9 効果的なシステム・リーダーシップの育成
10 評価の再設計
PISAはどう進化していくか
11 前進しながら外部を見渡す
参考文献・資料
監訳者あとがき
前書きなど
日本語版刊行によせて
この本に書いてある様々な洞察を、様々な日本の教育現場を具体的に改善していくための参考にしてほしい。そう思って、我々は、日本語版の刊行を思い立った。
教育論議は本当に難しい。教育は、学校や大学のみならず家庭、地域、職場、ネット上などのあらゆる場所で、あらゆる人々の間で行われる。誰もが誰かから教育を受けたことがあり、誰かを教育した経験がある。誰もが、自らの経験を過度に美化したり、否定したり、一般化したりするから、教育論議は難しくなる。これまでも、教育に影響力を持つ人々の思い込みや思いつきが、多くの混乱を現場にもたらしてきた。
こうした混乱に終止符を打つのが、この本である。著者のアンドレアス・シュライヒャー氏は、現在、OECD教育・スキル局長で、2018年には世界80の国と地域が参加するまでに成長したPISAを生み育ててきた、世界の教育に最も影響力を有する人物と言っても過言ではない。この本は、氏が、世界中を駆け巡り、様々な教育関係者と対話を重ね、調査と視察を重ねたなかで、氏が確信を得た知見とエビデンスを、我々に共有してくれていて、専門家の間でも議論が分かれる諸課題・難問に対する明快な答えと道標を提供してくれている。
(…後略…)