目次
はじめに
序章 実際に起きた悲劇(Mさんの父親の語り)
第1章 精神障がい者から家族が受ける暴力の実態と結末
第1節 家族への暴力は「6割」で起きる
第2節 家族への暴力:位置づけと特徴
[事例]ある父親の言葉
第3節 暴力を受けた家族のこころ
第4節 暴力の結末「死」
[事例]本当に事故(事件)が起きてしまった(岡田千鶴:母)
第5節 暴力が与えるきょうだいへの影響
[事例]暴力を受けた恐怖と記憶は消えない
[事例]私には自由はない、自分が変わらなくては
[事例]自分は存在しないほうがよいのではないか
第6節 暴力の果て、高齢者虐待
第7節 暴力の連鎖
[事例]家の中に吹く嵐を鎮めたい一心で(岸澤マサ子)
第2章 家族への暴力はなぜ起きるのか
第1節 暴力一般の発生要因
第2節 精神障がい者による暴力の特異性
第3節 精神障がい者による暴力の要因やきっかけ
第4節 暴力が起きやすい時期
[事例]入院して隔離拘束を繰り返す
[事例]病院を変えて、がらりと変わった
[事例]人間不信からひきこもり状態、そして暴力へ
第5節 暴力が起きた時期の体験談
第3章 親が暴力と闘う長い道のり
第1節 家族への暴力の発生と日常化
第2節 家族の葛藤と孤立
第3節 支援を求めて
第4節 家庭崩壊そして決心
第5節 暴力が解決に向かう
第6節 残る傷と癒し
第7節 司法との闘い
[事例]病気を理解した判断を司法に望む(岡田節:父)
第4章 解決に向けてできること
第1節 支援の限界と歪み
第2節 支援者による家族支援:支援者全般の心得
第3節 入院医療:医療者の心得
第4節 地域保健行政:行政関係者の心得
第5節 地域医療・福祉:地域の支援者の心得
第6節 家族が行っている工夫
第7節 家族会
[事例]河上紀子(尼崎市精神福祉家族会連合会)
[事例]竹下信昭(北海道精神障害者家族連合会)
[事例]竹下信昭(北海道精神障害者家族連合会)(つづき)
[事例]川辺慶子(大阪府精神障害者家族会連合会)
[事例]大畠信雄(和歌山県精神障害者家族会連合会)
第5章 過去に暴力があり、リカバリーに成功した事例
第1節 入退院と暴力が繰り返された日々からのリカバリー
第2節 人との関わりで、ひきこもり状態を脱した
第3節 きょうだいと支援者に支えられたリカバリー
最終章 家族への暴力がない社会に向けて
第1節 今と違う方法、違う常識もある!イタリアの経験から
第2節 日本の精神医療と地域支援のこれから
第3節 家族への暴力に向き合って、それぞれが考えること
あとがき
Miss M's Hospital Diary
参考文献
前書きなど
はじめに
本書は、精神障がい者の家族が受ける暴力に関する研究結果をもとに、家庭で暴力が生まれる背景を考察し、日本における精神医療や地域支援のあり方に異論を唱えるものである。家族への暴力があることを認めたうえで、家庭で暴力が生まれない支援のあり方を多くの人に考えてほしいという想いで本書を執筆した。
(…中略…)
本書が扱う、精神障がい者から家族への暴力については、世界的に研究が少なく、A neglected area of research(無視されている研究領域)と言われている。それは社会防衛ばかりに注意を払っていた社会の問題であり、精神障がい者への偏見を助長させたくないために家族や関係者が暴力の事実に蓋をしてきた問題でもある。家族への暴力の発生率を示した研究は、世界で7本しかないと報告されている。私たちの研究がその中の1本だ。研究の蓄積が少ないため、この本で書いていることは結論ではなく、今回の調査を通した考察にすぎない。それでも、私はこの問題の深刻さゆえに、発信しなければいけないと強く思っている。
(…後略…)