目次
監訳者はしがき
序文
要旨
第1章 イノベーティブな学習環境に向けて:学習づくりのリーダーシップ
――OECD事務局
第1節 本書のねらいと背景
第2節 これまでのOECDの調査結果を活かした研究
2.1 スクールリーダーシップとその改善
2.2 TALIS調査が明らかにしたこと
第3節 「なぜ」学習づくりのリーダーシップか
第4節 学習づくりのリーダーシップとは「何」か
4.1 リーダーシップ
4.2 力強くイノベーティブな学習環境をめざす学習づくりのリーダーシップ
4.3 さまざまなレベルと状況
第5節 学習づくりのリーダーシップは「どのように」とられるか
5.1 学習に対する方向感覚を授ける
5.2 専門家の学習
5.3 学習コミュニティを通じて能力を生み出す
5.4 より大きなコミュニティとネットワークを立ち上げる
第6節 学習づくりのリーダーシップを担うのは「誰」か
6.1 校長と管理職が果たす役割
6.2 分散型リーダーシップの配置
6.3 学習づくりのリーダーシップが発揮されるさまざまなレベル
第7節 学習づくりのリーダーシップは「どこで」発揮されるか
7.1 インフォーマル、ノンフォーマルな環境を組み込む学習づくりのリーダーシップ
第8節 学習づくりのリーダーシップは「いつ」発揮されるか
第9節 結論:学習づくりのリーダーシップがめざす方向
9.1 学習のリーダーのための問い
第2章 教育機関における教授を導く実践とマネジメント
――ジェームズ・P. スピレーン
第1節 はじめに
第2節 リーダーシップのエッセンスである教授
2.1 リーダーシップの主題としての教授
2.2 教授とリーダーシップの実践に向けた理解
2.3 社会的性格をもつ教授
第3節 教授を導くための実践に着目して
3.1 個々人の行動を乗り越えて:やりとりを生じさせる
3.2 英雄的なリーダー像を乗り越えて
3.3 実践がおかれた文脈:内部から定義される実践
第4節 診断とデザイン:組織上のインフラと実践
4.1 インフラと実践:組織上のルーティンの事例
4.2 学校組織上のインフラ:要素と特徴
第5節 結論
第3章 変化する世界において学習を導く
――ジョン・マクベス
第1節 はじめに
第2節 リーダーシップの性格
第3節 学習づくりのリーダーシップの五つの原則
3.1 学習コミュニティにおける五つの原則の定着
3.2 自己評価:学習コミュニティの特徴
第4節 変化する学習の文脈
第5節 学校教育を超えた学習
5.1 壁のない学校
5.2 子ども大学
第4章 21世紀型学習をつくるリーダーシップ:シンガポールの成績優秀校を事例に
――クレイヴ・ディモック/デニス・クウェック/ヤンシー・トー
第1節 はじめに
第2節 シンガポールの学校システム
第3節 21世紀型リーダシップモデル
3.1 学校設計モデルを支える逆向きマッピング
3.2 知識基盤型経済のための21世紀型学習成果
3.3 21世紀型学習成果をもたらすカリキュラムと学習経験
3.4 学習経験と成果の提供
3.5 テクノロジーと21世紀型学習環境
3.6 多様な形式の評価方法
3.7 21世紀に向けた組織構造
3.8 核となる新しい指導技術をとるリーダーの育成
3.9 教師の専門性開発の促進
第4節 二つの学校における事例研究
4.1 事例1:フォーティチュード小学校
4.2 事例2:シンガポール女子中等学校
4.3 改革のプロセスとリーダーシップの比較
第5節 結論
第5章 さまざまな学校制度にみる学習づくりのリーダーシップの開発アプローチ
――ターニャ・ヴェストファル=グライター/ジュディ・ハルバート/リンダ・ケイサー/ローサー・サラヴァート/ロネ・レネ・クリスティアンセン/ペア・トロンスモ/スザンヌ・オーウェン/ドリト・トゥービン
第1節 はじめに
第2節 改革の担い手のネットワーク:オーストリアにおける教師のリーダーとしての学習デザイナー
