目次
はじめに
第Ⅰ部 福島原発事故による被災者の生活問題
第1章 原発避難いじめの実態と構造的暴力[辻内琢也]
1 「原発避難いじめ」の実態
1)中高6年間にわたる犯罪的暴力
2)近隣の大人からのいじめ
3)親子で受けてきた無視・誹謗中傷・暴力
4)テレビや新聞で取り上げられるたびに受けるいじめ
5)転校せざるを得なかったいじめ
2 原発避難いじめ調査
1)調査の概要
2)子どものいじめの概況
3)子どものいじめの内容
4)学校の対応について
5)大人社会に広がるいじめ
3 アンケート自由記述の分析
1)原発いじめの具体的内容
2)原発いじめはなぜいま問題になったのか
4 いじめの構造
1)いじめ定義の変遷
2)いじめの種類とタイプ
3)「いじめ防止対策推進法」の抱える課題
4)原発避難いじめの構造
5 構造的暴力の仕組み
1)不合理な避難・帰還区域の設定
2)作られた安全・安心神話
3)構造的暴力によって生じた社会的虐待
6 原発いじめに対する文部科学省の調査
おわりに
第2章 楢葉町に見る自治体職員の生活実態と新たな課題――帰還できる町・楢葉町[渡部朋宏]
はじめに
1 原発事故発生からの避難経過
2 原発事故避難における職員対応の実態と苦悩
3 町の復興に向けた職員の新たな使命
第3章 避難している子どもを支える居場所づくり[江川和弥・戸田典樹]
はじめに
1 震災から7年目の現実
1)「居場所」づくり活動と子どもたちの今
2)大熊に帰れないと決めた子育て世代
2 縮小される被災者支援
3 NPOやボランティアが支えてきた子どもの「居場所」づくり
1)震災後の活動の経過
2)大熊町の子ども支援の枠組みづくり――大熊町地域学習応援協議会の活動
4 大学生と子どもたちの「斜めの関係」と支援のふりかえり
5 「居場所」づくりにおける到達点と課題
おわりに
第Ⅱ部 阪神・淡路大震災とチェルノブイリ原発事故から考える――社会的支援の縮小・住宅政策の問題点と課題
第4章 「借上公営住宅」の強制退去問題を考える[出口俊一]
はじめに
1 「借上公営住宅」とは
2 強制退去策の先頭を走った神戸市の「第2次市営住宅マネジメント計画(案)」
3 歓迎されて導入された借上公営住宅
4 「借上公営住宅」はなぜ20年間であったのか
5 入居者の現状
1)入居者の声
2)きわめて高い高齢化率
6 神戸市のやり方はルールと常識に適っているのか
1)陳情書への対応
2)神戸市と事業者
3)民間家主(オーナー)の意向
4)神戸市と入居者
7 公平性を欠く自治体の政策
1)神戸市会議員の意見
2)「神戸市借上市営住宅懇談会」委員の意見
3)『兵庫県借上県営住宅活用検討協議会 報告書』(2013年3月)
8 借上料― 神戸市「第2次市営住宅マネジメント計画」の説明と実際
9 強制退去策の判断・決定・遂行の責任を問う
10 法治主義を逸脱した退去通知
11 ようやく一部の継続居住を認めた兵庫県と神戸市だが……
12 目標は“希望する入居者の継続居住”
1)神戸市が12団地551戸の「UR借上住宅」を買い取ると発表
2)20年期限は「公営住宅法の要請」なのか
3)取り組み始めて8年
第5章 阪神・淡路大震災後22年にみる住宅政策の課題――「借上公営住宅」入居者退去問題に焦点をあてて[戸田典樹]
はじめに
1 借上公営住宅から退去を迫る兵庫県、神戸市、西宮市
2 阪神・淡路大震災において住宅支援を受けた人たちの状況
3 借上公営住宅からの退去命令を受けた人たち
4 退去命令を受けた入居者の生活を考える
おわりに
第6章 原発被災者の長期支援の必要性――チェルノブイリ原発事故被災者のインタビュー調査を通して[田中聡子]
はじめに
1 チェルノブイリと福島
2 チェルノブイリ法が被災者を支える
3 チェルノブイリ原発事故被災者のインタビュー調査
1)インタビュー対象者
2)プリピャチからの避難
