目次
序章 本巻の趣旨と構成
1.本巻の趣旨
2.本巻の構成
第1章 海外子女の教育
1.「海外子女」の定義
2.海外子女の教育の現状――分布状況
3.海外子女の教育に関するこれまでの研究の概観
3.1 研究全体のレビュー
3.2 海外子女教育研究の経過
4.海外子女教育研究のレビュー
4.1 適応
4.2 異文化接触、カルチャー・ショック、カウンセリング
4.3 異文化体験、文化的アイデンティティ
4.4 異文化理解・国際理解
4.5 バイリンガリズム
4.6 トランスナショナリズム、日本人性、エスニシティ、アイデンティティ
5.異文化間教育学の体系化に向けての課題と展望
第2章 帰国児童生徒の教育――異文化間教育学会の初発の研究課題として
1.課題の設定と背景
2.帰国児童生徒教育に関する研究の変遷
2.1 学会誌創刊以前の研究基盤(1966-1986)
2.2 規範的対立と実証研究(1987-1990)
2.3 構築主義的な研究(1980-1994)
2.4 転換期の帰国児童生徒教育(1991-1999)
2.5 新たな思潮との出会い(2000-2007)
2.6 厳密な実証と多様性の中での相対化(2008-2015)
3.今後の課題と展望
第3章 外国人留学生の教育
1.「外国人留学生」の定義と研究領域
1.1 「外国人留学生」の定義
1.2 「外国人留学生の教育」に対する異文化間教育研究からのアプローチ
2.国家レベルの留学生政策の研究
3.大学レベルの外国人留学生教育の研究
3.1 外国人留学生の教育問題
3.2 留学生アドバイジングの実践と研究
3.3 異文化間相互理解教育の実践と研究
3.4 日本語学校の進路指導の課題
4.個人レベルの適応・ソーシャルスキルなどの社会心理的側面への教育的関わり
4.1 社会文化的適応と留学生教育
4.2 異文化接触場面における対人関係
5.社会文化的な視点による異文化適応支援
5.1 実証研究から教育的介入研究へ
5.2 ソーシャルスキル学習
6.『異文化間教育』の論文の特徴と課題
7.結語
第4章 外国人児童生徒の教育
1.本章の目的と「外国人児童生徒の教育」の概観
1.1 本章の目的
1.2 外国人児童生徒の背景
1.3 外国人児童生徒教育に関する文部科学省の施策
2.「外国人児童生徒の教育」研究の主題の変遷
1990年代半ばから1998年まで(第0期)
1999年から2004年まで(第1期):第13~20号
2005年から2008年まで(第2期):第21~28号
2009年から2015年まで(第3期):第29~42号
3.外国人児童生徒の教育の課題――何が「教育問題」とされてきたか
3.1 1990年代半ばから1998年まで(第0期)
3.2 1999年から2004年まで(第1期):第13~20号
3.3 2005年から2008年まで(第2期):第21~28号
3.4 2009年から2015年まで(第3期):第29~42号
4.外国人児童生徒の日本語教育の課題――異文化間教育学において、何が問題とされてきたか
4.1 文化間移動をする子どもの日本語教育
4.2 『 異文化間教育』にみられる「外国人児童生徒の日本語教育」の研究
4.3 「外国人児童生徒の日本語教育」の異文化間教育研究の展開
5.異文化間教育学における「外国人児童生徒の教育」の展望
第5章 在日朝鮮人の教育
1.在日朝鮮人の教育と異文化間教育学会
1.1 在日朝鮮人の教育に関する背景の説明
1.2 異文化間教育学会と在日朝鮮人教育の遭遇
2.国際理解教育・異文化理解教育としての在日朝鮮人教育の研究
3.多文化教育としての在日朝鮮人教育の研究
4.在日朝鮮人教育の実践の研究
5.その他の議論および関連分野での研究
6.異文化間教育研究としての在日朝鮮人教育研究の特徴と課題
第6章 中国帰国者の教育
1.中国帰国者の教育と異文化間教育
1.1 中国帰国者と日本社会の出合い――ニューカマー時代初期の衝撃
1.2 異文化間教育学における「帰国者教育」研究の変遷
2.「中国帰国者の教育」研究
2.1 「適応」研究の時代(1980年代半ば~1990年代半ば)
2.2 「地域ネットワーク」「生涯発達」研究の時代(1990年代半ば~2000年代半ば)
2.3 「関係性・当事者性」研究の時代(2000年代半ば~2010年代半ば)
3.今後の研究課題
第7章 国際児の教育――グローバル化社会の担い手としての課題と展望
1.異文化間教育と国際児
1.1 国際児とは――定義と現状
1.2 日系国際児をめぐる研究――萌芽と発展
2.日系国際児をめぐる研究の成果と動向
2.1 家族あるいは親子を対象にした研究
2.2 国際児自身を対象にした研究
2.3 国際児の親を対象にした研究
3.「国際児の教育」についての今後の課題と展望
3.1 日系国際児の教育をめぐる研究の問題点と課題
3.2 研究方法の問題――国際児研究の方法
