目次
はじめに
Ⅰ ベラルーシの国土と歴史
第1章 ベラルーシという国のあらましとその国土――欧州の中心の平坦な国
第2章 古ルーシ諸公国とリトアニア大公国――スラヴとバルトの混交域
【コラム1】最新科学で探るベラルーシ人のルーツ――Y染色体とミトコンドリアDNA
第3章 ポーランド・リトアニア国家のもとで――「両国民の共和国」の時代
【コラム2】エフロシニヤとスコリナ――ベラルーシ文化の偉人たち
第4章 帝政ロシア時代のベラルーシ――ポーランドとロシアの狭間で
第5章 ベラルーシ共和国が誕生するまで――苦難と逆説に満ちた独立への歩み
第6章 ソ連終焉の地となったベロヴェージの森――スラヴ3首脳による歴史的な陰謀
第7章 〈白〉ロシアとは何か?――「ベラルーシ」の語源について
第8章 ベラルーシとユダヤ人の知られざる関係――「森と湖の国」から「砂漠の国」へ
【コラム3】ベラルーシのタタール人
第9章 シャガールと永遠の故郷ヴィテプスク――シャガール芸術の普遍性
第10章 ベラルーシ出身のユダヤ人がアメリカ音楽を作った――バーリンとチェス兄弟の物語
第11章 首都ミンスクの歴史と現在――戦災から甦った英雄都市
第12章 個性豊かなベラルーシの地方都市――人口5万人以上の都市をすべて紹介
【コラム4】ベラルーシの都市紋章の世界
第13章 ミール城とネスヴィジ宮殿――ベラルーシが誇る世界文化遺産
第14章 ベロヴェージの森とバイソン――絶滅危惧種とベラルーシ人のアイデンティティ
【コラム5】多様なベラルーシに出会う旅
Ⅱ ベラルーシの国民・文化を知る
第15章 土地の人間(トゥテイシヤ)の曖昧なアイデンティティ――ベラルーシ人ってだれ?
第16章 ベラルーシ語の言語学的特徴――東スラヴ語群の一言語として
【コラム6】ルカシェンコ、それともルカシェンカ?――ベラルーシ人の名前
第17章 現代ベラルーシの社会言語事情――危機に立たされるベラルーシ語
【コラム7】ベラルーシ語の市民講座――草の根の言語復興活動
第18章 ベラルーシの民衆文化――古拙と異教文化
第19章 ベラルーシの宗教事情――ロシア正教とカトリックが共存
第20章 ポレシエの民とその言葉――ベラルーシとウクライナの狭間で
第21章 ベラルーシ語とその他の言語の文学――ひとつなぎに語れない文学史
第22章 ノーベル賞作家アレクシエーヴィチの文学の世界――戦争・原発事故・社会主義
第23章 映画で見るベラルーシ――パルチザン映画だけじゃない
第24章 ベラルーシのバレエ文化――芸術性と民族性を兼ね備える
第25章 ベラルーシの若者文化――伝統の中に新しい流行が生まれる
第26章 ベラルーシの食文化――大地の恵みと歴史に育まれた家庭の味
第27章 小国でも存在感を発揮するベラルーシのスポーツ――アイスホッケーやバイアスロンが国技
【コラム8】プロサッカー選手としてベラルーシでプレーした経験
第28章 世界的な美人の名産地――シャラポワを産んだ美女大国
第29章 ベラルーシのファッション事情――伝統的スタイルと現代的スタイル
第30章 首都ミンスクの日常生活――変化する「ソ連的な街」
Ⅲ 現代ベラルーシの政治・経済事情
第31章 国旗・国章・国歌から見えてくるベラルーシの国情――ソ連の名残をとどめる
第32章 アレクサンドル・ルカシェンコの肖像――「欧州最後の独裁者」と呼ばれて
第33章 ルカシェンコ政権下のベラルーシ――政治体制の形成プロセス
第34章 ベラルーシの軍事力――独立と対露関係の狭間
【コラム9】元祖KGB国家のベラルーシ
第35章 ベラルーシ経済の軌跡――表面的な安定と成長の陰で
第36章 製造業立国のベラルーシ――勤勉でまじめなモノづくりへの姿勢
第37章 エネルギー政策のジレンマ――脱ロシア依存が永遠のテーマ
第38章 ベラルーシの農業と食品産業――ジャガイモと乳製品が名産
第39章 様々な指標から読み解くベラルーシ社会――物価・飲酒・離婚
第40章 ソフト開発の拠点として台頭するベラルーシ――戦車ゲームが全世界でヒット
第41章 チェルノブイリ原発事故――ベラルーシ国土の22%が汚染地域
第42章 ベラルーシとロシア・ウクライナの関係――東スラヴ3兄弟の関係力学
【コラム10】ベラルーシのなかのロシア――地図に残された一粒の滴が語る歴史
第43章 対立から和解に向かうベラルーシと欧米の関係――EUは制裁を解除
第44章 ポーランドから見たベラルーシ――ロシアと欧州の間で外交関係を模索する両国
第45章 ベラルーシとバルト三国の関係――リトアニアとの関係が特に密接
Ⅳ 日本とベラルーシの関係
第46章 ベラルーシ出身の初代駐日ロシア領事ゴシケーヴィチ――その生涯と晩年の地を訪ねて
第47章 日本とベラルーシの二国間関係――外交と経済関係
第48章 仙台市とミンスク市の交流の軌跡――姉妹都市提携に至る経緯とこれまでの交流実績
第49章 日本とベラルーシの文化交流――日本文化情報センターの取り組み
【コラム11】ベラルーシにおける武道
第50章 チェルノブイリ支援を通じた日本とベラルーシの絆――被爆国としての草の根支援
おわりに
ベラルーシを知るための参考文献
地名・人名索引
前書きなど
はじめに
ベラルーシ共和国は、ソ連邦の解体に伴い1991年暮れに独立した新興独立国です。大国ロシアと欧州の狭間に位置する、人口約950万人のこの小国は、日本では決して知名度が高くありません。ただ、世界的な芸術家のシャガールを生み出したこと、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチが2015年のノーベル文学賞を獲得したことなどから、文化的な観点からこの国に関心を抱く方はいらっしゃるかもしれません。美人の女性が多いとか、アレクサンドル・ルカシェンコ大統領という「欧州最後の独裁者」のいる国というイメージもあるでしょうか。2011年に日本で重大な原発事故が発生したため、人類史上最悪の原発事故であるチェルノブイリ事故の最大の被害地域として知られるベラルーシの経験を学ぼうという方もいらっしゃるでしょう。
ベラルーシという独立国が成立してから四半世紀。この間、日本とベラルーシの間では、決して大掛かりではありませんが、外交、経済、文化、スポーツ、そしてすでに述べた原発関連など、様々な交流が行われてきました。本書は、いわゆる研究者に加えて、そうした各分野でベラルーシとの交流にかかわってきたスペシャリストの皆さんの参画も得ながら、それぞれの観点から見たベラルーシを語っていただくことを主眼に、編集したものです。とはいえ、なるべく多様な執筆者にご参加いただこうと最大限の努力はしたものの、日本のベラルーシ研究者・関係者の層は決して厚くないので、結果的に編者の書いた章の数が多くなってしまいました。その点は、どうぞご容赦ください。
(…後略…)