目次
はしがき
凡例・略語
第1章 国籍の基礎知識
第1節 国籍とは何か
第2節 国籍の決定基準
第3節 残された諸問題
第4節 国籍と戸籍の関係
第5節 国籍をめぐる誤解
第6節 未承認国(政府)の国籍法の適用
第2章 重国籍の防止と容認
第1節 国籍選択
第2節 国籍留保
第3節 帰化とは何か
第4節 帰化における重国籍防止条件
第5節 外国への帰化と日本国籍の喪失
第6節 重国籍の弊害
第7節 ヨーロッパ諸国の立法
第3章 国籍法上の婚外子差別の撤廃
第1節 婚外子の国籍
第2節 国籍法違憲判決
第3節 国籍法改正
第4節 残された課題
第5節 ヨーロッパ諸国の立法
第4章 無国籍の防止
第1節 アンデレ事件
第2節 「父母がともに知れないとき」
第3節 逆転勝訴の最高裁判決
第4節 児童養護施設の無国籍児
第5節 ヨーロッパ諸国の立法
付録1 国際結婚をした家族の声
付録2 自由人権協会講演
判例索引
先例索引
事項索引
前書きなど
はしがき
(…前略…)
本書は、これらの問題を「家族と国籍」という視点から解説するものである。これらの背景にあるのは、家族関係の国際化であり、その進展期から安定期に入って、どのような不都合が日本の国籍法に生じているのかを考えていきたい。
本書では、まず「国籍の基礎知識」という章を設けた(第1章)。そこでは、通常の解説書のように、国籍法を体系的に記述するのではなく、そもそも国籍とは何かという問題意識に沿って、そこから派生する諸問題を考えてみた。続いて、「重国籍の防止と容認」(第2章)、「国籍法上の婚外子差別の撤廃」(第3章)、「無国籍の防止」(第4章)という三つの問題を取り上げた。これらは、まさに家族関係の国際化に伴って、わが国が直面している課題である。
私は、1990年代前半から、アンデレ事件など多数の国籍裁判に関わった経験を踏まえ、かつて『家族と国籍―国際化の進むなかで』(有斐閣、1996年初版、2003年補訂版)を出版した。その後、国籍法違憲訴訟に関わり、2008年に最高裁大法廷の違憲判決を得た当時は、改訂など考えもしなかったが、2016年9月以降の国会での重国籍問題の議論、およびそれに関するメディアからの取材に刺激を受けて、明石書店から本書を出版することにした。
『家族と国籍』という書名を維持しながらも、前著の初版から20年以上、補訂版からも10年以上経っていることを踏まえ、サブタイトルは、「国際化の安定のなかで」と変更した。もちろん内容も、この間に私が公表した著書や論文などを取り入れて、全面的に改訂した。目次だけを見たら、あまり変わらないと思うかもしれないが、内容を読めば、それに気づくだろう。ただし、本書は一般の読者を対象とするから、なるべく平易な言葉で書くという方針は、前著のままである。
(…後略…)