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湾岸アラブ諸国の移民労働者――「多外国人国家」の出現と生活実態

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詳しい情報
読み: ワンガン アラブ ショコク ノ イミン ロウドウシャ : 「タガイコクジン コッカ」ノ シュツゲン ト セイカツ ジッタイ
出版社: 明石書店
単行本: 300 ページ
ISBN-10: 4750340901  ISBN-13: 9784750340906  [この本のウィジェットを作る]
NDC(9) : 334.4278

紹介

外国人労働者を大量に受け入れてきた湾岸アラブ諸国。移民労働者の社会参加への機会を制限しており、その「分断」が特徴と言われてきた。本書は受け入れ国側、送り出し国の両側の視点から移民労働者の生活の実態に迫ることにより、複雑な「共存」のあり方を新たに明らかにする。

目次

まえがき

序章 分断された社会空間を生み出す装置と人々の暮らし
 Ⅰ 湾岸アラブ諸国を中心にした移民研究の重要性
 Ⅱ 湾岸アラブ諸国における移民たちの分断状況
 Ⅲ 第1部の概説
 Ⅳ 第2部の概説
 Ⅴ 湾岸型移民社会からみえてくること
 Ⅵ 語句や統計情報の取り扱いについて


第1部 受け入れ政策と国民・移民労働者の関係

第1章 国際労働力移動のなかの湾岸アラブ諸国の位置づけ
 はじめに
 Ⅰ 国際労働力移動のトレンドと湾岸アラブ諸国
 Ⅱ 移民労働者受け入れ政策・制度の国際比較
 Ⅲ 移民労働者問題をめぐる国際社会と湾岸アラブ諸国の取り組み
 おわりに

第2章 増え続ける移民労働者に湾岸アラブ諸国政府はいかに対応すべきか
 はじめに
 Ⅰ 分析の方法
 Ⅱ 国籍別分業体制――湾岸アラブ諸国の二類型
 Ⅲ 国民と移民の競合関係
 Ⅳ クォータ制度
 Ⅴ 湾岸アラブ諸国の徴税と資源配分
 おわりに

コラム1 湾岸アラブ諸国とは何か?

コラム2 グローバル開発戦略と移民受け入れ――ドバイ、アブダビ、ドーハ

第3章 サウディアラビアにおける家事労働者の流入と「伝統」の再生
 はじめに
 Ⅰ 再生産領域のグローバル化
 Ⅱ 家事労働者と雇用者の関係
 Ⅲ ケアの消費と「伝統」の再生
 Ⅳ 変化する湾岸アラブ諸国の女性のライフスタイルと政府の対応
 おわりに

コラム3 シンデレラ物語としてのUAE家族と「家事」による物語の逆転

第4章 フィリピン人家事労働者に対する保護への取り組み
 はじめに
 Ⅰ 湾岸アラブ諸国の家事労働者――他地域との比較による特徴
 Ⅱ 家事労働者の保護に向けた公的な取り組み
 Ⅲ 家事労働者保護のためのインフォーマルな活動
 おわりに

コラム4 アジアからの家事労働者の現状と課題――インドネシアとスリランカ

コラム5 文化摩擦を超える試み――渡航前セミナーは有効か?


第2部 アジア系労働者の生活世界、コミュニティ、ネットワーク

第5章 UAE在住フィリピン人の生存戦略とコミュニティの多様性
 はじめに
 Ⅰ 多様なUAE在住フィリピン人
 Ⅱ グレースのドバイ移住過程
 Ⅲ ドバイ・ブームと訪問ビザ・ビジネス
 Ⅳ 生活再建のための戦略
 Ⅴ カバヤン・ネットワーク
 Ⅵ コミュニティ組織と社会関係の再編
 おわりに

第6章 インド・ゴア州出身者のコミュニティ・ネットワーク
 はじめに
 Ⅰ 湾岸アラブ諸国へ向かうインド人移民労働者の増加
 Ⅱ ゴアから湾岸アラブ諸国に向かう動きの現状
 Ⅲ ドバイにおけるゴア・クリスチャンのネットワーク
 おわりに

