目次
刊行にあたって
最近の子ども家庭相談・虐待対応システムに関する国の動向
実践力を向上させるために必要なもの 演習、事例検討、ロールプレイ
I 子どもの成長・発達と生育環境
1 子どもの成長・発達の特性
2 生育環境とその影響
3 子ども及び保護者の精神や発達等の状況
II 子どもの生活に関する諸問題
1 いじめ、子どもの貧困等の社会的問題
2 非行、ひきこもり、不登校、家庭内暴力、自殺等の行動上の問題
III 子どもと家族の暮らしに関する法令と制度の理解と活用
1 子ども・子育て支援制度
2 ひとり親家庭の支援制度
3 子ども・若者支援制度
4 障害に関する法令と制度
5 障害種別と障害支援区分
6 生活保護制度・低所得者対策制度
IV 子ども家庭相談援助制度及び実施体制
1 子ども家庭の問題に関する現状と課題
2 子ども家庭福祉に関する法令及び制度
3 国、都道府県(児童相談所)、市区町村の役割
V 子どもの権利擁護と倫理
1 子どもの権利の考え方
2 児童福祉法にみる子ども家庭福祉の理念
3 児童の権利に関する条約
4 国際連合「児童の代替的養護に関する指針」
5 子どもの権利侵害
6 子ども家庭福祉における倫理的配慮
7 記録の取り方・管理
8 個人情報の取り扱い
VI 子ども家庭支援のためのソーシャルワーク
1 ソーシャルワークとは
2 ソーシャルワークの歴史
3 ソーシャルワークの原理と倫理
4 ソーシャルワークの方法
5 ソーシャルワークの方法論に基づいた子ども・家庭支援のあり方
6 ケースに関する調査のあり方
7 子ども・親・妊婦・家族、地域のアセスメント
8 子ども・家族とその関係性のアセスメント
9 ケースの問題の評価の方法
10 支援計画の立て方
11 ケースの進行管理・再評価
12 チームアプローチ
13 ケースカンファレンス(事例検討)
14 妊娠期におけるソーシャルワーク
VII 子ども虐待対応
1 子ども虐待の一般的知識(現状と課題を含む)
2 子ども虐待対応の基本原則(基本事項)
3 子ども虐待の発生予防
4 子ども虐待における早期発見・早期対応
5 通告の受理、安全確認
6 通告時の聞き取り方
7 通告時の危機アセスメント、初期マネージメント
8 調査
9 子ども虐待における保護・支援(在宅支援・分離保護・養育・家庭支援)
10 子ども虐待事例のケースマネージメント(アセスメント・プランニング)
11 子ども虐待の重大な被害を受けた事例(死亡事例を含む)の検証の理解
12 虐待・ネグレクトが子どもに与える心理・行動的影響
13 子ども虐待事例の心理療法
14 事実や所見等に基づく虐待鑑別・判断
15 被害事実確認面接についての理解
16 警察・検察など関係機関との連携の必要性・あり方
17 特別な支援が必要な事例(代理によるミュンヒハウゼン症候群(MSBP)、医療ネグレクト等)の理解
18 乳児揺さぶられ症候群(SBS)、虐待による頭部外傷(AHT)への対応
19 性的虐待の理解と初期対応
20 性的虐待の調査、刑法改正
21 性的虐待被害児の理解と対応・治療
22 居住実態が把握できない児童への対応
23 無戸籍児童への対応
VIII 子ども家庭相談の運営と相談援助のあり方
1 子ども家庭相談の業務
2 相談受理のあり方
3 支援決定の流れ
4 保護者理解と支援
5 面接相談の方法と技術
6 子どもの面接・家族面接・家庭訪問のあり方
IX 要保護児童対策地域協議会の運営
1 要保護児童対策地域協議会とは
2 関係機関との適切な連携・協働(取り方・あり方)
3 多機関ネットワーク
4 各関係機関の特徴と役割
5 関係機関との協働と在宅支援
6 医療機関との連携
7 要保護児童対策地域協議会の運営・業務
8 関係機関への説明の理論性と正当性の必要性
9 調整機関の役割
10 他市区町村及び管轄外児童相談所との連携
X 会議の運営とケース管理
1 個別ケース検討会議の効果的な実施・運営
2 進行管理を行う意義と目的
3 要保護児童対策地域協議会で扱うケースの管理
XI 児童相談所の役割と連携
