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さくいん
訳者あとがき
前書きなど
訳者あとがき
はいどーも。哲学オンチのみなさんこんにちは。っていきなり読者を罵るような書き出しの「あとがき」ってどうなんでしょう。毒蝮三太夫かよ。いや違うんです、これにはわけがありまして。何を隠そう訳者であるこのわたくしこそ、「哲学なにそれ食べられるの?」的なノリで生きてきた張本人なんですな。
でもでも、博士課程(←いちおう在籍してた)の指導教官は哲学系のすごく高名な方で、確かデリダの直弟子だったような、ゼミではリゾームやら純粋理性やら文化相対主義の功罪やら、そりゃもういろんな、こう、ありがたいお話を伺ったような気がするんですよ。なんか、書いてたらだんだん思い出してきた!
でもねえ、なにしろこう、基礎がないじゃないですか。もとい、ないわけですよ私には。だからさっぱり頭に入らない。頭に入らないからますます敬遠する。しかも周りをみればなんだか楽しそうでうらめしい。むむむ、個人の万人に対する闘争勃発。そういうときの時間に限ってものすごーく長く感じたりしません? あげくの果てに在籍期間中ただの一度もゼミ発表をしないでやりおおせたと、まあそういうドクター生活だったんですから。えへん。アレですよ、語り得ぬものには口をつぐめってね。
ま、今でこそこんな風にやさぐれちゃってる私ではありますが、フランス語とはそりゃもう運命的な出会いを果たしたんですよ。なんせ唯一受かったのが仏文科でね、既に一浪してましたからさすがにもう1年ごくつぶしを続けるのもちょっとなあ、ってんでこれも運命かなと。ほんとうは史学科とか心理学科がよかった……ってまあいいかその話は。だいたい史学科と心理学科もぜんっぜん違うし。いいかげんなのは昔からだなあ。ともかくそんな、会話の授業でネイティヴの教師に挨拶するだけでいちいち「(なーにが)ぼんじゅーる!(だよ日本人のくせに)」みたいな「(笑)」的自意識に苛まれていた私にとって、おフランス哲学なんてものはさらにさらに敷居の高いものであって、上部構造にあたる人たちだけが享受し行使する知財であって、だからなるべく近寄らないようにしてきたんです。ずっと。ずうっと。鬼は敬して遠ざけよ、って、あれは中国の大先生のお言葉でしたかね。
ところがですよ。やっぱりこうフランス語の世界てえのは、なんていうんですか、哲学/思想がものすごく偉そ……重要な位置を占めるんですね。いえ「ドイツ語のできないやつに哲学なんかできないよ」なんて言った人もいるとかいないとか、そもそも遥か古代ギリシアの叡智にまでさかのぼって見渡せば現代フランス思想なんてのは先人の発見に注釈を足しているだけに過ぎないのかもしれません。が、それでもやっぱり、フランス研究をしていれば哲学はどうしたって付いて回る。文学であろうと社会科学であろうと、逃れ得ぬ構造になっている。まして博士課程まで進んでおきながら哲学オンチのままだなんて文化資本の持ち腐れだろう、若手研究者の在りかたを手前の勝手で脱構築するんじゃないよ、と周囲からの視線もつらい。気にスンナ!って? だってだって、自己なんてしょせん他者の目に映る自分に過ぎないらしいですよ? おお、劣等生の凡庸さよ!
そんな、父の名にも等しく憎悪していた絶対者たる哲学と去勢されかかった私とのあいだに橋を架けてくれるような本が現れようとは! それが本書であることはもはや申し上げるまでもないでしょう。もちろんこの本ですべてがわかると強弁するつもりはございやせん。それでも私のような哲学オンチさんには長年のコンプレックスからの解放を、すでに高い見識を備えた哲学エリートさんには新鮮な換骨奪胎の手練手管を、コミックと主観に満ちた解説文の見開き2ページという本書ならではの仕掛けがもたらしてくれるものと確信いたしております。ありゃ、ここまで読んでもまだ疑ってる? そんなエリスのピュロンも真っ青のアナタ! 迷わず行けよ、行けばわかるさ(←アントニオじゃないよルネのやつだよ)! なにしろ賭けは「信じる」に限るってね♪
(…後略…)