目次
はじめに
第Ⅰ部 反転授業を始める前に《準備編》
第1章 反転授業とは
1.反転授業の定義
2.反転授業のイメージ――アメリカと日本を比較して
3.反転授業研究会での反転授業
第2章 反転授業の動画の種類
1.既存の動画利用 その1――MOOC
2.既存の動画利用 その2――カーンアカデミー
3.教師自身が作成する動画
4.反転授業研究会での動画作り
第3章 反転授業で授業はどう変わるのか
1.反転授業で学習の黄金サイクルを崩す
2.反転授業は究極の予習――学習の黄金サイクルを強化する
3.反転授業研究会での学習サイクルの検討
第4章 反転授業はあくまで手段である
1.ICTを用いた授業の落とし穴
2.形式的な反転授業の弊害理由
3.心的態度(Mindset)/方法(Method)/時間(Time)
4.心的態度(Mindset)の構築――教師と生徒の関係が基本
5.反転授業の目的
第5章 反転授業は何を目指すのか
1.生きる力を育む――言語活動を用いての協働学習
2.偏差値に対して体験値を上げる
第Ⅱ部 反転授業の実際《実践編》
第6章 英語の反転授業でできること
1.世界の中の日本の英語教育と反転授業
2.英語の反転授業 実践1――完全習得型
3.英語の反転授業 実践2――サポート型
4.英語教師の3役――CCF(Curator, Catalyst, Facilitator)
5.「反転授業×CLIL」――反転授業の応用例
第7章 数学の反転授業でできること
1.なぜ数学の反転授業を始めたのか?
2.数学の反転授業 デザイン1――反転授業×協働学習
3.数学の反転授業 デザイン2――反転授業×ジグソー法
4.数学の反転授業でできること
5.協働学習を通して生きる力を育む
第Ⅲ部 反転授業で変わる教師の役割
第8章 ICT時代においては教師の存在意義が問われる
1.工場モデルの学校――大量生産・大量消費の時代の人材育成
2.急速に進むグローバル化とITによる社会の変化――知識基盤社会の到来
3.一斉授業、知識伝授型の限界
4.「なぜ自分の教科を教えるのか?」についての問い
5.教師の役割の変化、教育内容の変化
第9章ICT時代における学校の未来、教師の未来、教育の未来
1.ICT時代における学校の未来――破壊的イノベーションの視点から
2.ICT時代における教師の未来
3.ICT時代における教育の未来
第Ⅳ部 反転授業導入のためのQ&A
●反転授業の効果
Q01.反転授業を実施すると、どのような効果があるのですか?
Q02.実際の効果はどのようなものがありますか?
Q03.近畿大学附属高校で反転授業の効果はどうでしょうか?
Q04.反転授業の効果を出すための条件とは何でしょうか?
Q05.反転授業を評価するにはどのような方法がありますか?
●学習環境の整備
Q06.反転授業を行うのにタブレット端末は必要ですか?
Q07.どこに動画をアップロードするのですか?
Q08.協働学習を行うのに特別な教室はありますか?
●動画の作成と利用
Q09.動画を作るのにどのくらい時間がかかりますか?
Q10.動画を作る前にどのような準備が必要ですか?
Q11.どのようにして解説動画の録画をするのですか?
Q12.映像の仕上げはどのようにしますか?
Q13.今一度、動画の作り方の手順を簡単にまとめてください。
Q14.動画の時間はどのくらいですか?
Q15.動画作成ソフトには他にどのようなものがありますか?
Q16.動画を視聴してこない生徒はどのように扱いますか?
Q17.動画の利点には特にどのようなものがありますか?
●反転授業の負の側面
Q18.反転授業をする教師にとって、動画作りなどの負担が増えませんか?
Q19.生徒の負担はどうでしょうか?
Q20.反転授業に負の側面はありますか?
Q21.ICT教育におけるメディアリテラシーの必要性について教えてください。
●学校/同僚/保護者の理解
Q22.反転授業を実施するにあたって、管理職や同僚の理解をどのように得るのですか?
Q23.反転授業研究会は校内だけの研究会ですか?
Q24.保護者の理解をどのようにして得るのですか?
Q25.反転授業は1年中しなければならないでしょうか?
参考・引用文献
おわりに
前書きなど
はじめに
(…前略…)
本書は、4部構成になっています。第Ⅰ部は、《準備編》として反転授業に関する基礎知識(第1~3章)および反転授業の目的と付加価値(第4章・第5章)、第Ⅱ部は《実践編》で、反転授業のより具体的な章で構成されており、2013年度から実施している近畿大学附属高校での英語と数学の反転授業の実践報告です。「英語の反転授業でできること」(第6章)、「数学の反転授業でできること」(第7章)の2章で構成されています。反転授業の枠組みを使って、具体的にどのように授業をしているのかを提示しています。この2教科の実践を読まれると、一口に反転授業と言っても、対面授業での授業展開が異なることに気がつくことでしょう。結局のところ、反転授業とは、講義中心の授業に比べて、生徒のためにできることが実行しやすい授業形式であるということです。この章を読まれた方は、自分自身が考える、生徒のための授業を反転授業で実践されることをお勧めします。
第Ⅲ部「反転授業で変わる教師の役割」は、反転授業を含むICTによる今後の教師の存在意義(第8章)、教育の未来(第9章)について述べています。この2章は、反転授業と直接関わる点は少ないと感じるかもしれませんが、反転授業が氷山の一角だとすれば、その水面下の氷山について述べている章です。反転授業を取り巻く環境やその影響に触れるだけでなく、これからの展望についても検討しています。最後の第Ⅳ部は、「反転授業導入のためのQ&A」になっています。反転授業の効果や動画の作り方を含め、導入に際して知っておくべき点についてわかりやすく説明しています。
本書の対象は、反転授業やICTの利活用に関心を持つ先生方および教育関係者の方、反転授業の実施をサポートしたいと考える一般企業の方、そして教育の未来がどのようになるのかについて興味を持つ一般読者の方々です。加えて、将来は教職に就きたいと考えている大学生にもぜひ読んでいただきたいと思います。さらに、教育のチカラを信じているすべての方が本書を手に取り、教育の可能性について複眼的な視点で考えられることを願います。反転授業の是非を問うことは、「教えることがいかにあるべきか」という本質的な問いでもあります。本書が教育について再考するきっかけとなり、明日からのより良い教育の実践につながれば、著者としてこれ以上の喜びはありません。