目次
はじめに[猪口孝・村山伸子・藤井誠二]
第1章 人々は自分たちの生活の質をどのようにとらえ評価しているのか――幸福の研究における最近の進展[ドー・チュル・シン]
1.2つのアプローチ――客観的と主観的
2.主観的アプローチの基礎となる前提
3.概念化――主観的幸福の構成要素
4.測定――尺度
5.これまでにわかったこと
おわりに
第2章 食とQOL――生活の質を高めるおいしさの条件とは[田村朝子]
はじめに――食事とおいしさ
1.味覚とおいしさ
2.高齢者の食事(介護食)
おわりに――QOLを高める食事・おいしさとは
第3章 健康・生活習慣とQOL――運動や健康実践と生活の質との関連性に注目して[小林敏生]
はじめに
1.健康とQOLの関連性
2.健康関連QOL(HRQOL)とは?
3.健康関連QOL(HRQOL)の測定
4.健康関連QOLと身体状況としての生活習慣
5.包括的な健康実践から見た健康行動とHRQOLの関連性
おわりに
第4章 貧困とQOL――貧困と生活の質の関連とは[阿部彩]
はじめに――生活の質と貧困
1.貧困の概念
2.QOL概念と貧困概念の相違点
3.経済状況とQOL
おわりに――お金を持っていることはQOLの条件か
第5章 家族・社会関係とQOL――生活の質を高める「人との関わり」とは[鈴木佳代]
はじめに
1.家族の機能
2.家族同居とQOLの向上
3.家族とQOLとの関係の複雑さ
4.家族が「危険な資源」になるとき
5.変わりゆく家族
6.家族内外の社会交流とQOLの向上
7.家族形態・情緒的サポートの授受と高齢者の主観的健康感
おわりに――家族内外の資源をQOLの向上につなげる
第6章 地域社会とQOL――ソーシャル・キャピタルと心の健康[引地博之・近藤克則]
はじめに
1.ソーシャル・キャピタルをとらえる2つの視点――個人レベルと集団レベル
2.ソーシャル・キャピタルと健康
3.災害とQOL
4.PTSD発症のメカニズム――行動分析学の視点から
5.PTSD発症のリスク要因
6.PTSDの治療策と治療抑制・促進要因
7.ソーシャル・キャピタルはPTSDを緩和するか?――疫学研究の知見から
8.社会的な結びつきがPTSDの予防・緩和に寄与するメカニズム
9.地域社会のソーシャル・キャピタルとPTSDをめぐる研究課題
おわりに
第7章 住環境とQOL――生活の質を高める住環境とは[山中知彦]
はじめに
1.住環境の歴史的形成過程
2.わが国の現代の住環境価値の評価指標とQOL
3.東日本大震災によって問い直される住環境価値
おわりに
第8章 社会福祉政策とQOL――どのような社会福祉政策が生活の質を高めるか[小澤薫]
はじめに
1.社会保障の理念の変化
2.現在の生活・収入と支出
3.「普通」に暮らしていくためには
おわりに
第9章 経済政策とQOL――生活の質を高める経済成長とは[李佳・藤井誠二]
はじめに
1.豊さの総合的評価
2.アジアの経済発展と「生活の質」の向上
おわりに
第10章 QOLを高める条件――本書からわかったこと[村山伸子]
はじめに――本書の特徴
1.各章からわかったQOLの条件
2.QOLを高める条件の全体像
おわりに
第1章原文
How People Perceive and Appraise the Quality of Their Lives: Recent Advances in the Study of Happiness and Wellbeing[Doh Chull Shin]
1.Two Approaches: Objective and Subjective
2.Premises Underlying the Subjective Approach
3.Conceptualization: Constituents of Subjective Wellbeing
4.Measurement: Scales
5.What Has Been Found So Far
Concluding Remarks
索引
前書きなど
はじめに
「人間のQOL / Happiness / Well-being を高める条件」とは何か? 本書はこの難題に、できるだけ広い視野から、多面的に考えるという意味で、挑戦的な書籍である。各分野で第一線で活躍されている研究者に執筆いただいている点でも注目すべき書籍といえる。
(…中略…)
QOL研究にはこのような注意点があることを踏まえ、本書では、まず第1章で生活の質(Quality of Life)に関する研究方法や定義の仕方を整理している。第1章は、もともと英語で書かれた論文を翻訳したものである。原文は本書巻末に収録されているので、読者には、ぜひ原文を読むことをお勧めする。
第2章から第9章までは、QOLを高める条件について、個人レベルから地域レベル、社会全体のレベルへと展開するように体系的に構成されている。第2章では、QOLと食の関係に着目し、QOLを高めるおいしさの条件を探る。第3章では、QOLと健康との関係に焦点を当て、どのような身体や生活習慣の状態がQOLを高めるかについて提言する。第4章では、QOLと貧困との関係について吟味する。第5章では、QOLと家族との関係について論じ、家族はQOLの条件かどうかを探る。第6章では、QOLと地域社会との関係に着目し、Social CapitalはQOLの条件かどうかを論じる。第7章では、QOLと住環境との関係に着目し、どのような生活環境や景観がQOLを高めるかについて提言する。第8章では、QOLと社会福祉政策との関係に着目し、どのような社会福祉政策がQOLを高めるかについて論じる。第9章では、QOLと経済政策との関係に焦点をあて、QOLを高める経済成長について論じる。
最後に、第10章で、QOLを高める条件について、本書からわかったことをまとめる。
(…攻略…)