目次
序章
第1章 開発途上国の汚職・腐敗問題とは
1 汚職・腐敗の定義
2 途上国の汚職・腐敗の種類と汚職の及ぼす様々な影響
3 途上国の汚職・腐敗の特色と要因
4 クライエンテリズムとレント・シーキング
5 途上国における汚職・腐敗の現状とその影響
6 汚職・腐敗による社会経済的影響
7 途上国政府や援助機関支援事業における汚職・腐敗の機会
8 セクター別における汚職・腐敗の機会
(1)警察汚職・腐敗
(2)教育セクターの汚職・腐敗
9 市民が起こす汚職問題
第2章 開発途上国の汚職・腐敗対策への新たな変化と実証研究
1 汚職・腐敗問題に対する認識の変化
2 1990年代以降の新たな汚職・腐敗研究
(1)汚職・腐敗と経済成長・投資、経済・産業政策に関する研究
(2)汚職・腐敗と司法・制度面等に関する研究
(3)汚職・腐敗と公務員制度・賃金に関する研究
(4)汚職・腐敗と政府規模そして地方分権に関する研究
(5)汚職・腐敗と政治体制と民主主義に関する研究
(6)汚職とプレスおよび市民社会の活動に関する研究
(7)汚職と貧困に関する研究
(8)汚職とジェンダーに関する研究
(9)ポスト紛争国および脆弱国家と汚職・腐敗
(10)汚職と民間企業に関する研究
(11)汚職と開発援助
(12)汚職・腐敗とその他との関連性についての研究
3 汚職の測定方法と各種ツール
(1)汚職認識度指数(Corruption Perception Index)
(2)世界ガバナンス指標(Worldwide Governance Indicator)
(3)グローバル汚職バロメーター(Global Corruption Barometer)
(4)ステート・キャプチャー指数(State Capture Index)
(5)グローバル・インティグリティ指標(Global Integrity Index)
(6)贈賄支払い度指数(Bribe Payer's Index)
(7)世界銀行企業サーベイ(Enterprise Survey)
(8)国家清廉性システム・アセスメント(National Integrity System Assessment)
(9)国防セクター事業における反汚職指標(Government Defense Anti-Corruption Index)
(10)国別政策制度評価指数(Country Policy and Institutional Assessment)
(11)公共の清廉性指数(Index of Public Integrity)
(12)法の支配度指数(Rule of Law Index)
(13)オープン・バジェット(財政開放度)指数(Open Budget Index)
(14)ビジネス環境インデックス(Ease of Doing Business Index)
第3章 国際社会、市民社会、民間企業による反汚職取り組みの役割と活動
1 国際社会の汚職対策と手法
(1)国際ドナー(援助機関)の役割と汚職対策支援
(2)汚職と闘うための国際規範
2 市民社会の役割
3 民間企業による贈賄防止対策
(1)今日の多国籍企業の不正問題
(2)国際社会を巡る政府の摘発姿勢の強化
(3)民間企業によ反贈賄対策と現状
第4章 開発途上国政府による汚職・腐敗との闘い(パートⅠ:ジョージア、インドネシア、フィリピン、リベリアの事例)
1 ジョージア共和国(サーカシヴィリ政権下における汚職との闘い:2003~2007年)
2 インドネシア(汚職撲滅委員会〈KPK〉)を通じた汚職対策:2003年~現在)
3 フィリピン(アロヨ大統領による汚職との闘い:2001~2010年)
4 リベリア(サーリーフ大統領による汚職との闘い:2006年~2018年1月)
第5章 開発途上国政府による汚職・腐敗との闘い(パートⅡ:ルワンダ)と比較分析
1 ルワンダ、カガメ政権下におけるオンブズマン局を通じた反汚職対策:2002年~現在
2 比較分析
第6章 開発途上国が直面する現状と問題点
1 途上国の反汚職改革に対する現状分析
2 分野別に見た反汚職取り組み成果に対する分析
(1)途上国による反汚職政策と戦略
(2)汚職対策機関
(3)公共サービスの質と公務員の清廉性向上のための制度改革
(4)市民社会の反汚職行動への参加
(5)汚職・腐敗の犯罪化
(6)汚職・腐敗と闘うための国際条約並びに地域間協定他
3 ドナー機関による援助手法と組織的問題点
最終章 過去からの教訓と今後の課題
1 反汚職改革を促進させる要因
2 反汚職改革を阻む要因
3 汚職・腐敗との闘いは成功であったか
4 汚職・腐敗と闘うためのリーダーシップと政治的意志の重要性
5 最後に
あとがき
参考文献
索引
前書きなど
序章
(…前略…)
本書は、途上国や新興国における汚職・腐敗問題に焦点を当て、その種類と構造、そしてそれが生じるメカニズムと、国家開発、民主化、経済成長、紛争などに与える影響、さらには国際ドナー、市民社会、企業の汚職取り組みの役割を概観した後、世界各国の取り組みを紹介し、成功、失敗例を通じて汚職対策の有効性について多角的に分析する。また近年の国際社会の動向と研究成果も紹介し、汚職・腐敗対策を巡る新たな潮流と今日的意義について検証する。開発政治学の側面をより重視した形で「途上国の開発と汚職」に焦点を当てることにより、一国研究ではなく、途上国・新興国の開発を促進させるための反汚職の議論であることを明確にすることにより、読者に対し汚職研究は、経済学や法学以外にも開発政治学の範疇でもあり、同時に国際開発学や国際協力論と深く関連していることも理解してもらいたい。
(…後略…)