3.3 国際児と異文化間教育学
4.おわりに
第8章 移民の教育
1.はじめに――本章の課題
2.検討対象の限定
2.1 「移民」の概念
2.2 「出移民」と「入移民」
2.3 対象国と対象時代
3.研究枠組みと分析枠組み
3.1 「移民」をテーマとした『異文化間教育』誌掲載論文と研究枠組み
3.2 分析枠組み
4.日本の出移民教育
5.外国の入移民教育
6.今後の研究課題――最近の移民研究からの示唆
第9章 異文化間に学ぶ「ひと」の教育の広がり
1.異文化間教育研究の対象の拡張
2.日本人の小中高生
2.1 小学生に対する異文化間教育の実践研究
2.2 高校生に対する異文化間教育の実践研究
3.青年海外協力隊
4.外国人ビジネスパーソン
4.1 就労場面における異文化間コミュニケーション
4.2 在留外国人のキャリア形成に関する研究
5.日本人教師
6.異文化間に学ぶ「ひと」の広がり――今後の研究の展望
終章 「ひと」の研究の課題と展望
1.各章のまとめより
2.「ひと」の研究の展望
2.1 文化間移動をする「ひと」の人間形成の空間的な連続性と時間的な連続性に着眼することにより、新たな研究主題を設定する
2.2 行為主体である「ひと」にとっての異文化接触の意味を包括的に探究する
2.3 「異質な背景をもつ『ひとびと』の共存」の実現に向け、越境的・統合的に接近する
参考文献
索引
あとがき
執筆者紹介
前書きなど
「異文化間教育学大系」の刊行にあたり
異文化間教育学会は1981年に設立された。学会設立の趣旨には、「異質な文化の接触によって生ずるさまざまな教育の問題を学問対象として取り上げ、その研究を促進しようとするところにあります」と記されている。学会が設立され35年が経過し、本学会では多くの研究成果を蓄積してきた。学会の研究成果を世に問うてきたのが学会誌である『異文化間教育』であり、2015年5月時点で43号を数えるまでになった。その特集テーマをみると、研究主題は多様化し、研究対象も拡大してきた。研究領域としては、コミュニケーション、日本語教育、バイリンガル教育、アイデンティティ、差別・偏見、カウンセリングなどが取り上げられてきた。さらに、多文化教育、小学校の英語教育、総合学習、多文化共生の教育、キャリアといった教育の現代的課題なども取り上げられている。研究対象や主題は多様化しているが、学会設立時の趣旨にあるように、文化間移動をキーワードにして人間形成や発達を文化間や他者との相互作用を通して把握していくという共通の課題意識がその基底にあったといえる。
(…中略…)
本企画の目的は、第1に異文化間教育学会としてこれまでの研究成果を整理分析することで、研究成果の現段階での一定の到達点を示すこと、第2にその検討作業を通して異文化間教育学研究の今後の視点や方向性を示すこと、そして第3に全体を通して異文化間教育学の大系化を図ることである。こうした異文化間教育学の大系化は、これから異文化間教育学の研究・教育を目指す人たちの重要な指針になることはいうまでもないが、多文化化する社会にあってこれまでの本学会の成果を新たな社会づくりに活かすことも可能にすると思われる。
本企画は全4巻からなる。第1巻『異文化間に学ぶ「ひと」の教育』では、「海外子女」「帰国児童生徒」「留学生」「外国人児童生徒」など異文化間教育学が対象としてきた「ひと」とその教育に焦点をあてた。第2巻『文化接触における場としてのダイナミズム』では、家族、小・中・高等学校、大学、外国人学校、地域など異文化間教育が展開する場に焦点をあてた。第3巻『異文化間教育のとらえ直し』では、アイデンティティ、差別・偏見、多文化共生、カウンセリング、言語習得、バイリンガル、異文化間コミュニケーションなど異文化間教育学会が主要な研究主題にしてきたものを取り上げた。そして、第4巻『異文化間教育のフロンティア』では、異文化間教育学の大系化や学的な自立の試み、異文化間教育学の方法論や新しい研究の試みなどを取り上げた。各巻のねらいや構成については、それぞれの巻の序章に詳しく述べられている。
各巻とも最後に参考文献と索引を掲載した。この異文化間教育学大系は、会員はもとより異文化間教育に関心を持つ一般読者や学生などを対象にしている。全4巻の各章・節を理解するための背景知識や基礎的知識を得たり、さらに各巻を読み進め学習を深めたりする上で必要となる文献を巻末に参考文献として掲載した。また、索引についてはキーワードを中心にした。全4巻の各章・節の重要なキーワードを容易に探し出せるように抽出したものである。参考文献、索引ともぜひ、活用していただきたい。
この全4巻を通して、異文化間教育学の大系化を図ることを目指し、タイトルも異文化間教育学大系とした。このシリーズが学会員だけでなく、幅広く多くの方に読んでいただくことで、異文化間教育学が広く浸透し、新たな研究、実践につながることを期待したい。
(…後略…)