第7章 UAEとカタルにおけるフィリピン人のイスラーム改宗と社会関係の変容
 はじめに
 Ⅰ UAEとカタルの宗教的環境
 Ⅱ フィリピン人のイスラーム改宗現象
 Ⅲ コミュニティとしてのイスラミック・センター
 Ⅳ イスラーム改宗で切り開かれるつながり、生成される隔たり
 おわりに

第8章 インド・ケーララ州出身者たちの神霊を介した故地とのつながり
 はじめに
 Ⅰ 湾岸アラブ諸国への出稼ぎがケーララ社会にもたらすもの
 Ⅱ ローカルな神霊信仰の隆盛とガルフのカネ
 Ⅲ 神霊が結ぶ出稼ぎ移民労働者と故地
 おわりに

コラム6 インド人中間層からみるUAE

 あとがき
 引用・参考文献
 索引

前書きなど

まえがき(石井正子)

 (…前略…)

 湾岸アラブ諸国の国民はイスラームを信仰するアラブ人であるが、外国人も多数居住しており、その数は総人口の約3割以上を占める。本書では、外国人の割合が総人口の約3割以上を占める国を「多外国人国家」と呼ぶ。外国人人口の割合が最も高いのがUAEで、その数値は実に88.5%(2010年)にものぼる。つぎにカタルの85.0%、クウェート68.5%(2008年)、バハレーン53.5%(2010年)と続く。割合が低いサウディアラビアやオマーンでも32.1%(2010年)と29.4%(2010年)である。むろん、世界にはルクセンブルクやブルネイのように、外国人人口の割合が3割を超える国は他にもある。しかし、湾岸アラブ諸国の特徴は、「多外国人国家」が一地域に6ヵ国も集中していることだ。
 こうした湾岸アラブ諸国の現状は、外国人人口の割合が1.74%(2009年)である日本に居住する私たちからしたら、にわかに信じがたい。日本は移民労働者、特に単純労働者の入国を厳しく制限している。移民労働者に対して労働市場をより開放しようとすると、外国人が増えると日本人の職が奪われる、日本文化が保てなくなる、治安が悪くなる、という声が紙面を賑わす。しかし、かたや世界には、国民がマイノリティになるまで、移民労働者を受け入れてきた国々がある。だとすれば、それはなぜ可能になったのだろうか。そして、国民と多くの外国人は、どのように関係を築いているのだろうか。
 このような疑問を掲げ、私たちは湾岸アラブ諸国における移民労働者について理論と実証の両面から研究を開始した。その結果、アメリカやオーストラリアなどの移民国や、西ヨーロッパ、日本とは、まったく異なるかたちで多様な文化を背景とする人々を受け入れているのが、湾岸アラブ諸国であることが分かってきた。湾岸アラブ諸国は移民労働者を大量に受け入れるが、彼らにシティズンシップを付与していない。国民と移民労働者、および異なる移民労働者同士が職場を超えた社会関係を取り結ぶことがほとんどない。湾岸アラブ諸国では国民と移民労働者、および多様な移民労働者の間の関係が「分断」されていると、その特徴を捉えることができるだろう。
 シティズンシップを付与せず、社会参加への機会を制限するかたちで移民労働者を受け入れる湾岸アラブ諸国の政策に関しては、人権の理念から批判も展開されている。本書は、そうした批判も踏まえながら、湾岸アラブ諸国と、湾岸アラブ諸国に労働者を送り出す国々を訪ね、その実態を政策担当者や移民労働者、受け入れ国の人々といった視点を取り入れて実証的に理解しようと試みた。すると、人権の理念から批判される対象としての「分断」だけではなく、複雑な「共存」の実態も浮かびあがった。その実態からは、移民労働者受け入れに関する日本人の常識や理念を覆す、さまざまな人々の生き方や考え方がみえてきた。
 世界には、湾岸アラブ諸国という、これまであまり注目を集めてこなかった一大移民労働者受け入れ地域があった。21世紀の移民労働を考えることにおいて、このような国々を無視することはできない。湾岸アラブ諸国には、私たちの思考の転換を促すさまざまな事象が展開されている。本書において、そのような新しい視点を紹介することができれば幸いである。
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