3)第2ゾーンと第3ゾーンで移住しなかったナロジチ
4)インタビュー調査のまとめ
4 福島第一原発事故の被災者を考える上で重要なことは何か
第7章 長期的避難生活を送る子どもを抱える家族への支援を考える[戸田典樹]
はじめに
1 チェルノブイリ原発事故と福島第一原発事故における避難指示
2 両原発事故における被災者を対象とした調査
1)避難指示により避難した人たち
2)避難する状況にありながらも避難しなかった人たち
3)避難の正当性を認められなかった人たち(自主避難者)
4)避難したが帰還してきた人たち
3 考察
おわりに
第8章 福島原発事故避難者問題の構造とチェルノブイリ法[大友信勝]
1 研究の背景と目的
2 福島原発事故避難者問題の現局面
1)帰還政策の現状
2)避難者の意向調査から
3)災害救助法の適用打ち切り
3 避難者問題の構造
1)「自主避難」の背景と要因
2)「自主避難」問題の視点
4 原発事故における避難の視点と位置
1)チェルノブイリ法の特徴
2)ウクライナ政府報告書
3)子ども・被災者支援法
5 チェルノブイリ法の教訓と避難者問題
1)緊急時被曝状況
2)ウクライナ政府報告書と「疫学的手法」
3)チェルノブイリ原発事故調査チーム
6 研究課題
1)「疫学的手法」について
2)「自主避難」問題の背景と構造
3)チェルノブイリ法との比較研究
第Ⅲ部 福島原発事故被災者の夢と希望
第9章 避難者の実質的生活補償へ[津久井進]
1 「生活」を取り戻す
2 賠償の現状
3 補償を阻む3つの課題
1)制度の不備・不存在
2)政府方針
3)公平の原則
4 生活補償を実現するために――災害ケースマネジメント
1)災害ケースマネジメントの必要性
2)仙台市「被災者生活再建加速プログラム」の取り組み
3)一人ひとりに向き合う生活補償を
第10章 米山隆一新潟県知事インタビュー――原発事故、その影響と課題[聞き手:大友信勝・戸田典樹]
福島原発事故およびその影響と課題についての検証――最初の課題は物理的に何が起こったか
健康と生活に及ぼした影響の検証
放射線科医の視点から見えるもの
避難計画をめぐる検証
柏崎刈羽原発再稼働をめぐる動向
代替エネルギーの考え方
福島原発事故避難者への住宅等の支援
避難者への誤解
避難計画公聴会をめぐって
子どもたちが原発事故をみる視点
情報公開と市民的目線で――民主主義を貫き通すということ
おわりに
前書きなど
はじめに
(…前略…)
こうした中、私たちはふたたび、被災者支援の現状と課題を明らかにすべく、本書を企画し、世に問うこととした。第Ⅰ部では福島原発事故による被災者の生活問題に焦点をあて、第Ⅱ部では阪神・淡路大震災、チェルノブイリ原発事故という2つの大災害から、被災者の社会的支援の縮小・帰還政策の問題点と課題を考える。さらに第Ⅲ部では福島原発事故における被災者支援の今後のあり方について提言する。以上の3部構成で、支援策がどのように展開されてきたのかを示し、それを踏まえて社会的支援を今後どのようにして整備していけばよいのかを考えることをねらいとしている。
第Ⅰ部「福島原発事故による被災者の生活問題」では、福島第一原発事故の被災者が抱えている生活問題に焦点をあて、医師、行政職員、NPO法人など支援者の視点から支援課題を提起している。
(…中略…)
第Ⅱ部「阪神・淡路大震災とチェルノブイリ原発事故から考える――社会的支援の縮小・帰還政策の問題点と課題」では、1995年に起こった阪神・淡路大震災と1986年に起こったチェルノブイリ原発事故から教訓を引き出し、福島原発事故における支援に活かそうと考えた。
(…中略…)
第Ⅲ部「福島原発事故被災者の夢と希望」では、住宅支援が見直され、しだいに原子力発電所が再稼動されつつある中で新たな社会的支援、補償のあり方、原子力発電所再稼動について示唆を得ようとした。
(…後略…)