1 児童相談所の業務
2 児童相談所の組織と職員
3 援助決定の流れ
4 市区町村子ども家庭相談と児童相談所との協働
XII 子どもの所属機関の役割と連携
1 学校組織
2 教育機関との連携のあり方
3 保育所等の利用と連携のあり方
4 所属機関における特別なニーズのある子どもへの支援
XIII 母子保健の役割と保健機関との連携
1 母子保健における視点
2 母子保健に関する法令と施策
3 母子保健事業の展開と実務
4 母子健康手帳の活用
5 特定妊婦の把握と支援
6 保健所・子育て世代包括支援センターとの連携のあり方
XIV 社会的養護と市区町村の役割
1 社会的養護制度の概要
2 社会的養護制度(児童養護施設)
3 社会的養護制度(乳児院)
4 社会的養護制度(児童自立支援施設)
5 社会的養護制度(母子生活支援施設)
6 社会的養護制度(児童心理治療施設)
7 社会的養護制度(里親)
8 養子縁組制度
9 社会的養護における永続性・継続性を担保するソーシャルワークのあり方
10 社会的養護における権利擁護(被措置児童等虐待、苦情解決、第三者評価)
11 生活支援と治療的養育
12 年長児童の自立支援のあり方
13 社会的養護と児童相談所等の関係機関との連携
14 移行期ケアのあり方
15 ファミリーソーシャルワーク及び家庭復帰支援のあり方
16 家庭復帰と市区町村の役割
資料集
「児童福祉司等の義務研修テキスト作成に関する調査研究会」委員一覧
「要保護児童対策調整機関専門職研修テキスト」執筆者一覧
前書きなど
刊行にあたって
深刻化する児童虐待に対応するために、法制度の改正及び新たな施策が推し進められている。しかし児童相談所における児童虐待相談件数は増加し続け、社会全体でとりくむ重要な課題となっている。その対応の最前線に立つのは、児童福祉司及び要保護児童対策地域協議会調整担当者である。これら専門職は、子どもの最善の利益を第一義的に重視するために、まずは親子が地域で共に生活するための支援を模索する。しかし現実には相反する事態が生じる中で、対応には葛藤や混迷が存在する。これを乗り越えて、子どもを守るために、専門性のさらなる向上が不可欠となっている。
2016年5月27日に成立した「児童福祉法等の一部を改正する法律」(平成28年法律第63号)では、児童相談所及び市町村(特別区を含む。以下同じ)の専門性強化を図る観点から、児童福祉司等について、厚生労働大臣が定める基準に適合する研修等の受講が義務付けられた。これを踏まえ、児童福祉司等に義務付けられた研修等の内容、実施体制等を構築するため、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長(現子ども家庭局長)が開催する「子ども家庭福祉人材の専門性確保ワーキンググループ」において、児童相談所等の専門性強化を図るための検討を行い、研修等の到達目標やカリキュラム等が策定された。このカリキュラム等を基に、研修等の基準等について、平成29年厚生労働省告示第130号、同第131号、同第132号、同第134号において定められた。さらに、自治体における研修等の実施にあたっての参考とするため、研修等の詳細について、平成29年3月31日付の厚生労働省雇用均等・児童家庭局長第16号通知「児童福祉司等及び要保護児童対策調整機関の調整担当者の研修等の実施について」が示された。2017年度より義務化された研修は、この通知に示された到達目標及びカリキュラム等に基づき、都道府県、指定都市、児童相談所設置市が実施している。
本著は、この義務化された研修について、内容の充実と共有化を図るために、通知に示された科目・細目について、共通して修得する知識(ミニマム)を示す「標準テキスト」として作成した。方法として、全国から研究者、実践者を招聘して研究会を開催し、テキストの内容に関して検討した。多くの学ぶべき内容のうち、限られた時間内で教授する内容について簡潔に整理した。さらにそれぞれが執筆した原稿について、研究会において検討し、精査した。
(…後略…)