2.1 学習デザイナーのネットワー
2.2 資格付与プログラム
2.3 中心的な戦略
第3節 イノベーティブな学習環境:ブリティッシュ・コロンビア州におけるリーダーシップの開発
3.1 中心的な枠組みとしての学習の原理
3.2 活動を促進するためのイノベーティブな事例
3.3 変革の枠組みとしての「研究のスパイラル」
第4節 ニューヨーク市における学習をめざすリーダーシップの展開と推進
4.1 戦略1:専門家の学習コミュニティを通した協働とイノベーション
4.2 戦略2:分散型リーダーシップの開発のためのコーチング
4.3 戦略3:協働的な教師チームによって研究を進める
4.3 戦略4:生徒の声に耳を傾け、学習の場で発言させる
4.5 協働と活動:ビジョンのさらなる共有へ
第5節 ノルウェーにおける学習づくりのリーダーシップの展開
5.1 ノルウェーのPISAショック
5.2 リーダーシップの重要性
5.3 リーダーシップ、マネジメント、知識基盤型組織
5.4 ノルウェーにおけるリーダーシップの困難と展開
第6節 南オーストラリア州における学習づくりのリーダーシップ
6.1 背景と文脈
6.2 リーダーシップのアプローチ
6.3 実践のコミュニティを通した主導的イノベーション
第7節 システムレベルのイノベーションをめざす学習づくりのリーダーシップ:イスラエルの場合
7.1 システムレベルで成功する学習づくりのリーダーシップの要件
7.2 具体的事例
第6章 カタルーニャにおける学習づくりのリーダーシップの促進と今後に向けた展望
――アンナ・ホロンチ/マリウス・マルティネス/ホアン・バディア
第1節 カタルーニャにおける教育イノベーションの国際化
1.1 学習づくりのリーダーシップが果たす重要な役割:変革への取り組み
1.2 ローカルレベルとインターナショナルレベルとの連携:分散型リーダーシップ
1.3 調査と観察:変革を推進する人々
1.4 ネットワークと相乗効果の創出:教育イノベーション
第2節 学習づくりのリーダーシップ調査研究
2.1 先行研究における概念の明確化
2.2 多様な立場の関係者との取り組みと新しいストラテジー
2.3 学習づくりのリーダーシップに結びつく要素
2.4 結論:学習づくりのリーダーシップとイノベーションを促す研究
訳者あとがき
前書きなど
本書はイノベーティブな学習環境づくりに関するOECDによる一連の研究成果の一部である。学習を中心におき、学習の方向づけや責任を負ううえで「学習づくりのリーダーシップ」は重要である。21世紀に入り複雑性が増し、英雄的なリーダー像を乗り越え、イノベーティブな学習環境をつくりだすリーダーシップが求められている。学習づくりのリーダーシップには多くの人がかかわり、さまざまなレベルにおいて多様な人々と連携することがめざされる。
これらについてはすべて本書において論じられている。本書では国際共同研究に基づいて、学習づくりのリーダーシップに関する概念とその重要性、それを支える多様な次元について明確にし、学習づくりのリーダーシップを促進するためのストラテジーについて論じている。また本書ではオーストリア、オーストラリア、カナダ、イスラエル、ノルウェー、シンガポール、スペイン、英国、アメリカ合衆国の事例を取り上げる。これらの事例では、学習づくりのリーダーシップを「なぜ」「何」「どのように」「誰が」「いつ」「どこで」の視点から、詳細に論じている。この他に、本書では学習づくりのリーダーシップに関する理論的検討をジェームズ・スピレーン、ジョン・マクベス、ルイス・ストール、クレイヴ・ディモックが行っている。
本書は学習環境づくりに関心をもつすべての人に示唆を与えるであろう。特に教師や教師教育担当者、アドバイザーや研究者、ボランティア関係者、教員組合、そして何よりも教育のリーダー自身にとって有益となることを願う。